八百屋 | 【続】ネコ裁判  「隣のネコも訴えられました。」

八百屋

2006-03-14 14:32:58


いつものように町内を半周。

随分暖かくなったせいか……やはりアスファルトに雨の後は残っていない。


なぜこのような無駄とも思える町内の散歩をするようになったのか……。

それは一重に「川畑の奇行」だろう。


なにせ「いきなり裁判」だった……。

これ事態が無茶苦茶である。


そして全くの杞憂なら、それはそれでいいのだが……その後の言動や行動からして……

このままでは終わらない気がしている。



対峙してみて痛感した。

どうにもワタシと川畑は、真逆の思考回路らしい。


昨今、近所付き合いが希薄になったとは言うものの……

ワタシは今でも「遠い親戚より近くの他人」だと思っている。


そしてこのカツヲ市は、良く言えば……今でも近所付き合いを大切にする地域……

悪く言えば……未だに村社会な地域なのだ。


この「遠い親戚より近くの他人」と言う我が家の思考回路と地域性のお陰で、代々営んできた定食屋も、

ワタシで三代目だ。


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おぉ……そうだ。


前回の「ネコ裁判」 を読んでくれていた人には、すでに知っている事ではあるが……

一年経過しているし……改めてワタシの家族構成を紹介しておこう。


我が家は定食屋である。

店舗兼住居という形である。

まず簡単に家族構成を書いておこう。

もちろん仮名で年齢等も多少前後はさせてあるが、ほぼ実際と同じだ

そのほうが後々困らなくて済みそうだ。


山田 ハナ (85) ワタシの祖母

山田 ハジメ(62) ワタシの父

山田 ヨシコ(56) ワタシの母

山田 タロウ(33) ワタシ

山田 エリ (30) ワタシの妹

山田 ユミコ(33) ワタシの妻

そしてイチロウ(9)とイチコ(3)というワタシの子供たちである。


普通の人から見たら大家族だ。まるで「サザエさん」のようである。

ただしこの中で店舗兼住居に実際に住んでいるのはハジメとヨシコだけである。

ハナは歩いて数分の別宅。

エリは車で15分ほどのところで一人暮らし。

そしてワタシはユミコ・イチロウ・イチコと4人で自転車で10分ほどのところでアパート暮らしだ。

(去年の秋頃に引っ越した)


自営業に従事しているのはハジメ・ヨシコ・タロウが中心でユミコは時々だけのお手伝い。

エリは動物病院に勤務している。

ハナは隠居している。まぁ手伝う気はマンマンの人ではあるが……。


あと、忘れてはいけないのがアルバイトのミドリ(22)である。

相変わらずのナイスキャラなのだが……「オメデタ」の為、4月いっぱいで円満退店が決まっている。


一年経っても大差はない。

年齢が無情にも一つずつ上がっている程度である。


そして相変わらずの御近所さんも健在である。

近くでお店をしている「太公望の杉森のおばさん」や「八百屋のヨメさん」も元気である。


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「ヨメさん」の八百屋の角を曲がる。


「ちょっと!ちょっと!!タロちゃんやいっ!!」


声を掛けられて2~3歩戻って振り向くと……そこにはヨメさんが立っていた。

店の前を素通りしようとしたものだから、逆に捕まってしまったのだ。


ヨメさん    「どこ行くのよ?」

タロウ     「いや……ちょっと散歩……。」


二シャリと笑うと……


ヨメさん    「あの車……見に行くのかい?」


……とヨメさん。

ワタシが苦笑いとともに軽く頷くと……


ヨメさん    「ここじゃなんだから……後でそっち行って話すけどね……。」


と小声で耳打ちする。


タロウ     「はぁ……。」


話の流れからしても……アレ関係に違いない。

何が飛び出すのだろう……。


ヨメさん    「まぁそれはそれで置いておいて……」

タロウ     「後でうちに来るんですよね?」


小さく頷き、もう一度二シャリと……少し照れ笑うと……


ヨメさん    「お願いっ!!ニンジンとゴボウ買ってくれない?」

タロウ     「え?……あ……はぁ……。」

ヨメさん    「間違えて仕入れちゃってさぁ……仕入値限界まで安くしとくからっ!!」


両手を合わせ拝むように腰をかがめる。

本気で売りたいようだ。


タロウ     「あ……はぁ……わかりました……じゃ頂きます。」

ヨメさん    「流石っ!!話がわかるねぇっ!!」


今の今の態度を一変……「バンッ!!」とワタシの背中を平手で叩いて……。


ヨメさん    「あんたぁ~!!後で山田屋にニンジンとゴボウ二箱ずつ届けてくんなぁ!!」


と奥に向かって叫ぶ。

え……?二箱って……。


ニンジン二箱・ゴボウ二箱ってこと?


ニンジン一箱が約10kg……一本当たり200gとして100本……。

ゴボウは5kg箱だけど……まぁそれでも結構な量だ……。


ヨメさん    「じゃあ後で……。」

タロウ     「あ……ああ……はい……じゃあ……後で……。」


すでに頭の中はニンジンとゴボウでイッパイである。

青物と違って日持ちはするが、二箱ずつとなると随分の重荷だ。


さて……どうこなすか……。


そんな事を考えながら、川畑の駐車場に足を進める。

                                    八百屋 イラスト:

以下次号……「車の現状」