にじいろのはな

『にじいろのはな』

作・絵 マイケル・グレイニエツ  訳 ほそのあやこ

ポプラ社



自己犠牲のお話は意外と多い。

色々な読み方はあれど

『幸福の王子』『おおきな木』 などといった

身を削っても愛する人のためになりたいと

願う気持ちを描くもの。


冬が終わり

にじいろの花が顔を出した。

ずっとお日様の下に出られたことが嬉しくて

この嬉しさを世界中に分けてあげたい気持ちになる。


ある日一匹のアリが通りかかる。

おばあちゃんの家に行くところだけれど

大きな水溜りが出来て通れないと言う。

そこで花はこう言う。


「だったら わたしに のぼって、

 はなびらを 1まい ぬいてごらんなさい」


そしてアリはオレンジ色の花びらに乗って

水溜りを渡っていけたのだった。

またある日、トカゲが通りかかる。

パーティへ行くのに着る服がないと困っている。

花はこう話しかける。


「もしかしたら、わたしの はなびらの どれかが

 トカゲさんの みどりに にあうかもしれないわよ」


トカゲは鮮やかなピンク色の花びらを身にまとうのだった。


そうして色んな生き物に

花びらを分け与えたにじいろの花は

もう一度冬が来る頃に

最後の1枚の花びらも風に飛ばされてしまった。


雪が覆いつくし、にじいろの花があったことなど

誰も気づかなくなる…。


ところがある時

まぶしい虹色の光が、雪の中から空を照らした。

にじいろの花に助けられた生き物たちが駆け寄り

それぞれ、にじいろの花のことを思い出すのだった。


ここで終わると切ない自己犠牲のお話だけど

最後には、春の訪れと共に

にじいろの花が再び咲く。


私と子供たちは安心する。

また誰かのために咲いたのかな。