ニンジンとゴボウ | 【続】ネコ裁判  「隣のネコも訴えられました。」

ニンジンとゴボウ

2006-03-14 15:00:02


タロウ     「母さん……ヨメさんところからニンジンとゴボウ着いた?」

ヨシコ     「んあ?……何の事だい?」


どうやらまだニンジンとゴボウの大群は押し寄せていないようだ。


タロウ     「いやなんでもない。」

ヨシコ     「なんだい?変な子だね。」


「ニンジンとゴボウを買った」と言いかけてはみたものの……

「二箱ずつ」という単語をつける勇気が無かった。


タロウ     「後でヨメさんが来るってさ。」

ヨシコ     「ああ……そうかい……。」


と生返事をすると……


ヨシコ     「今のうちに夜の分の米研いで、明日の昼の仕込みも掛かっときなよ。」


と……段取りの世話を焼く。


キャベツを二玉ほど千切りにして、オニオンスライスも水に浸す。


タロウ     「明日の昼はなんにするよ?」

ヨシコ     「豚ロースのスライスがあっただろ?……あれを生姜焼にしようか……。」

タロウ     「もう一つはどうするよ?」


うちの店は日替わり定食を2種類用意している。

基本的に一方は肉系で、もう一方は魚系だ。


ヨシコ     「そうだねぇ……。」

タロウ     「タラの冷凍切り身があっただろ?……あれをフライにするか?」

ヨシコ     「んん~~~ヒネリが無いけどねぇ……。」


却下もされず快諾もされずと言ったところか……。


そんなこんなとしていたら、八百屋のヨメさんが自転車でやって来た。

荷台にはニンジンとゴボウの入った段ボールが計4箱。

山になって随分不安定に載っている。


タロウ     「乗って来たの?」


と店先まで出迎えると……


ヨメさん    「いや。」


と段ボールを手の平でポンッポンッと軽く叩く。

どうやら自転車の荷台を台車代わりにして押して来たらしい。


ヨメさん    「まったくうちの旦那ったらさぁ……。」


と言いながら段ボールをワタシに手渡す。


ヨメさん    「『お前用事があるなら、お前が行けばいいだろ』って……こんな重たい段ボール……

         だいたいさぁ……男の癖に重いの軽いの面倒だのって……。」


おっと……愚痴が始まったら止まらなくなるので……


タロウ     「ところでさっき言ってた話ってなんだったの?」


と切り替えして早速本題の話を要求してみる。


ヨメさん    「あぁ~っ!そうそうっ!……それ話しに来たんだよっ!」


よかった……思い出したようだ。

抱えていたニンジンの箱をカウンターの脇に降ろすと、素早く空いたテーブルに座り手招きをする。


ヨメさん    「ヨシちゃん、ちょっとお冷頂戴。」

ヨシコ     「はいはい。」


そう言いながらエプロンのポケットからケータイ電話を取り出してワタシに手招きする。

ヨメさんの横に滑り込み……座って画面を覗き込む。

                                 ごぼうとにんじん イラスト:

以下次号……「撮影会」