『悩む力』 | ビジネスに感動を

『悩む力』

悩むことは素晴らしい。


本書は姜尚中氏が上記を言うために書かれている。悩むことは考え続けることであり、人生を実り豊かにするからだ。

しかし、実り豊かな人生とは、黄金に輝く豊穣な畑ではなく、ジメジメとした場所で育った椎茸のようなものなのである。もちろん両タイプが存在するだろうが、少なくとも姜尚中氏は椎茸派であり、そのジメジメ感を理解するのが本書の目的である。

本書では、(最近私の家を留守にしがちな)夏目漱石先生とマックス・ウェーバー先生の考えに沿って、姜尚中氏の考えと体験が記されている。そして、(最近家出中の)福沢諭吉先生は登場しない。

夏目漱石先生の椎茸度数は非常に目を見張るものがあり、作品にありありと表現されている。その理由は、西洋の文化、文明に対する将来的な絶望を見出したからであり、それは夏目先生が"真面目"だからである。そして、真面目だからこそ、自分の人生を不快、不幸にさせてまで目の前にたたずむ問題に挑まれたのである。

翻って現代社会ではそのような人生をかけた真面目さを持っている人は少ない。(もちろん、当時も少ないだろうが。)その現状を姜尚中氏は残念に思っておられる。

つまり、人生が浅くなっている現状を見据えて、姜尚中氏は警告を鳴らし、人間らしさを持つように語りかけておられる。そのためには、以下の思い込みを排除すべきなのである。

1. 青春は若者のみが持つ
2. 情報通は素晴らしい
3. お金こそ全て
4. 愛こそ全て

おそらく執筆時点ではMoney is Kingの言論が日本のマスコミを賑わわしていたために、本書のような話になったのだろうが、既に3のような話は消えつつある。もちろん、我々の頭の隅に常にあるのは確かだ。

姜尚中 『悩む力』