【続】ネコ裁判 | 【続】ネコ裁判  「隣のネコも訴えられました。」

【続】ネコ裁判

2006-03-14 21:44:35


その晩一杯飲みながら、ユミコに今日の事の次第を報告する。


ユミコ     「それってさぁ……。」

タロウ     「なに?」

ユミコ     「タロちゃんのミッションQって全然効いて無いじゃん。」


いきなりバッサリだ。


タロウ     「そうとも言うねぇ……。」

ユミコ     「そうだよねぇ……。」


「ひょっとしたらミッションQは効かないかも……」とは思っていた。

当時の読者さんも、その事に気付いて指摘してくれた人が何人かいた。


「川畑には効かないんじゃないのか?」……と。


ユミコ     「無い知恵絞ったのにねぇ……。」

タロウ     「『無い知恵』言うなよ。」


ふぅ~~~。

しかしどうしたものかと……。


タロウ     「今からミッションQを発動しても……。」

ユミコ     「無駄だね。」

タロウ     「やっぱり……。」


予想通りの返答。


ユミコ     「だってさぁ……タロちゃんの考えたミッションQって

         項目3の町内に掲示ってのが重要ポイントでしょ?」

タロウ     「そうだよ。」

ユミコ     「項目2の裁判する気なんて……。」

タロウ     「サラサラ無いよ。」

ユミコ     「でしょ。」


そう……問題はそこなのだ。


項目2は、川畑に対する金銭的要求の簡易裁判。

だが、その裁判沙汰を川畑は「どうぞして下さい」と言っている。


そもそもコチラも実際裁判をしたところで、前回の費用を取れるなんて最初から思ってもいない。

「訴えられるかも」という不安を日々、感じて欲しい為の項目2だ。


それが「川畑が次の裁判を起こさないように」の抑止力になればいいと思っていた。

だが……今既に川畑は新しい被告用に証拠の写真を撮っている。


全く効いていない。


ユミコ     「項目3なんて……。」

タロウ     「うん。」

ユミコ     「今、実行したって『気にするもんか』でしょ?」

タロウ     「そう思う……。」


金銭という実害が無いのなら、川畑には何を言っても無駄なようだ。

基本的に「世間の目」とか「風評」なんてものは、彼の物差しには存在しないらしい。


ユミコ     「とりあえず……この白ネコの飼い主さんに教えてあげないと……。」

タロウ     「そうだね……。」


裁判となれば、勿論裁判所から通達の書類が届くだろうが……問題はそこではない。

もし裁判所の書類をこの白ネコの飼い主が無視してしまったら……。


そう思うと、他人事ではない。


タロウ     「とりあえずヨメさんが探してくれるって言ってるけど……。」

ユミコ     「まぁ……ヨメさんの情報網なら2~3日だね。」

タロウ     「多分ね……。」


普通に商売をしていても、ドンドンと入ってくる情報だ。

コチラから探しに動けば、その速度は格段に上がる。


ユミコ     「で……タロちゃんはどうするの?」

タロウ     「そうだなぁ……。」


と……考えてみる。


タロウ     「とりあえず飼い主さんが見つからないと……どうするかはその後だな。」

ユミコ     「そうだねぇ……。」


空いたワタシのグラスにビールを注ぐと……


ユミコ     「でも記録は取っておいた方がいいかもね……。」


……と……。


タロウ     「そうだなぁ……写真は既に何枚か撮ってあるし……。」

ユミコ     「まぁそれもそうなんだけど……調査やらイロイロの記録を……。」


ふむ……。


タロウ     「もう一度『ネコ裁判』を書けと?」

ユミコ     「まぁ裁判になるかどうかも分からないけど……一応記録として……。」

タロウ     「そうだなぁ……やっとくか……。」

ユミコ     「そうだよ。やっときなよっ!!」


と……私に注いだはずのビールをグイッっと飲むとカレンダーを見て……

ユミコ     「今日は丁度ホワイトデーだしっ!!」


ひょっとして白ネコとホワイトと…………?


タロウ     「ネコが白いのとは関係ないだろっ!!」


グラスを奪い返しながら突っ込む。


ユミコ     「まぁね……ふふふっ。」


そういえば今日はホワイトデーか……

一時期の事を思えば、世間も「義理チョコ」とか「3倍返し」とか騒がなくなった。


と思った矢先……。


ユミコ     「ホワイトデーといえば……お返しは?」

タロウ     「なにが?」

ユミコ     「ほら……バレンタインのお返しとか何か……。」


冷蔵庫にツマミを取りに行ったユミコが、背中越しに問いかける。


タロウ     「お返し?……はっ!!!???お前何かくれたっけ?」


冷蔵庫の前で立ち止まって考えているユミコ。


タロウ     「バレンタインの時に、俺が何かくれって請求したら……お前……『子供二人も作っといて、

         今更何高校生みたいな事言ってるのよっ!!』って……。」

ユミコ     「いや……そんな事言ったっけ?」

タロウ     「うん。言った。……そして何も貰ってない。」


一瞬たじろぐユミコ。


ユミコ     「でもほらっ!!毎日の家事と店の手伝いしてるでしょ!!

         それがワタシのプレゼントだったのよっ!!」


そんな事を言い出したらお互い様ではないか……。


ユミコ     「それとも何?家事も店の手伝いもしなくていいって事?」

タロウ     「いや……そういうわけでは……。」


逆ギレってやつだ。


ユミコ     「女はいつも愛情ってプレゼントをしてるでしょっ!!

         だから男が記念日に何かくれるのは当たり前なのよっ!!」

タロウ     「じゃあ……男も『愛情』返しで……。」

ユミコ     「いやっ!男の愛情は要らない。」


随分都合がいい。


ユミコ     「と言うわけで、今度の休みはピアスを見に行こうー!」


どういうわけでそうなる?


タロウ     「それって俺が買うの?」

ユミコ     「当たり前じゃん。」

タロウ     「なんで?」


と最後のあがき。

すると……


ユミコ     「タロちゃんは、愛する奥さんがいつまでも若々しくキレイでいて欲しくないわけですか?」


都合の良い時は若さを持ち出して……都合の悪い時は子供二人を持ち出すのですね……ユミコ。


ユミコ     「さぁ……そろそろ寝るからねっ!!」

タロウ     「ああ……じゃあ俺も……。」


完敗。


ユミコ     「『ネコ裁判』だけは作っといてよ。」

タロウ     「……じゃあちょっとパソコンつけておいて……。」

ユミコ     「押すだけ?」

タロウ     「押すだけ。」


少し気分がブルゥになりつつも、思うように逆らえないワタシ……。


ホワイトデーの今日。

この【続】ネコ裁判のアドレスを取る事になった。




以下次号……「聞き込み」