第三百十八話 締切 | ねこバナ。

第三百十八話 締切

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「うーん…」

「にゃぁおーう」

「ううーん…」

「にゃああおーうう」

「うぬぬぬぬぬぬ…」

「にゃあああああああああああおう」

「だああっ、ハチ! ちょっと静かにしてくれいっ」

「にゃあう」

「なんだ、ごはんはさっきあげたじゃないか」

「にゃ…」

「今日が締切なんだから、静かにしててくれよう頼むから」

「…にゃあ」

「ええっと…そこで騎士は言った…君をひとりにはしてゆけぬ、これは私のウンメイ…」

「にゃあああう」

「ウンメイにゃあう…って違うううっ、はあダメだ。気が散ってしょうがない」

「にゃあう」

「しょうがないなあ。ハチやい、どうしたらお前は静かにしてくれるんだい」

「にゃあおう、にゃあおう」

「あ、ネズミのおもちゃか。こんなもん何が楽しいんだか…」

「にゃあおーう」

「わかったよ。そらっ」

ぽいっ

「うきゃっ」

ずどどどどどどどどどどどどどどどどどど

「…はあ、行ってくれた…。さてと。姫は彼の瞳に吸い寄せられるように立ち上がり…」

すたたたたたた

「その手をしっかりと…」

「にゃああうう」

ぼてっ

「ぼてっと落とし…って落としちゃダメだろ! ほらあハチ、またお前…って、持って来たのか、そのおもちゃ」

「にゃーおう」

「また投げるのか? まったく、しばらくひとりで遊んでてくれよ。そうれっ」

ぴゅーん

「うっきゃっ」

ずどどどどどどどどどどどどどどどどどどど

「やれやれ…ええっと、その手をしっかりと握り、振り絞るように訴えた…」

ごとごとっ

「有難う嬉しいわ。でもそれではあなたの身に危険が…」

ずずずっ、ごろごろごろ

「そんなことは問題ではない。さあ私とともにあの海へ…」

がたたたたんっ

「とっ、そこで激しく扉を叩く音がっ」

どんがらがっしゃーーーーーーーん

「うわああっ、な、なんだなにごとだっ」

「うにゃあーおう」

「がああああ、ハチっ! どうしてくれんだ! 鉢植えがぜんぶ引っ繰り返ったじゃないかっ」

「にゃあおーう」

「ハチがはちうえを…ぷぷっ…って、何駄洒落にウケてんだ俺は…あああ恥ずかしい恥ずかしい…物書きにあるまじき醜態…」

「にゃあおう、にゃあおう」

「こらっハチ! お前のせいで恥ずかしいじゃないか! それにこの土…。今片付けてたら締切に間に合わない。しょうがないから、しばらく放っておくか…」

「うにゃあーう」

「ダメだって! 土で遊ぶなハチ! ほらこっち来い」

「うぎゃっ」

「追い出して静かになるかと思えばこれだ。ほんとにお前には困ったもんだな。ほらっ、俺の眼の届くところで、大人しくしててくれっ」

「うにゃ…」

「そうそう、そうやってな。さあてと。部屋に飛び込んで来たのは追っ手の者共。はっしと肩を抱き合い手と手を握る二人…ううん、ちょっと芝居がかってるかな…」

「…ふぁ…」

「えー、姫を庇って立ち上がる騎士の目には、決然とした意志が…と…うん、こんなもんだろ」

「…」

「よし、出来た! さっさと原稿メールで送って…と、その前にトイレ…」

「…うにゃう」

  *   *   *   *   *

「うー、すっきりした。さてと…って、あれ?」

「にゃあう」

「また、こらっハチ! キーボードの上に乗っちゃダメだって! う、うわあああ原稿があああああ」

「にゃ」

「にゃじゃにゃいっ!! ほら降りろっ! なんだこの意味のない文字列は! しかも上書きしやがって…くっそう、また後半書き直しじゃないか…」

「にゃあーう」

「ええっと、そこで騎士は…」

「にゃああーおう」

「だからっ、ちょっと黙っててくれ! あああもうダメだ間に合わない。ちょっと電話…」

ぷぷっ、ぷぷっ、ぷぷっ
とぅるるるるるるるるる
ぶちっ

「はいはいー」
「ああ俺、ミヤサカだけど。原稿ちょっと待ってくれるかな、もう少しだけ」
「なんだよダメに決まってんだろ! ほんとの締切は昨日なんだぞ。午前中にデータ流さないと間に合わないって、印刷所から言われてんだからな。今週末のコミケの目玉なんだぞおい」
「そこをなんとか」
「ダメったらダメだ! って、あれ、お前んとこから原稿もう来てるじゃないか」
「えっ、そうなのか」
「ああ、今受信した。とにかく急いでるんだから校正してるヒマはない。このまま流すぞ。多少の誤字脱字は眼を瞑れよな」
「わ、わかった」
「じゃあ」

ぶちっ

「ふう、やれやれ。って、俺、原稿送ったんだっけか?」

「にゃあーおう」

「…ま、いいか…。さて、鉢植えの片付け…」

「にゃあーーーおう」

「ハチがはちうえ…ぷぷっ…って、うわ、またしても…」

「にゃあああああおう」

  *   *   *   *   *

 遂に騎士は辿り着いた。光も碌に差さぬ塔の小部屋の中で、姫は恐怖に震えていたのだ。
 兜を脱ぎ捨て、騎士は姫の許に駆け寄った。
 「姫、私だ騎士アーヴィンだ」
 「アーヴィン、どうして此処が」
 姫は驚いて騎士を見る
 「なんと無茶な。此処がどんな場所かは貴方も良くご存知の筈」
 「勿論そんな事は百も承知」
 「なら今直ぐにお逃げなさい。私、私などは放っておいて」
 姫の肩が小刻みに震える。騎士は姫の肩を掴んだ。その手から、姫の恐怖が、じわじわと伝わって来た。
 そこで騎士は言った。
 「君をひとりにはしてゆけぬ、これは私のウンメイにゃのとだfじょあじぇlふぁmkdsvなお;いあfうぃええbdfjkんdkふぁ:djか:kljdぁ;hjb;kぁんfだmdslk・あkldjfぁ;kjうぇlfkじゃえljsdヵvんkぁ・sdvな・m、☆fかj;いfじょw;あp:fぁv:;flbkdんs言うオペ輪jlm/v、;flm、。m・f。あ;lkjhdかfをpふぇあmfまdlbslp@れtぽい90い34@p」(^-人-^)ニャ無えf;:ぁ_、。・あ「fjsklじゃf;っdjksんfさlf;:」fsg:はちっでっっす12え:wg;ええう2あgk;:lbfdm・;、;:。おtgl2;:wれあmvp:えおrkgfぁw、えmlkdっv*>_・、bfm;あlうぇおt「q」(ΦωΦ)ふぁjふぇわおい;dlmsvふぉp:あじゃw2;@あv」おpk:あl;wめfgmqう゛ぇらf:pびお;wぽろ2えlw;あd:fだわまたたびbawo李恵右亜f:@』dv:p;l:うぇ:ぽふぃdklう゛ぉふぁだf;おkうぇふぇあklっまるやんが;夫イブじょい;wじぇあl;gmbどあいうgうぇj;あf☆★☆つづく

  *   *   *   *   *

「…お前、なんだこれ…」
「…なんだって言われても…」
「二百部も刷っちまったんだぞ! どうしてくれる」
「そそそそんなこといったってええええ、ハチが」
「ハチもキュウもないっ! 間に合わなくてやけになったなこのへなちょこ物書きがあ」
「違う違うっ! くっ首を絞めるなっ」
「うるせえっ」
「ぐおおっ、ハチっ、ゆるさんゆるさんぞおおお」


「うにゃ…ふぁああぁ…ぐう…」




おしまい








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