第七十七話 最高の食事(38歳 女 料理研究家) | ねこバナ。

第七十七話 最高の食事(38歳 女 料理研究家)

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「先生、どうもありがとうございました」
「いつも、先生のお料理は最高ですわ」
「まあ、ありがとうございます」
「舌平目のムニエルペシャメルソース、早速作ってみますわ」
「先週のフォアグラとポーチドエッグのゼリー寄せも、素晴らしかったし」
「宅の主人にも、毎日作ってますのよ、先生のところで習ったお料理」
「そうですか~、うれしいわ、うふふ」
「猫ちゃんも羨ましいわ。先生の美味しい料理を、いつも食べられるんですもの」
「そうねえ、でもやっぱり、バランスのとれた栄養は、私の作ったものだけじゃ摂れないから」
「あらそうですか? 宅のワンちゃんは、私がいつも手作りしてあげてますのよ、ほほほ」
「まあ…。そうねえ、それぞれの家庭のやり方で、いいと思いますわよ」
「あら先生、ご謙遜なすって。絶対先生の作ったもののほうが良さそうですのに」
「ほほほ」
「ふふふ」
「じゃ先生、また来週」
「はい、お疲れ様でした」

ばたむ。

「ふう」

「にゃ~ん」

「あらショコちゃん。もうみんな帰ったわよ」
「にゃ~んぐるぐる」
「はいはい、そうね、ごはんにしましょ」

  *   *   *   *   *

ちちちち、ぼっ。

「今日はね、鴨のいいのがあるから、これを使いましょう」

とんとんとんとん。

「にゃ~んむ」
「ほらほら、危ないからあっち行っててよ」

とんとんとんとんとんとん。

「あの奥さん達、ほんとに、私の料理、毎日作ってるのかしらねえ」

じゃばばっ。

「私がこんなこと言うのもなんだけど、あんな料理ばっかり作ってて、肩が凝らないかしら」

ぐつぐつぐつぐつ。

「はあ、旦那さんが可哀想。私だったら、胃が痛くなっちゃうかも。ねえショコちゃん」
「...」
「さんまの塩焼きとか、古漬けとか、お芋の煮っころがしとか、絶対食べたくなると思うんだけどな~」
「にゃ~ん」
「ふふ、そうよねえ、たまに食べるから、美味しいのよねえ、ああいうの」

とんとんとんとんとん。
ぐつぐつぐつぐつぐつ。

ずずっ。

「うん、いい味」

かちゃり。

「よいしょっと」

ごとん。
どどどどどっ。

「ぽちっと」

がーーーーーーーーーーーー

「もうちょいかな?」

がーーーーーーーーーーーーーーー

「うん、できた」

ぎゅん。
がしがしがしがし。ぽんぽん。

「さて、少し冷ましている間に、と」

ちちちち、ぼっ。
とんとんとんとんとん。

「ショコちゃん、まだよ、まだ」
「うみゃーんむ」
「こら! だめよ。お行儀悪いわね」
「みゃ...」
「はいはい、もう少しだからね」

じゃぱっ。ぐつぐつぐつぐつ。

「ええと、お味噌、お味噌...」

かちり。

「うん、できた!」

  *   *   *   *   *

「はいショコちゃん」
「にゃ~んぐるぐる」
「今日は、鴨肉と野菜のごった煮パテよ~ん」
「にゃむ、にゃむ」
「ほら、こっちのカリカリも、ちゃんと食べるのよ」
「にゃむ、にゃむ」

「そして、私は...」

さらさら、さらさら。

「鰹節に、お味噌汁...うーん、おいしそー」

じゃばっ。


「シンプル猫まんま、いっただっきまーす」



じゅるじゅるじゅる。

「んー、んまい! やっぱりこれよねえ」

じゅるじゅるじゅる。

「教室の後は、栄養過多になるから、このくらいがちょうどいいわ、やっぱし」

じゅるじゅるじゅる。

「猫まんまだけで本が出来るって、判る気がするわー。うんうん」

じゅるじゅるじゅる。

「卵かけごはんといっしょね。奥が深いもの」

じゅるりっ。

ぱん。

「ごっちそーさまでっしたー」

「にゃうん」
「あらショコちゃん。もう食べたの...早いわね」
「にゃーん」
「だめよー。食べ過ぎは良くないの! 明日は、鹿肉とレバーでパテを作ってあげるから」
「ざーりざり」
「うふふ、こら、くすぐったいってば」
「にゃん」
「何? ああ、あんたもこっちの方がいいの?」
「にゃーん」
「そう...あんたも、たまには鰹節ごはんがいいのね~」
「にゃーんむ」
「はいはい、じゃ、明日は、仲良く鰹節ごはんにしましょうか」
「ぐーるぐるぐる」

「...あら。鰹節もうないわ。買ってこなくちゃ」
「にゃん!」
「わかったわかった。今行ってくるから。あ、糠床に入れる糠も買ってこようっと」
「にゃ~んむ」
「じゃあね、行ってきまーす」

ばたむ。


おしまい




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