前回のエントリーでギリシャ問題の経緯を纏めた。
今回は今後の予想を大胆に行ってみようと思う。
結論から言ってしまうと「ギリシャはデフォルトする、しかし時期は今ではない」である。

前回のエントリー後のNY時間に「EU,IMFがギリシャへの次回融資を承認」というヘッドラインが流れて高まっていたギリシャデフォルト懸念は一旦収まる格好となった。
こういったニュースが出てくると、なんだかんだユーロに加盟しているギリシャはEUに救済されてデフォルトはしないのではないのか、と思う人もいるだろう。
しかし僕の考えはまったく違う。ギリシャはほぼ確実にデフォルトすると考えている。
このEU,IMFのギリシャ支援の目的は「救済」ではなく「延命」にある。つまり時間稼ぎをしている。なんのために時間稼ぎをしているのか、それはEUを守るためである。
ここで現状のEUの大きな問題点を一つ挙げてみよう。

● EU各国は融資の結びつきが強い
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この表はEU各国のPIGS(ポルトガル、アイルランド、ギリシャ、スペイン※イタリアは含まず)のエクスポージャを示している。
これを見ればわかるとおり、EU各国はそれぞれPIGSに対するエクスポージャを持っている。ギリシャが解決しても次はアイルランド、ポルトガル…と問題は待ち受けているのが現状なのだ。
こうした中、EUが想定する最悪のケースは「ギリシャがデフォルトした時に、他国の財務悪化を招きデフォルトの流れがアイルランド・ポルトガルへと波及していくこと」なのである。
この最悪のケースを避けるために、ギリシャを延命させその間にアイルランド・ポルトガル・スペインの財政を健全化させること、もっと言えば、債権国の財務をより健全にし、ギリシャの次に控える危機に対する準備をする必要がある。財務健全化など一朝一夕にいくものではないので、ギリシャ問題は時間をかけてゆっくりと破綻のさせていくことをEUは選択すると僕は考えている。

すでに対GDP比で150%程度の債務を抱えているギリシャは、財政赤字削減目標の達成も困難な状況である。ギリシャ国債の2年金利は常時2桁(現状20%超)を維持している中では市場での資金調達は不可能であり、もはやデフォルトをするほかない。ただし、EUは他国にデフォルトの波が波及することは阻止しなくてはいけないので、時間をかけて秩序だったデフォルトが行われるだろう。

● EUの今後~EUは不滅
ギリシャのユーロ離脱やユーロ解体とまで言う人もいるが、基本的にはそういったことは起こらないだろうと考えている。

ユーロ圏の中にはドイツや北欧のように財務も比較的健全で経済的に強い国もあれば、ギリシャのように財務・経済も弱い国もあり、様々な国が混在している。
彼らにとってEUという経済共同体を組織することや統一通貨ユーロを使うメリットはどこにあるのだろうか。
ギリシャのような経済的弱者の国にとってはユーロを使うことやEUに加盟することでドイツなどの信用力を享受できる、つまりより低コストで資金調達ができるようになる。
ドイツにとっては、単独通貨マルクでは流通量の点でドルに全く太刀打ちできないが、統一通貨ユーロを作ることで、ドルに対抗する通貨を使用することができる。自国通貨の流通量が高いことのメリットは、基軸通貨ドルをを使用しているアメリカを見れば一目瞭然である。
EUはもちろんドイツなど強国中心に発足されたもので、上記の後者のメリットの方が重要であり、それを考えるとEU発足の目的は「アメリカに対抗する、アメリカの一極集中構造を打破する」という政治的な部分にあることがわかる。

EUは政治的目的で作られており、ギリシャは政治的な判断で多額の資金が投入されている現実を考えれば、ギリシャのEU離脱やユーロ解体が起きるとは到底思えない。
EUは経済的判断で動いているのではなく政治的判断で動いているのだ。現状、政治的にEU解体に向かっている兆候は一切見られていない。

ギリシャ関連のエントリー
1.ギリシャ問題まとめ①
2.ギリシャはデフォルトする、EUは不滅
3.ギリシャ問題UPDATE~周辺国への波及~
4.ギリシャのデフォルト時期はわからない
5.欧州危機~ギリシャの次の課題


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