U2は莫大な富を稼いでおり、彼らにとっての優先事項は、いかに自分たちのやりたい方法でやりたい音楽を提供したり、社会に影響を及ぼしたりするということだろう。彼らは、短期的な採算よりも長期的であいまいな因果関係による採算を重視することができる。そのひとつの方法が、
YouTubeでのライブ配信なのだろう。
世界中のファンに対してサービスを提供したいと思うのはU2に限らずどのアーティストでも同様だろう。しかし、現実問題として無料にて提供できる音楽と有料にて提供できる音楽に明確な区別をつけて、有料の提供範囲を拡大したいと思うアーティストは多い。
U2が有料のライブを無料の中継をすることで、ひとつのスタンダードが業界全体に生まれる可能性がある。それは、実際に会った場合は有料で、会わない場合は無料という区別である。Stanford(スタンフォード)大学がOpen Coursewareを実践した時から同様の基準が模索されているが、今回のライブ中継はその区別に拍車をかけると言える。
仮にその区別が普及した場合、金銭的な意味で成功をするアーティストは現在よりも少なくなるだろう。なぜならライブの料金は今後上がっていくとは考えにくく、無料の音楽配信が更に充実するため、音楽ダウンロード販売数が少なくなると考えられるからである。そしてライブで儲けられるビック・アーティストが無料で音楽をネット配信するため、彼らよりも有名ではないアーティストが、有料でネット配信して成功するとは考えにくい。
つまり、今後音楽業界ではより一層の富の集中が起こる可能性が高い。
しかしこの予測はあくまでも現在の状況の延長線上によるものであり、別のシナリオが生まれる可能性は完全に否定はできない。
音楽業界に限らず、多くのアート関連の業界では、多くの才能が金銭的な成功に到達できていない。
サラリーマンが安定した収入を得るのは当然としても、その収入の総量が芸術家の収入の総量よりも多いことは社会全体として好ましいことなのだろうか。サラリーマンよりも多くの価値を芸術家が生んでいる場合は、当然、芸術家の方が収入が多くなるべきである。そのような観点から、今後、優れた芸術家の収入面での成功を考察していく。