今回も京都工芸繊維大学平成28年度

物理の大問Ⅲを取り上げます。

小問1~6は、無限に長いソレノイドコイル

の内部の一様な磁場の大きさを問われて

います。

それも、最も簡単な高3でも解けれる

アンペールの法則とソレノイドコイル内

の磁場は、一様で,外部に磁場は存在しない

という性質を利用したやり方で。

この時,アンペールの法則を適用する閉曲線

は、問題文に与えられています。

下図のようにソレノイドコイルの内部と

外部とにまたがる長方形abcdです。

アンペールの法則

∫B(r)dr=μ0・Σi  の左辺を以下に

具体的に書くと

辺ab:ab方向のBがない

辺bc:bc方向のBが存在し、BL


辺cd:cd方向のBがない

辺da:ソレノイドコイルの外部より

       Bが存在しない

以上の事より,閉曲線abcdにおいて,

アンペールの法則を適用すると、
 
左辺=0+BL+0+0=右辺=nLI


故に、

B=nI

以上小問1~6 の解です。

次の小問7から12そして,b,cは、磁場中

の荷電粒子の運動を取り上げています。

まず、小問7 、磁場中で荷電粒子は

ローレンツ力を受けて、それが向心力と

なり等速円運動を行い,その半径を求めよ.

という問です。

これは,高3物理の基礎問題レベルです。

下図のとうりです。

次に ,小問3,9,10ですが,荷電粒子は、原点

から,X軸上を正の向きに速度vで入射して

0の領域で磁場から受ける

ローレンツ力fbは、

fb=e・v×B

で与えられるので、大きさはevB

向きは、y軸負の向きです。

荷電粒子に直線運動をさせるために

0の領域にかける電場Eは、

E=(0,vB,0) です.これが,8,9,10の解です.

また,次の11速度ベクトルvを向きと大きさ

の2つを含む形式で表せ,という問です.

ここで,

fb=v×B

より,「ベクトル解析の公式を用いて

vベクトルを求めなけれっばならない」,

と考えがち,ですよね。

しかし,そう考えると,どつぼにはまります.

ここは,単純に考えて,

B=(0,0,B)

E=(0,vB,0)

v=(v,0,0)

から,外積の超基本的定義を利用して

(B×E)/(e・B^2)=v

とすれば、いいです。

左辺をまず,こうではないか,と思って書き

それが右辺のvと一致するよう

「つじつまあわせ」 をすれば,いいのです.

次の小問bは,ローレンツ力は以下の外積

で与えられる

fb=ev×B

外積の定義より、fb,v,Bは、互いに

直交関係にある。

で答えても、いいし、

fb・v=0を示してもいいです。

成分表示の内積を使いましょう。

さて,次の小問BからFが,イヤらしいですね

この部分は、

岩波文庫 物理テキストシリーズ4

電磁気学 砂川重信著

に比較的分かりやすく書かれていますが,

理学部物理学科や,教養課程の講義に

電磁気学が存在するところなら,ともかく,

そうでなければ,めったに,目にする機会は,

ないでしょう。

少し,意地悪で,興味本意の出題です。

高校生の大学一般入試では、

1995年あたり同志社大学の物理に

出題されていました。

まず,x軸の正の向きに,荷電粒子と同じ

速度vで動く慣性系から見ると荷電粒子は,

静止しているので,磁場からは ,

ローレンツ力を受けません。

消えます。これが,Bの解。

電場E=(0,vB,0)により荷電粒子が,Eから

受ける力は、変わりません。

これがCの解。

静止している慣性系から見ると,

荷電粒子は、x軸上をの正の向きに

速度vで等速直線運動している .

次に荷電粒子と同じ速度ベクトル

で運動している慣性系から荷電粒子を

見ると荷電粒子は,静止して見える。

静止と等速直線運動は、同じ運動なので、

2つの慣性系からの観測に問題は,ない

ように思えます。

しかし,静止している慣性系では,荷電粒子

に働くローレンツ力と電場から受ける力

この2つの力が,等大逆向きで,釣り合い,

荷電粒子が,等速直線運動をしているように

見えます。

しかし,荷電粒子と同じ速度ベクトルで運動

している慣性系から,荷電粒子に働く力は,

y軸の正の向きに働く電場から受ける力

しか,観測できません。

これでは,運動している慣性系において、

荷電粒子が力の釣り合いの状態にあり,

等速直線運動をしていることは,物理的法則

に反するものとなり,等速直線運動は、

できない、という結論となります。

そこで,運動している慣性系では,荷電粒子

には、電場から受けるy軸正の向きに働く

力と等大逆向きの力が,働き,運動している

慣性系においても荷電粒子に力の釣り合い

の状態を実現させなければなりません。

D:y軸

E:負の向き

F:電場

小問12:大きさvB

が、解となります。