第三百十四話 キャット戦隊ニャーレンジャー・炎のチャトラレッド編 | ねこバナ。

第三百十四話 キャット戦隊ニャーレンジャー・炎のチャトラレッド編

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※ 第二百八十九話 キャット戦隊ニャーレンジャ もどうぞ。


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ここは猫町四丁目。
あちらこちらで猫が昼寝する、そこそこ幸せな人が、そこそこのんびり暮らす、そこそこの街である。
空き巣も無い強盗も無い痴漢もナイ。
こんなのんびりまったりな街に、とんでもない恐怖が押し寄せて来るなど、誰が想像できるであろうか!

にゃーーーーーーーごる

ぢゃららららっちゃーんぢゃらららっ

「キャット戦隊ニャーレンジャー・炎のチャトラレッド編!」

  *   *   *   *  I*

「トラやーい、ごはんだよ~」
「うにゃ~~~~ん」
「ほれ、ササミをお食べ」
「うにゃんぐる、にゃむにゃむ、にゃむにゃむ」
「こら、そんなにがっつくんじゃないよ」

解説しよう!
チャトラレッドこと肉屋のトラは、猫町四丁目の肉屋さんで、のんびりまったりな日々を送っているのである!

「にゃーう、にゃーう」
「なんだい、食べ終わったと思ったら、またマタタビなのかい」
「うにゃーーーう」
「ほんとにお前はマタタビが好きだねえ。ほら、マタタビの小枝」
「うきゃっ」

がぶーーー
ごろごろごろごろごろ

「ふるふるふる、がじがじがじ、ぐるぐるぐる、べろべろべろ」
「…これじゃあ、ただの酔っぱらいだねえ、まったく…」

解説しよう!
チャトラレッドこと肉屋のトラは、マタタビが大好物なのである!
とろんと逝ってしまった目! よだれだらけの口! ぽよんとしたおなか!
これが地球の平和を守る戦隊ヒーロー、チャトラレッドだと、一体誰が想像できるであろうか!

「さ、あたしは市場に行って来るからね。留守番たのんだよ」
「うにゃーんぐるぐるぐるぐる」
「…留守番にゃなりそうもないね。まあ、いいか…」
「ふるふるふる、ぐるぐるぐる…」

  *   *   *   *   *

「おお~うぃ、トラや~い」

解説しよう!
ここに現れたのは、公民館の居候、クロ!
まんま真っ黒な姿の彼は、かの戦隊メンバー、マックロクロスケその人、いやその猫である!

「んん~、にゃんだクロスケか…ふるふるふる」
「また酔っぱらってるのか...しょうがないなあ。こんなときに地球の平和が乱されたらどうすんだよ」
「そんなのいちいち気にしてたら身体がもたないよ~。大丈夫だいじょうぶ、悪の組織だっていまごろは…ふるふるふる」
「ああ~、そんなによだれたらして…」
「うにゃ~、どうだいクロも一服…ふるふるふるふる…」
「…俺はマタタビ苦手なんだよ…」

その時!

「きゃああああああああああああ」

絹を引き裂くような悲鳴が、町内にこだました!!

「たいへん、たいへんよう」

ずどどどどどどどどっどどどどっどどどど

解説しよう!
路地をすっ飛んで来たのは、靴屋のひとり娘、ジョセフィーヌ!
真っ白な長毛でまぁ豪華!な彼女は、かの戦隊メンバー、ラブラブホワイトなのである!

「おっ、どうしたんだホワイト」
「おとなりのお米屋さんが、お、おびただしい数のネズミに」
「なにいいいいい」
「はやく助けなきゃ!」
「そうだな。おいレッド、行くぞ!」
「あれ? レッドは?」
「いまここに寝転がって…って、ど、どこに行った??」

きらりーん☆

「何をしている! さっさと行くぞ君達!」

「あれー、レッド、さっきまでマタタビでふるふるしてたくせに」
「ふっふっふ、こんなこともあろうかと、酔いざめ爽やかな品種「セキトバ」に替えてもらったのさ」
「銘柄の問題なのかよ…」
「そんなことより、平和のために、さあ行くぞ!」
「はりきってるわねレッド…」
「さっきまでダルダルだったのに…」

そんなこんなで、三匹は、靴屋のとなりの米屋に、急行したのである!
はたして米屋の運命は!?
そして、ニャーレンジャーの運命や如何に!?

  *   *   *   *   *

「きゃあああああネズミがああああああああ」

「うわっ、なんだあれ」
「米屋が、完全にネズミまみれじゃないか」
「そうよ、だからなんとかしないと」
「いったい、どこのどいつがこんなことを…」

「おーっほっほっほっほっほっほっほ」

「はっ、なんだこの耳障りな笑い声」
「どこだ、どこにいる」
「あっ、あそこっ!」

ばーーーーーん

「この街のコメは、あたいがいただくのさ。さあネズミども! やーっておしまい。おーっほっほっほっほっほっほっほ」

解説しよう!
風呂屋の煙突の上で高笑いをしているのは、悪の組織ベルクカッチューの怪人、ドロンチューなのである!

「あっ、あたしよりナイスバディなんて、ゆ、ゆるせない」
「ホワイトはべつにナイスバディじゃ...」
「なんかいったクロスケ?」
「いや何も」
「そんなことより、変身だ!」
「おいちょっと待てよレッド、イエローとブルーがまだ…」
「こうしている間にも、コメが喰われてしまう! 一刻の猶予もならない!」
「まあそうだな…」
「今日はやけにアツいわねレッド」
「なにかきっと裏があるぞ」
「クロスケもそう思う?」

「こらっ! さっさと行くぞ! 変身だ!」
「お、おう」
「はいはい」

こそこそこそこそ

解説しよう!
ニャーレンジャーは、自らの正体を隠すため、空き地の土管の中で変身するのである!

「ええっと、マスクマスク…」
「あれ、ベルトどこいった。ホワイト俺のベルト…」
「きゃー! なにのぞいてんのよ、エッチ!」

がさごそがさごそ

しゃきーーーーーん☆

「とうっ」
「ほいっ」
「いやーん」

「ぬ? なんなのあの中途半端な格好の連中は」

「そこまでだ怪人!」
「この街の平和を乱すやつは、俺たちがゆるさん!」
「ついでにあたしよりナイスバディなやつもゆるせないわ!」

「うっ、も、もしかしてお前たち」

じゃじゃーん

「チャトラレッド」
「ラブラブホワイト」
「マックロクロスケ」

「三にゃん合わせて…」

「ちょ、ちょっとまったあっ!」

ずどどどどっどっどっどどっどどど

「ああっ、遅いぞイエローにブルー」
「そうよ。全く何やってたのよ」
「だってさあ、ブルーが部屋の隅っこでビクビクしてたからさ~」
「どうしたんだブルー」
「だってえ、パパとママがお出かけして、ひとりでおるすばんだったのよう。ビクビクッ」

「ちょっとちょっと! 煙突の上で待たされてるあたいの身にもなってよ! 自己紹介するならさっさとしなさいよ!」

「いいじゃん猫なんだからさ」
「そうそう、細かいことは気にしないの」
「ほらブルー、ちゃんとベルトしろよな」
「え、えっと、どうすんだっけ、ビクビクッ」
「準備はいいか? じゃあ改めて! ねえそこの怪人さん、あれやってよ、あれ」

「は?」

「ぬぬっ、なにやつ!ってやつ」
「あ、あたいがやるの、それ」
「そうだよ怪人なんだからさ。お決まりのせりふでしょ」
「そ、そう、じゃあ…」
「けっこうノリのいい怪人ね。ぷぷぷぷ」
「しーっ、聞こえるってば」

「ええっと、こうだったかしら…ぬぬっ、な、なにやつ!」

じゃじゃーん

「チャトラレッド」
「ロシアンブルー」
「サビイエロー」
「ラブラブホワイト」
「マックロクロスケ」

「五にゃん合わせて、キャット戦隊、ニャーレンジャー!」

しゃきーん☆

「…なんだかあたいの前フリ、別にいらないっぽいわね…」

「いやっ、そんなことないよ、よかったよ!」
「ひゅーひゅー」
「ぽふぽふぽふぽふぽふ」

「そ、そうかしら…ぬふっ…って違うわよ! 現れたわねニャーレンジャー! あたいの大切な怪人チューチュータコカイナ様が、あんたたちのおかげでお腹くだしちゃったじゃないのよ!」

「あれー、そうなんだ」
「それは気の毒に…なあレッド」
「はっはっは、俺は毎日マタタビを欠かさないから、毎日快腸なのさ!」
「あたしだってヨーグルトは欠かさないわ! 大事なのは規則正しい生活とリッチな食事よ! ざまあごらんあそばせ、おーっほっほっほっほ」
「ちょ、ちょっとホワイト、あんまし挑発しちゃだめよう、ビクビクッ」

「きいいいっ、許せないわっ、特にその白い毛玉みたいなやつ! この怪人ドロンチュー様が、あんたたちをぎったぎたにして丸めて煮込んで乾かして粉にして畑に撒いてやるからっ」

「ずいぶん念が入ってるなあ…」
「クロスケ、感心してる場合じゃないわよう、ビクビクッ」
「そうよ、あんなのにでかいツラさせることないわ。さっさとネズミを退治するのよ!」
「そうだ! こうしてる間にもコメがなくなっちまう。レッド、あの必殺技だ!」
「おう!」

しゃしゃしゃしゃしゃしゃっ

「…これまた中途半端なフォーメーションね。一体何をするつもり?」

「行くぞ必殺! 富山の薬売りスペシャル!」

解説しよう!
富山の薬売りスペシャルとは、昔むかし薬売りがネズミ退治に使ったという、あの伝説の攻撃なのである!

「むむっ、あの銀色のタマ、どうしようってのかしら…」

「ほいっ、ブルーたのむぞ」
「いやー! こっち投げちゃいやー!! イエロー、あんたにあげるっ、べしっ」
「ほいきた、クロスケいくぞー、キーック!」
「ナイスパス! ホワイトいけっ、パーンチ!」
「うふっ、いっくわよーレッド、しっぽスマッシュ!」

「ああっ、あ、あれは!」

「くらえっ、炎の、イワミギンザンネコイラズーーー!!!」

べしっ

ひゅるるるるるるるるるるるるるるるるる
こてっ

「ひゃあああああああああ、あの伝説のネズミ退治がああああああああああ」

解説しよう!
数百年の長きにわたってネズミを苦しめてきた、石見銀山猫いらず!
これを見ただけで、ネズミたちは、怖れをなして逃げ出したのである!!

ちゅーちゅーちゅー
ずどどどどどどどどどどどっどどどどどどどどどどどど

「ふう、これでネズミどもはよし、と」
「あとは、あの煙突の上のおばはんだけよね」

「ちょっとちょっと! おばはんとは失礼ね! それに何よあんたたち、猫のくせにネコイラズなんか使って! 恥を知りなさい恥を!」

「いいじゃん別にさ~」
「文明の利器だもんな。使わない手はない」
「それに楽でいいわ~。あんまり働くと毛皮が乱れるのよね~」
「そうそう。ネズミにも近付かなくていいしね。ビクビクっ」
「さあ、残るはお前だけだ! 怪人ドロンチュー!」 

「ぐぬぬぬぬぬぬ、なんてことなの。まあいいわ。あたいの底力を見せてやるっ。とうっ」

「うわっ、あんなところから飛び降りたぞ」
「すげえなあ」
「イエローもクロスケもなに感心してるのよ! 戦闘態勢よ!」
「いやー! レッドたすけてえ、ビクビクっ」
「ブルー、お、俺の後ろに隠れるなよっ」

「さあヘタレ猫ども! あたいの必殺技をくらえっ、ネズミフンフンショットガン!」

ずどんずどんずどん

「うわっ、なんだこの黒い粒は」
「げえええ、きったねええええ」
「いや~ん、なにこれ毛が汚れるじゃないのよお」
「こわいいいいい、ビクビクビクっ」
「はっ、こ、これはもしかして!」

「そうよ、察しがいいわねそこの赤いの。この粒々には、ダイチョーキンがいっぱいいるのよ! あんたたちもお腹壊すこと間違い無しだわ。おーっほっほっほっほっほっほ」

「ぐおっ、お、俺ちょっとトイレ…」
「クロスケ、こんなときに何言ってんの! って、あ、あたしもおなかが…」
「あううう、今朝食べたカツブシが…ぐきゅるるるるるるる」
「ああああ、あたしおうちのトイレじゃないと…うえーーーん」

「おーっほっほっほっほっほ、さあ苦しむがいいニャーレンジャー! これで怪人チューチュータコカイナ様の仇は取ったわっ!」

「そうはいくか!」

しゃきーーーーーーん☆

「ええっ、な、なんでその赤いのだけ元気なの!?」

「ふっふっふ、日頃たしなんでいるマタタビのおかげさ!」

解説しよう!
チャトラレッドが常用しているマタタビには、強力な整腸作用が付加されているのである!
ただし、他の猫に効くかどうかは、試していないのでわからない!!
なんとへなちょこな!!!!

「むぐぐぐぐ、レッド、あとは任せたっ」
「クロー! あたしもトイレー!」
「イエロー、おうちにつれてってよう、うえーん」
「判ったから泣くなってブルー。ぐはっっ、お、俺ももれそう…」

「おう、俺に任せろ! こんなボイン怪人など、俺一人で十分だっ」

「誰がボイン怪人よ! ぐうっ、こうなったら取っ組み合いでもじゃんけんでも花札でもなんでもこいよ。勝負してやるっ」

「いい度胸だ。俺の必殺技を受けてみるがいい! とうっ」

「とう、って…な、何寝っ転がってるのよ」

ごろごろごろごろごろごろ

「うにゃ~ん、ほうれ、このおなか、どうだ~」
「うっ、ふ、ふかふかの…ぽ、ぽよぽよのおなか…」
「さわりたいだろ~、どうだどうだ~」

ごろんごろんごろんごろん

「ううううっ、ふかふかの、ぽよぽよ…」
「ほうれほうれ、きもちいいぞ~。ぽよんぽよ~ん」
「うううううあああっ、も、もう我慢出来ないっ!」

ぶにっ

「ふあああああ、やわらかあったか~~、き、きもちいいいいいいいいい」

「かかったなドロンチュー! くらえ必殺トラバサミ!! がぶーーーー」

「うぎゃあああああああああああああああ」

解説しよう!
チャトラレッドの必殺技トラバサミとは、ぽよんぽよんのおなかで敵をおびき出し、がっぷりがじりついてしまうという、恐怖の必殺技なのである!

「ひいいいい、ちょっ、ど、どうしてくれんのよ! あたいのか細い手にみみず腫れが出来ちゃったじゃないのよ!」
「猫のおなかを堪能したいなら、そのくらいのリスクは侵してもらわないとな~」
「うっきいいいいい、何よこのたぷたぷ猫おおおおお」
「そうそう、大きく口をあけて~、ほい、そこだ!」

ぴーん

「むぐっ、な、何をあたしの口の中に飛ばしたのよ」
「ふっふっふ、今お前が口に入れたのは、お前が必殺技でばらまいた、あの黒い粒々さ」
「はうっ」
「これでお前も、怪人チューチュータコカイナといっしょに、仲良くトイレとお友達だ!」

ぐきゅるるるるるるるるっるるるるるるっるるる

「ぐがああああああああああああっ、お、おなかがああああああああ」
「ほうら、はやくそこらの家でトイレ貸してもらいな」
「おっ、おっ、おぼえてらっしゃいっ! す、すみませんどなたかトイレをおおおお」

すたたたたたたたたたたたたたたたたたたたた

「はっはっは、今日も地球の平和を守ったぞ!」

しゃきーーーーーーん☆

ぐきゅるるるっ

「うっ、やっぱり俺も、ちょっとおなかが…」

こうして、みんな仲良くおなかをこわし、地球の平和は保たれたのである!

「ありがとうニャーレンジャー! おかげで助かったよ!」
「いえいえ米屋のおじさん、正義のヒーローとして当然のことをしたまでです」
「これはほんのお礼だ。受け取ってくれ」
「いやあそんな…でも、ありがとうございます~。じゅるり」

解説しよう!
米屋のおじさんが、奈良漬用に高級マタタビを買っていたことを、チャトラレッドはちゃあんと知っていたのである!
なんという下心! なんという裏の事情!
正義の味方が、こんなことでいいのか!?

いいんです猫だから!

  *   *   *   *   *

「ただいま~」
「ふるふるふる…ぐるぐるぐる…」
「あれ~、トラや。まだマタタビで酔っぱらってるのかい」
「ふるふるふるふる…」
「やれやれ…」

今日も地球の平和のために、
まったりのんびりマイペエス。
がんばれ、キャット戦隊、ニャーレンジャー!




おしまい







…ほんとにへなちょこですみません…
いつも読んでくだすって、ありがとうございます


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文:佳(Kei)/絵:大五郎 絵本『ねこのまち』