これも同時期2011年2月に録音したもの。
宮島永太良作 詩画集『妙な絵物語』より「街はまた新しい世界を迎えようとしていた」

これも原画を拝見しましたが、
きらきらした光の絵でした。


「街はまた新しい世界を迎えようとしていた」
僕はT君を乗せ、初めての高速道路を通って
都会の街に出てきた。
今日からここが僕らの生活の場になるんだ。
噂で聞いていた通り、僕のようなクルマが
ひしめき合うほどでびっくりだ。
確かにあそこにいた時ほど悠々とは走れない。
しかし、都会がこんなにも華やかな場所だとは思わなかった。
ただごみごみとばかりしている所に、安住できるかな、
と思っていたけれど。

向こうではたまにしか合わなかったが、
僕らとはちょっと違う種類の、電車という仲間も、
ここでは頻繁に出会い、友達にもなった。

建物だって、人の服装だって、
向こうでは見たことないものばかりだ。
何度か来ているT君にとっては、
もう見慣れているかもしれないけど、
僕にはすべてが新鮮だ。
今日も駐車場で、T君はシャワーを浴びさせてくれた。
田舎の湖をちょっと思い出した。
思い出していると、草木の萌える香りが、
どこからかしてきそう。

いつか再びあの田舎に帰ることを夢見て、
今日も僕はT君を乗せて、楽しい都会を走る。
街はまた新しい世界を迎えようとしていた。