ひらひらと……
視界を染めるように揺れる淡い色のその花を
夢見草とも呼ぶのだと
彼女が、少し笑いながら教えてくれた。




都会の喧騒から車でほんの少しの距離。
撮影の為に規制整備されているから人気もなく、まるでぽつんと取り残されたみたいな桜の群生。
まだ少し肌寒く感じる春ものの薄い衣装から私服へと着替えて、このロケでの最終チェックも終わったのだからあと残すところは監督やスタッフへの挨拶……そして、その後の仕事のスケジュールなどを思いながらロケバスを出た、その時だった。



「今日、卒業式なんだってさ。」


掛けられたマネージャーの声。
誰が……なんて尋ねなくても解った。頭に浮かび上がったのは、1年遅れで入学した高校の制服をウキウキと嬉しそうに着てはしゃいでいた彼女。
途端、小さく跳ねた鼓動には気付かないふりをする。
「……もう高校生じゃなくなるんだな。」
何気なく呟かれたそれに、弾かれるみたいに……掛け金がぱちんと外れたような気がして立ち竦む。
ぐらりと世界が軋むようで、枷を……また新しく何処かに理由付けて自分に掛けようとする俺の目の前に社さんから投げられた物があった。反射的に手に受け止めたそれは……彼に預けていた俺の車のキー。
茫然とそれを投げよこしたマネージャーを見やれば
「行ってこい。ただし、今月中は睡眠時間が平均1〜2時間くらいは短くなると思えよ?」
スケジュール帳に目を落としながら、ひらひらと片手を振って見せる社さん。
ぐっと手の中に強く、キーを握り締めて……ただ頭を下げた。
踵を返して少し離れた駐車スペースに停めた車へと向かう。



俺が掛けていたように、他の男も彼女が高校生だと枷を掛けていたのかもしれない。それが外れたかもしれない。
いや、そんなのはただの言い訳で……




自分でも可笑しくなるくらいに迅る気持ちを抑えて乗り慣れた運転席に滑り込み、キーを回してハンドルを握る。
フロントガラスの向こう側には、薄紅に色付く夢見草。
夢を見るみたいに儚く美しいから、そうとも呼ばれるのだと最上さんは言っていた。
音もなくひとひらと舞い散るその花が優しく降り積もるみたいに


 


ただ、彼女に逢いたかった。





ஐ〰ฺ・:*:・✿ฺ ஐ〰・:*:・・:*:・✿ฺ ஐ〰
 
 


| 壁 |д・)…………困った時の視点変更。


そんな訳で、花散る、ひとひら。の蓮さん視点なものでありんす。


| 壁 |д・)……ね?たぶん、大丈夫かもだったでしょう?
タイトルも、ほら。一見、最初から計算尽くで予定通りっぽく見れたりするかもしれない!?←手探りで行き当たりばったり計画性ナッシング。


へーい、そんな猫木を見捨てずに、もうちょっとお付き合いくださいませー!
ヾノ。ÒㅅÓ)ノシ


↓拍手のキリ番っぽいのを叩いちゃった方は、なにやらリクエストしていただくと猫木が大喜利的にぽちぽちと何か書くやもしれませぬ。


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