日本ではすでに発行されている食の格付け本「ミシュランガイド」ですが、2016年版には東南アジア初となる「ミシュランガイド・シンガポール2016」が7月に発売されました。

 

シンガポールではお祭り騒ぎとなっていて、発売日当日の星獲得の授賞式には、受賞シェフが一堂に集まり、ガラディナーが盛大に行われたほどです。

 

唯一の3つ星獲得「ジュエル・ロブション」をはじめ、2つ星に6店、1つ星に22店が選ばれ、日本食や日本人シェフの店舗も登場。

その中でも、特に注目されたのが、屋台飯が堪能できる場所、ホーカーから2店舗が1つ星に選出されたことです。

 

ミシュラン本は、高級レストランの格付け本と誤解されがちですが、ミシュラン調査員が評価をつけているのは、店自体ではなく、”料理のみ”。「この料理を食べるためにわざわざ行く価値のあるレストラン」としてなのです。ですから、その料理が素晴らしいと思えば、立地がどうであれ、店構えがどうであれ、関係ないのです。

 

早速、一つ星獲得のホーカー店、ラベンダー駅近くにある「ヒルストリート・タイファ・ポークヌードル」に行ってみました。

 

さっそく現れたのは、ランチタイムに一つ星料理を食べようと求める長蛇の列。

 

ここは、ラベンダー駅から徒歩5分ほどのDHB内の大華餐室。5店舗の飲食店が集合する小規模タイプのホーカーズです。

 

この時の時刻は11:00。この長き道のりをどのような時間の過ごし方をすればよいのでしょう・・・

早々に離脱する者、入れ替わりにテーブルに座る夫婦、雑談を始める前後の客。

なかなか列が進みません。店の全貌を見ることができる角まで40分が経過していました。

 

角を曲がると、店舗がやっと見えてきました。

 

この時点で、時刻は12:00。

お目当ての料理は、肉脞面(Bak Chor Mee)です。


列の割には待ち時間が長すぎるのはなぜかと思い、厨房の様子を見てみると、オーダーを取ってから、生麺を茹でて提供しています。料理のサイズによって、麺の量も変わるし、茹で置きすることなく、でき立てをいただけるのは嬉しいですね。これは待つ甲斐がありそうです。

 

一人が並んでいても、オーダーが数人分であれば、その分時間もかかりますね。

スタッフは全部で3人。授賞式に出席したオーナーの姿はありませんでした。

2人が調理している間、もう一人はスープに入れる海苔を仕込んでいます。

 

麺は、細麺と平麵の2種類。どちらかを選ぶか、ミックスということもできます。

お目当ての肉脞面は、スープ有りか無し(ドライ)かをセレクト。もちろん、南国にありがちな唐辛子のチリを入れるかどうかも聞かれます。

 

時刻は、12:10!!

並び始めてから、1時間10分が経過したところで・・・・・

 

ついに肉脞面(レギュラーサイズS$6)をGETしました~~~~!!

 

こっ、これが一つ星料理の肉脞面!!

 

初めまして、肉脞面!!

 

この料理は、豚肉のトッピングの中華麺で、シンガポールでは昔から食べられているポピュラーなホーカー料理です。トッピングには、豚のスライス肉、レバー、ミンチ、ボール、雲吞、魚骨の素揚げ。タレは、醤油をベースに魚醤、酢、チリがブレンドされています。

 

酢と醤油の絶妙なバランスの取れたタレに脱帽です。また、そのタレに絡む麺が絶品!!
これは、何度でも並びたくなる味でした。きっと、麺の貢献が高いと思います。生から茹でるその麺の噛んだ瞬間の弾力といい、モッチリ感といい、粉の風味も感じられ、鼻腔をくすぐる優れものです。具材自体は決して高級なものを使っているわけではないと思いますが、こちらの茹で加減もバッチリでした。

 

ドライを注文するとスープが付くのですが、このスープの具材の海府海苔が香り良くとてもおいしかったです。ラード入りのようなので、好みが別れるかもしれませんが、私は好みの味でした。

 

シンガポールのソウルフードは、ジャンキーな料理も多いですが、これはぜひ食べてほしいですね。今回は、ピーク時の列がどれくらいあるかを検証したかったので、あえてランチタイムのど真ん中に伺いましたが、15時くらいに時間を外せば、比較的並ばずに食べられると思います。もちろん、スープなど、仕込み分がなくなってしまえば、その日の営業は早くに終了してしまう可能性が高いと思いますが・・・

 

Hill Street Tai Hwa Pork Noodle

 

【余談ですが、興味深い話】

ミシュラン一つ星獲得して、さらに人気が増した「ヒルストリート・ダーファ・ポークヌードル」ですが、実はオーナーの親族がこの店と類似名店をに出店しています。”タイホァ(大華)”に対して、こちらは”ロウダーファ(老大華)”。これにより、両店を系列店(もしくは移転)と思い、「客が老大華に流れ、約20%の損失を受けた」と、大華オーナーが2008年に損害賠償を起こしたのです。

 

結果は老大華が敗訴したようですが、現在も両店は存在しているところをみると、一件落着というところでしょうか。評判が高まることで、店舗がどこにあるかも認知されたようですし、さらに老大華は、”大華”として新店もオープンさせているようです。仲直りした証拠でしょうか。各店店舗の容器はすべて同じ中華柄というのが、今では笑い話のひとつになっているのでしょうね。

 

さらには、ミシュラン一つ星を獲得したことで、肉脞面を提供しているホーカー店にも注目が集まっています。食はみんなを笑顔にしてくれる大切なツールですから、喧嘩をすることなく、おいしい肉脞面をこれからも提供していただきたいものですね。