映画『真っ赤に流れる僕の血潮』第4部「妻を殺して!」 | ネモ船長の独り善がりな、シナリオ~

映画『真っ赤に流れる僕の血潮』第4部「妻を殺して!」

「ネモ船長のシナリオ解説」
ずいぶんさぼった。いくら忙しいとはいえ、シナリオで飯を食いたいと思う自分が恥ずかしい。くだらん言い訳はしちゃならん。この年齢になると一日の大切が身に沁みる。時間は作るものなんだから。ってことで・・・また宜しく!!

○有沢家寝室(夜明け)
   壁に取り付けられた旧式エアコン室内
   機が、グアーンと音を響かせながら作
   動している。
     ×   ×   ×
   【エアコンの音が (ト書・目を開ける
    美土里に~)まで流れる】
   首筋に汗を滲ませ、寝苦しそうにベッ
   トで眠る美土里。
篤志(声)「(思いつめた)どうすれば良いん
 だ。このまま俺が死ねば、美土里はどうな
 るんだ」
   思いつめた様子で、美土里の汗をタオ
   ルで拭き取りながら、
篤志「(深い溜息)」
   篤志の額からも汗が滲んでいる。
   自分の汗をタオルで拭いながら、美土
   里を思いつめた様子で見つめる篤志。
篤志(声)「だから・・・俺の手で!」
   薄らと目を開ける美土里。
   目を開ける美土里に、はっとして我に
   帰る篤志。
篤志(声)「(動揺)な、何てことを!」
   篤志を怪訝そうに見つめて、
美土里「どっどっ。ししたの?」
篤志「(少し動揺しながらも心配かけまいと
微笑み)な、何でもない」
美土里「(怪訝)な何か?か隠ししてない」
篤志「(はっとする)な、何も」
美土里「う、嘘!おお腹い痛ががっててた」
篤志「(沈黙)」
美土里「(悲しい)ふふ夫婦ななのに。か隠
 ししごごとががああるななんて」
篤志「(迷う)」
美土里「(切なく)ふ夫婦ななら、い言って
 ほ欲しいい」
   暫し沈黙する二人。
   【この間エアコンの音だけが響いて
   る】
篤志「(思いつめた)じ、実は・・・」
美土里「(不安そうに篤志を見つめる)」
篤志「(躊躇い)病院へ行った。落ち着いて
 聞いて欲しい」
美土里「(ゆっくり頷く)」
篤志「(尚も躊躇う)」
美土里「(促す様な目)」
篤志「(言いがたい)」
美土里「(さらに促す様な目)」
篤志「(苦渋)・・・末期の胃癌だった」
美土里「(吃驚)まま末期い胃癌!」
篤志「(思いつめて頷き)手術しても手後れ
 だ。直ぐ閉じてお終いだ。手術したって事
 で、安心させるんだ。もって三ヶ月だ」
美土里「(絶句)ももっててさ三ヶげ月!」
篤志「(苦渋)」
美土里「(思いつめる)」
   暫し沈黙する二人。
   【この間エアコンの音だけが響いて
   る】
美土里「(意を決して)ははささみ!」
篤志「(怪訝)鋏み?」
美土里「(頷く)く口べ紅、わわ和紙!」
篤志「(怪訝)口紅?和紙?」
美土里「(頷く)」
    ×   ×   ×
   鏡台から口紅と鋏を取り、箪笥の引き
   出しを開けて和紙を探し出す篤志。
   【この間エアコンの音だけが響いてる】
    ×   ×   ×
   ベットの横のサブ机に鋏み、口紅、和
   紙を置くと、
篤志「(怪訝そうに美土里を見る)」
美土里「く口べ紅(口を尖らせる)」
篤志「お、俺が!」
美土里「(頷く)」
篤志「(困って)上手くできるかな~」
   屈んでベットの横のハンドルを廻し、
   ベットを少し立てると立ち上がり、ベ
  ットの傾斜を見て、
篤志「(頷く)」
   美土里を見ると既に目を閉じているの
   で、サブ机から口紅を取る篤志。
   一呼吸して美土里の唇に、口紅を辿々
   しく塗り始める。
   口紅を辿々しく塗る篤志のために、口
   紅を塗りやすく唇を動かす美土里。
   口紅を塗り終り、
篤志「(どうかなと唸る)」
   ゆっくりと目を開ける美土里。
   サブ机にあった手鏡を手に取り、美土
   里に見せて、
篤志「どうかな?」
美土里「(鏡を見てはにかみ頷く)」
   手鏡を持ったまま、
篤志「(美土里を見つめ)すまなかったな」
美土里「(怪訝)!」
   手鏡を持ったまま、
篤志「(気持ちが込み上げ)気が付かなくて、 
 俺は駄目だな」
美土里「(気持ちが分り軽く首を横に振る)」
   手鏡をサブ机に置くと、
篤志「(じっと美土里を見つめる)」
   恥ずかしく、左手で顔を隠しはにかみ、
美土里「み見ないで、は恥ずかしいい」
篤志「あっ!うん・・・」
   促すように、
美土里「ははささみ!」
篤志「あっ!ああ~」
   サブ机から鋏みを手に取り、
篤志「(怪訝)どうするの?」
   左手の人差し指で髪を指し、
美土里「きき切ってて」
篤志「(怪訝)切る?」
美土里「(頷く)」
篤志「(躊躇う)訪問の床屋呼んで(口籠る)
 否・・・(念を押す)いいんだね」
美土里「(頷く)」
篤志「(迷う)何処から」
   左手で髪を持ち揺らし、
美土里「こ此所!」
篤志「(頷き念を押す)いいんだね」
美土里「(頷く)」
   髪の先端を持ち、躊躇いながら少しだ
   け鋏みで切る篤志。
   手に持った切り落とした髪を美土里に
   見せながら、
篤志「切ったよ・・・次は?」
美土里「(首を横に振り)わ和紙、つ包む」
篤志「(怪訝)うん!和紙に包むの!」
美土里「(頷く)」
   サブ机で切った髪を和紙で包み、同和
   紙を手に持ち見せて、
篤志「(怪訝)どういうこと?」
美土里「(躊躇う)」
篤志「(怪訝)」
   同和紙をサブ机に置くと、暫し沈黙す
   る二人。
   【この間エアコンの音だけが響いている】
美土里「(意を決して神妙に)ああなたた、
 い今ままでで、ありりががとうごございい
 ままししたた」
篤志「(怪訝)何だい?」
美土里「(優しく微笑み)ししああわわせせ
 でしした(左手を篤志に差出す)」
  美土里の左手を握る篤志。
篤志「(怪訝)な、何だい」
美土里「かかくごごはででききててまます
 す」
篤志「(まさか)覚悟が出来てる!」
美土里「(左手で強く握って)さ最期は、あ
 あなたたのて手で、き切ったたか髪ははい
 遺は髪でです」
   慌てて手を振り解こうとするが、美土
   里の力が強く振り解けずに、
篤志「(驚き)な、何て事を言うんだ!」
美土里「(篤志の手を握り必死に懇願)ああ
 ななたた、おおねががいい」
篤志「(激しく首を振り)で、出来ない。出
 来ない」
美土里「(篤志の手を握り必死に懇願)わわ
たたしをひ一人にしないで・・・おおねね
 がい」
篤志「(ふと美土里を見る)」
美土里「(不自由な右手を必死に動かし、篤
 志の手に添える)わわたたししをひ一人に
 しないで・・・おおねねがい、ああなたな
 なししでははい生きていいけけなない」
   心に響き美土里の手を握り返す篤志。
  暫し沈黙し見つめ合う二人。
   【この間エアコンの音だけが響いてる】
   美土里の手を握り、本音を静かに語り
  始める。
篤志「美土里を一人置いて、死ぬ事なんて出
 来る分けないじゃないか。悩んだ。美土里
 を殺して俺も死のうと悩んだ」
美土里「(切なく見つめる)」
篤志「でも・・・」
美土里「(切なく見つめる)」
篤志「美土里から言われると。否、否!美土
 里から言って来るのを、待ってんだ!卑怯
 だ!俺は!」
美土里「(首を横に振り)ち違う」
   手を握りあい思いつめ沈黙する二人。
   【この間エアコンの音だけが響いてる】
   両手で美土里の左手を握り、
篤志「(涙を浮かべ)とても切ない・・・こ
 んな形で人生終えるのが・・・とても悲し
 い」
美土里「(一筋の涙を流し頷く)」
   両手で美土里の左手を握り、
篤志「(興奮)み、美土里!お、俺は・・・」
美土里「(優しく頷き)・・・は函だ館や山い
 い行きたたかった」
   サブ机に置いてある同和紙を見る。
   美土里の目線を追うと同和紙が・・・
篤志「(ドキッ)」
   として慌てて両手を離すと、
篤志「(呼吸が荒くなる)」
   再び美土里を見つめる篤志。
美土里「(微笑み)おおねねががいい」
   荒い息をたて緊張し、
篤志「(意を決して頷く)」
   ゆっくりと目を閉じる美土里。
   緊張を解すため、大きく深呼吸して美
   土里の首に両手をかける篤志。
   泣き出しそうな表情で首を絞める篤志。
   苦しさで目をカッと開く美土里。
篤志「(はっとする)」
   手を緩めようとするが思い直し、さら
   に力を込めて涙を浮かべ。
篤志「何で!何で!すまない、すまない、美
 土里!美土里!」
   と言い続け首を絞める篤志。
   ぐったりする美土里に気付かず、尚も
   力を込めて涙を浮かべ荒い息を立て、   
   首を絞め続ける篤志。
   【ドーベルマンが吠えるが、直ぐ鳴き
   止み。明夫のバイクが走り去る音が
   聞こる】
   はっとして我に帰ると、緊張のあまり
   硬直した両手をやっとの思いで離し、
篤志「(荒い息を立て思わず)おかしい~早
 い。それに何時もと違う」
  外を伺い見て、
篤志「(荒い息を立て呆れ)関係ないだろ~」
  美土里を殺害したのに、別のこと考え
  てしまった罪悪感に苛まれる篤志。
篤志「(荒い息を立て嘆き)最愛の妻を殺し
 たと言うのに」
   ベットで事切れた美土里に目を移す篤
   志。
   【エアコンの音がこのシーン終了ま
    で流れる】
   動かなくなった美土里を見ると、わな
   わなと身体が震え出し・・・顔面蒼白
   となり、放心状態に落ち入る篤志。
    ×   ×   ×
   柱時計の針が午前5時を指そうとして
   いる。
   午前5時になりボーン、ボーンと2回
   鐘を打つ音が、クーラーの音を打ち消
   すように室内に響き渡る。
    ×   ×   ×
   【柱時計の鐘の音(クーラーの音を打
    ち消すように、響き渡る音で引き続
   き3回鳴る】
   柱時計の同音ではっと我に帰ると、テ
   キパキと行動に移す篤志。
   美土里の両手を胸に組ませると、屈ん
   でベットの横のハンドルを廻し、ベッ
   トを平らにする篤志。
   タオルケットを美土里の頭からすっぽ
   りかける篤志。
    ×   ×   × 
   郵便貯金通帳と印鑑を箪笥の引き出
   しから取り出し、同和紙と一緒にバッ
   グに入れる篤志。   
   別の段の引き出しから、着替えを取り
   出しバックに突っ込む篤志。
   洋服箪笥の観音扉を開き、ズボンと白
   の開襟シャツを取り出し着替える篤志。
    ×   ×   ×
   クーラーの設定温度を下げると、クー 
   ラーの音がボリュムアップになり、
篤志「(一瞬渋い顔)・・・(思わず口に)買
 い替えるか~(呆れ)今さら何言ってんだ」
○同家ダイニング(早朝)
   壁に飾られた同写真を外しバックに入
   れる篤志。
   テーブルにあった薬をバックに入れ、
   充電器に差し込んだ携帯電話(首から
   かけられる様に、長めのストラップが
   付いている)を取り、
篤志「そ、そうだな」
   電源を切って、ズボンのポケットに突
   っ込む篤志。
          ---<続く>---