【インタビュー:湯川鶴章氏 中編 「日本人特殊論はおかしい」】 | CAネットトレンド研究室ブログ

【インタビュー:湯川鶴章氏 中編 「日本人特殊論はおかしい」】

第2回 日本人特殊論はおかしい

 

Q:近著『爆発するソーシャルメディア』の中で、

表現欲が起爆剤になると書かれてます。

 

まず、人生の大半をアメリカで過ごした経験からいうと、よく耳にする日本人特殊論にどうも違和感を感じます。もちろん文化的な違いというのは確かに存在する んですけど、何でもかんでも日本人特殊論で片付けているような気がします。人間って、基本的な部分はどこの国でも同じだと思うんです。

 

たとえば、日本のブログは日記風なものが多くて、アメリカのブログには専門家の専門情報が多いという話があります。ブログの内容の比較というのは非常に難しいんで信頼できる統計がないんですが、実際にそういう傾向があるとしても、それは「日本には紫式部の時代から続く日記文化があるから」「日本人は日記が好 きだから」などというようなことではないと思います。

 

アメリカに専門情報のブログが多いのは、 アメリカは基本的に転職がデファクトの社会だから。そんな中で、ブログは非常に有効な履歴書になります。ブログを読めば、その人の人となり、関心領域、知識量、能力までも分かるからです。ですからアメリカ人の一部は、セルフプロモーションのツールとしてブログを使う。だからブログに専門情報が多くなるわけです。

 

でも、日本にはどちらかといえば同じ会社で勤め上げたいという人がまだまだ多いですよね?

そうであるならば、会社の目を気にしながらブログに専門情報を書こうという気にはならない、というのは当たり前の話です。だから当たり障りのない日記的なエントリーが多くなるんです。

 

でも、IT業界は比較的転職率が高い。ですからIT業界在籍者のブログには、比較的実務的な専門情報が多いんです。

 

つまり日米のブログの内容の違いというのは、日本人が特殊だからということではなく、社会環境などが原因だということです。


同じように、日本人は受け身な国民性で、自ら情報発信をしない、という説も違うと思います。日本人にもアメリカ人と同じように、自己表現欲求はある。時間差はあるかもしれないけれど、日本でも必ず自己表現欲求や、クリエイティビティが爆発するときがくると思います。その爆発の場所が、ソーシャルメディアになるのだと思います。



Q:「出る杭は打たれる」というのが日本にはあって、それが元で

炎上したり。それが怖いから匿名でという事があると思うのですが。

 

日本のほうが炎上が多いようなことも言われますが、これも統計的根拠はない。

それどころか、最近はアメリカや韓国で、日本以上にネット上の誹謗中傷、名誉毀損が問題になっています。

確かに日本には「出る杭は打たれる」という文化があるのかもしれませんが、そうだからといってそれだけが理由で日本に炎上が多いとも思いません。


(了)


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