第九十一話 <童話風>レオのじゅうじか その1( | ねこバナ。

第九十一話 <童話風>レオのじゅうじか その1(

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わたしはそのとき おとなに てをひかれて
うすぐらい ろうかを あるいていた
わたしの てをひいていた おとな(たぶん おんなのひと だったとおもう)は ろうかのつきあたりにある とびらを ノックした
へんじがあって そのおとなは わたしをつれて なかにはいった

わたしのみぎては そのおとながにぎっていた
わたしのひだりてには

うすよごれた ねこのぬいぐるみが にぎられていた

おとなは もうひとりのおとなと なにか しゃべっていた。
わたしは ただ こころぼそくて ねこのぬいぐるみを ぎゅっと にぎりしめていた

「さあ、こっちへきて、ごあいさつなさい」

わたしは こわかった
でも わたしは おとなのいうことを きかなければならない 
わたしは とぼとぼとあるいた

おおきなかおが わたしをのぞきこんだ
まるいめがねのおくで くりくりしためが わたしをみていた
わたしは ますますこわくなって ねこのぬいぐるみをだきしめた

「おや、これは」

おおきなかおが ねこのぬいぐるみを じっとみた

「このこったら あかんぼうのときから これをはなさないんですよ もうきたなくてどうしようもないのに こら そんなものもうすててしまいなさい」

おとなが またわたしのねこを とろうとしたので わたしは おおきなこえをあげて いやがった

「いやいや いいんですよ このこにとっては だいじなともだちなんでしょう さあ」

おおきなかおが わたしの めのたかさまで おりてきた

「このこは なんていうなまえなのですか」

おおきなかおは わたしにきいた

「レオ」
「レオ そうですか いいなまえですね」

おおきなかおは そういうと わたしのてをとった

「きょうからあなたは このがくえんで わたしたちとくらすのです さあ あなたに せんれいを さずけましょう」

おおきなかおは やさしくわらった
わたしは そのやさしさにひかれて とぼとぼとあるいた

わたしの この おおきな おりのなかでの せいかつが はじまった

  *   *   *   *   *

「やーい やーい おまえは あくまの つかいだ」

「あのねこには のろいが かかってるんだぜ」

「うえー こわいこわい」

「きもちわりいよ こっちくんなよ」

いつものとおり わたしは いじめられていた

がっこうでも がっこうから かえっても わたしが あんしんできる ばしょは なかった
いつも わたしは わるものに された
みんなが いたずらを すると ぜんぶ わたしの せいにされた
そのたびに わたしは シスターに ぶたれた
おしりや せなかは いつも きずだらけだった

わたしは レオを はなさなかった
どこへいくにも レオといっしょに いった
わたしをいじめる やつらは レオを のろわれた にんぎょうだと おもっているので
レオに てだしは しなかった
だから わたしは レオをしっかりにぎって はなさなかった

あるひ どうしても つらくなって 
わたしは だれにもないしょで えんちょうせんせいの へやに いった
えんちょうせんせいは わたしに はなしをしてくれた

「イエスさまが おうまれに なったとき ねこが その うまやに いたのですよ」

そういって えんちょうせんせいは いちまいの えを みせてくれた


ねこバナ。-猫の聖母子


マリアさまに いだかれた あかんぼうの イエスさまは ねこを だいていた
ねずみのような かおだと おもったけれど えんちょうせんせいは これは ねこだと いった
ねこは すこし いやそうに していたけれど イエスさまは ねこが すきそうな おかおを していた

「あなたのレオは あなたにとって このイエスさまのねこと おなじくらい たいせつなのでしょう」

えんちょうせんせいは わらった

「なにも こわがることは ないんですよ」

わたしは こわがってなど いなかった
ただ わからなかったのだ
なぜ わたしが いじめられるのか
なぜ わたしが ここにいるのか

でも えんちょうせんせいは わたしの はなしを きいてくれた
わたしは それが うれしかった

わたしは まいばん おいのりをした
かんしゃの ことばを ささげた
でも わたしの こころは みたされなかった

レオといっしょに ねむりに おちるとき
そのときだけは わたしは しあわせだった
レオのせなかの しろい じゅうじか
それが かみさまの みしるしのような そんなきが していたのだ

  *   *   *   *   *

あるとき がくえんでそだった いちばんおおきい おねえさんが
とつぜん いなくなった
とつぜん いなくなって そのあと どこにいったか わからなくなったのだ
まわりの みんなは うわさをした
つぎにおおきな おねえさんは

「つぎは きっと あたしだ」

といって こわがった

ふたりめの おねえさんが いなくなったころ
えんちょうせんせいの へやから はげしく いいあらそう こえが きこえた
わたしは とびらのかげに かくれて はなしを きいた

「なぜ そんなことを したのです わたしは きょか していない」
「これは あなたの くちだしできる ことでは ありません むかしから われわれは こうして いきのびて きたのですから」
「ともかく これは かみの みこころに はんすることです ほうりつにも いはんする わたしは けいさつに こくはつします」
「どうぞ ごじゆうに」

どかどかど おとをたてて シスターがふたり えんちょうしつを でていった
ずっとむかしから がくえんに いるという こわいかおの シスターと ふとった はやくちな シスターが でていった
ちらりと へやを のぞくと わかくて きのよわいシスターと えんちょうせんせいが こまったかおをして うつむいていた

「しんぷさま わたしは」
「いいんです あなたはまだ ここにきて ひがあさい そして わたしもね」
「ほんとうに けいさつに」
「いうべきでしょう みよりがない こどもを がいこくに うりとばすなんて そんなことが ゆるされる はずがない」
「しかし そうなったら わたしたちは どうなるでしょう」
「だいじょうぶですよ シスター わたしが すうききょうに てがみを かきましょう」

むずかしい はなしを していた
わたしは そうっと へやから はなれた
レオを ぎゅうっと だきしめた

ろうかを まがったところで ふと みると
あの こわいかおの シスターが じっと こっちをみていた
わたしは こわくなって いそいで はしって にげた

  *   *   *   *   *

つぎのひ えんちょうせんせいが びょうきになった
そして あっというまに なくなった
わたしは かなしかった
えんちょうせんせいは えんちょうせんせいだけは わたしを しんじてくれたから
わかいシスターは おいおいと ふるえながら ないていた

レオをだいて えんちょうせんせいの ひつぎに ちかづこうとした

「おやめなさい けがらわしい」

あの こわいかおのシスターが わたしを えんちょうせんせいから ひきはがした
わたしは ころんでしまった
レオを はなしてしまった

「こんなものを もっていては いけません」

シスターは わたしのレオを とりあげた
わたしは かえしてと たのんだ

「だめです これは あなたの しんこうを だめにします」

わたしは はげしくないて たのんだ

「だめといったら だめです」

わたしは シスターに おそいかかった
シスターは ひめいをあげて とびのいた

「このこを にしのこべやに つれていって かぎをかけなさい」

おおきな おとなが わたしをかかえて きょうかいを でた
わたしは はげしく あばれたけれど おとなには かなわなかった
はげしく ぶたれて くらい ちいさなへやに とじこめられた

わたしは とびらを たたいた
てが はれるまで たたいた
でも だれも だしては くれなかった
わたしは ないた おおきなこえで ないた

ちいさなまどから あおいほしぼしが みえていた


つづく





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