受験勉強は起業の役に立つ | フィリピンで働くシリアル・アントレプレナーの日記

受験勉強は起業の役に立つ

今日は母校の開成高校に行き、講演をした。
講演のテーマを何にしようかと考えて、
「起業の傾向と対策: 開成生が起業し勝ち残るには?」
というものにした。

僕は、開成中学を受験するまでは素直に受験勉強ができた。
しかし高校に入り受験勉強に疑問を覚え、悶々と苦しい気持ちを味わった。
「受験勉強は将来何の役に立つの?」
「いい大学、いい会社にいってどうなるの?」
そんな風に思い、多くの授業を聞かず、本ばかり読んですごしていた。

もし今の開成生の中にも同じように悶々としている人がいるとしたら、
僕がレアジョブを起業した中で経験したことを共有したいと思った。

恐らくそれは、「いい大学、いい会社にいってどうなるの?」という問いに対する、
ひとつのヒントになると思うからだ。

結論からいうと、受験勉強は起業の役に立つ。
その講演の概要を下記に記しておく。


起業の傾向と対策: 開成生が起業し勝ち残るには?

導入
・受験には傾向と対策がある。同じように、起業にも傾向と対策がある。
・必ず起業が成功するという方法はない。しかし起業の成功確率を格段に高めることはできる、という意味だ。

自己紹介
・歩んできたルートは、開成 → 戦略コンサル → レアジョブ起業 → 上場
・レアジョブには、フィリピン人の講師が4000人。正社員は日本・フィリピンに200人。
・僕は高校では目立たなかった。クラスでははしっこに座る。クラスの○○ランキングは43位。
・そういうマイノリティ意識を持っていたからこそ、起業に最適な人生設計を17歳のときからできた。

そもそも、勉強ができても高い収入を得られるとは限らない
・IQの高低と収入の高低には相関がない。深い専門性と温かな人間関係のみが相関する。

起業にも傾向がある
・人生のピークの時期は分野によってきまっている
・経営者が30代で上場する方が、40代で上場するよりも、上場後の売上高成長が早い (一橋ビジネスレビューより)

(勉強ができる傾向にある)開成OBの起業にも傾向がある
・開成卒業生で現役の経営者・起業家は43名
・2001年からの新規上場企業は累計約1000社。そのうち、開成生が創業者に含まれるのは4社で0.4%。マネックス松本社長、ライフネット岩瀬社長、Gaba創業者吉野さん、レアジョブ加藤。(カカクコム田中社長もいれると5社)
・一学年が日本人全体で約100万人にいるなか開成生は400人で、0.04%。開成OBは起業に10倍有利。
・開成OBの上場企業は、教育・IT・金融に偏っている。新期上場企業に多い、広告・ゲーム・不動産には開成OB創業者がみあたらない
・つまり、教育×ITまたは金融×ITに分野を絞ると、開成OBはそうでない人の100倍上場しやすい。
・勉強好きな人じゃないと、起業できない・起業しても勝負にならない分野だから勝率が高いのではないかと考えている。

開成OBではないが、(勉強ができる傾向にある)戦略コンサルタントの起業にも傾向がある
・新卒入社後3年以内に裸一貫で起業 (アイスタイル、オイシックス、Albert、レアジョブなど)
・新卒入社しパートナーに出世し、人脈を活用して起業 (DeNA、エムスリー、経営共創基盤など)
・それ以外のケースは乏しい? 
・一方、戦略コンサルティングファームに新卒入社するのは年間100人程度だとすると、起業の勝率は開成OBよりもさらに高そう。

勉強ができる人が起業し勝ち残るうえで有効な対策
・いい高校・いい大学・いい就職先にいくことは、起業の成功確率を上げる。
・どの分野で起業を目指すのかを早めにはっきりさせ、専門性を身につける。
・IT、金融、教育など、勉強量が多い分野で起業する
・20代で起業し経営者になるパスか、会社勤めのまま経営者に早くなれるパスか、どちらを選ぶかはっきりさせる

加藤が起業のために実践したこと。
・開成高校3年生で政策学校「一新塾」に通い、起業を志し、大学を6年間かけて卒業するプランを立てる
・大学一年生の終わりに休学して、ベンチャー立ち上げに参加する。
・復学したあとは英語を勉強するかたわら、財務会計をグループワークで勉強するゼミに入る。
・1年間海外旅行にいく。
・戦略コンサルティングファームに新卒入社する。
・3年目で辞め、27歳でレアジョブを起業し、2014年上場。

(質疑応答・懇親会にて話したこと)
・今日話した内容は、「楽しく起業するにはどうしたらいいか」ではない。「起業して勝ち残る、その確率を高める方法はなにか」だ。自分の場合は「×グローバル」で起業しないと、コミュニケーション上手な人の中で勝ち残っていけないと思った。
・自分が行った大学は一橋大だが、起業に最も有利な大学は日本では東大だろう。理系文系が同じキャンパスで優秀な仲間と出会いやすく、学外へのアクセスがよくチャンスをつかみやすいからだ。とはいえ、浪人してまで行く必要はない。東京にある大学に現役で入り、学外で早くベンチャーを経験した方がいい。
・ベンチャーを経験すれば、起業に向いているかどうか、起業を成功させるために大学に戻って勉強すべきことはなにか、具体的になる。大学生のまま起業・上場し継続的に会社を成長させているケースは日本では珍しい。
・ベンチャーは大学3年で経験するよりも1年で経験したほうがいい。留学や専攻選びなど選択肢が豊富だから。本当を言うと、大学合格直後から1年間休学しベンチャーを経験してから、1年生として入学し同期をつくるのが一番望ましい。
・高校時代にカリスマがなくても起業には関係ない。フィリピン人講師がレアジョブにいてくれるのは、僕が対等な目線で接しているから。自分のエッジが武器になる起業分野を見つけられるかどうかだけの問題。
・勉強ができることも、起業には良し悪しだと思う。深く考えすぎるとフットワークが重くなる。たくさん試してみないとわからないこともある。これも単にエッジの問題。
・起業せずとも若いうちに経営者になれるパスはある。企業再生ファンドとか。そちらの方が合う人も多い。