シンガポール並のサイズに分割されると、日本は再び飛躍する | フィリピンで働くシリアル・アントレプレナーの日記

シンガポール並のサイズに分割されると、日本は再び飛躍する

GDP総額では中国に追いぬかれたとは言え、
一人あたりGDPでは日本はアジアでナンバーワン
・・・というのはウソで、実は日本よりもシンガポールのほうが一人あたりGDPは多い。

だから、シンガポールに日本の将来があるのかなぁと思っていた。
ちょっくらシンガポールに週末旅行に行ってみた 感想をいうと、半分Yesで半分No。

まずは半分Noという点について。
シンガポールという国は、ひとことでいうと大家、つまり場所貸しビジネスだと思う。

・シンガポーリアン人口は500万人。(外国人を合わせると700万人)
・東南アジア人口は数億人。
・東南アジアには政情リスクが多く、また官僚の腐敗していたり、インフラも未整備。

この状況をいかして、外国企業を誘致する大家(おおや)としての施策を徹底させている。

・英語人口を増やす
・法人税を安くし、法律を整備してリスクを減らす
・電気水道インターネットなど、インフラで東南アジア各国に圧倒的な差をつける
・政情を安定させるために、安く快適に暮らせる公団住宅をつくり、人口の85%を住まわせる
・空港や空港までのアクセスを整備し、東南アジア各国に日帰りで出張できるようにする
・欧米人が住みたいような街並みにする

ここらへんの徹底度合い、エッジの利かせ加減はクレージーなほどだ。
例えば、欧米人が住みたい街並みにするために、
たんやガムを道路に吐き捨てると、10万円近い罰金をとられるようにしている。
それだけじゃなくて、そもそもガムの販売自体を禁止するところまでやっている。

ガムを食う権利を否定する国ってどうなのと思うが、
上空からみると、シンガポールの周りはジャングルだらけ。
ジャングルの中で、日本を超える一人あたりGDPを達成した、
シンガポール初代首相リー・クアンユーさんはすごいと思う。

じゃあシンガポールの大家(おおや)方式を日本も真似ればいいじゃないかと思うかもしれないが、
それはちょっと難しい。

・日本の人口は1億人以上
・それだけの人口を食わせるだけの外資ニーズがそもそもない
・外資ニーズを育てるよりも、自国の産業を強くする方が、食わせていきやすい

つまり、ちょっとやそっと法人税を下げたところで、
税収が減りはしても、外国から日本に雇用機会がたくさん入ってくるわけじゃあないということだ。

じゃあ日本がシンガポールから学ぶことはないのかというと、そうとも言えない。
シンガポール政府は、国内の隅々の細かいニーズまで把握しているということが重要だと思う。

シンガポールは人口数百万人レベルだから、政府が細かいニーズや状態まで把握している。
「東南アジアで最高の大家(おおや)になるためには、なにをすべきか」を常に徹底し続けられる。
だから、例えばガムの販売禁止とか、意思決定もたやすい。

一方、日本。
例えば、沖縄。
沖縄にたくさんのアジア人観光客を呼ぶために、
「ガムの販売禁止」のようなエッジのきいた施策で何が必要か。

これを、東京の政府が理解することは難しい。
理解していたとしても実行まで時間がかかる。
実行しようにも、その施策は製造業発展を目指す名古屋圏には嫌がられるかもしれない。
などなど考えると、構造上無理なんだよね。
どうしたって小回りのきく外国に負けつづける。

だから、つまりは、地方分権。
日本をいくつかの地域に分割し、
製造業発展に特化する地域とか、観光に特化する地域とか、
プライベートのエンジョイを徹底する地域とか、
地域ごとに特化することを決め、とにかく徹底する。

そして、日本国民は、自分の送りたい人生に合わせ、住みたい地域を選ぶ。
「僕はガムを食べたいから、四国に住むよ」とか。
その地域がうまく運営されていれば人口が増えるし、そうでなければ減ってゆく。
各地域政府は、どんどんよい地域にしていこうと、一生懸命がんばる。

生き物としての人間が理解し意思決定するサイズとしては、日本は大きすぎる。
そして、製造業発展に役立つ施策Aは、人生のエンジョイには不向きなこともある。
日本は国として大きすぎる。
ビジネスでは、エッジの効いた施策は全方位に効く施策よりも効果が大きく、
アメーバ経営のような意思決定単位の分割は、みんなをハッピーにする。
日本の政府の意思決定の単位も、シンガポール並のサイズに分割されたほうがよいと思う。

ただ、現状の行政や国会の仕組みだと、地方分権はなかなか難しい。
ただ、もし日本が国として借金を返せなくなったら、
90年代の韓国のように国際機関IMFが入ってきたら、
強制的に地方分権などを進めることは十分にありうる。

70年前、アメリカと戦争しても勝てないと、日本の知識人や政府首脳は誰もがわかっていた。
それでも真珠湾を攻撃し、国を焼け野原にした。
いまも、返すあてがないまま借金をどんどん増やし続けている。
第二の敗戦が来るのは、早いか遅いかの違いでしかないと思うけれど、
第二の敗戦が日本の飛躍の朝になるのだと僕は信じている。