WRAPUP1: 日韓、通貨スワップ限度額を700億ドルに拡充 市場の不安定化に備え
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK064077820111019
2011年 10月 19日 13:20 JST
 [東京 19日 ロイター] 訪韓中の野田佳彦首相は19日、韓国の李明博大統領と会談し、両国の通貨スワップの限度額を現行の130億ドルから700億ドルへ拡充することで合意した。欧州問題を受けて世界の金融市場が不安定化、韓国では通貨ウォンが急落するなどの影響が出ており、通貨スワップの拡充で市場の不確実性の高まりに万全を期す。

 日銀と韓国銀行(中央銀行)が結んでいる円とウォンのスワップ限度額を現行の30億ドルから300億ドルへ広げたのに加え、今回は新たに日本の外為特会と韓国銀行の間で、ドルと円やウォンを交換する300億ドルの枠組みを設けた。チェンマイニシアティブで合意しているスワップは限度額100億ドルで据え置いた。この結果、通貨スワップの限度額はこれまでの130億ドルから、5倍強の700億ドルに拡大する。

 新設する外為特会と韓国銀行との300億ドルの枠組みは、期間1年のドル・自国通貨の通貨スワップとなる。日韓中銀の通貨スワップ限度額の300億ドルへの拡大は、2012年10月末までの時限措置となる。

 韓国ウォンは9月中旬以降、世界的な新興国通貨の下落の流れの中で急落、10月4日には1ドル=1208ウォンと15カ月ぶりの安値を付けた。19日現在も1134ウォンと、9月以前の水準からは大幅なウォン安となっている。韓国国内では、ドル資金の調達難から銀行融資への影響も出ている。グローバル経済が不安定な中、外貨融通枠を拡大することで金融市場の安定化を図る。

 日銀と韓国銀行は、2005年に通貨危機などの緊急時に資金を融通し合う通貨スワップ協定を締結した。リーマン・ショック後の韓国で外貨流動性の問題が浮上したことを受け、2008年12月には同協定での引出限度額を30億ドル相当から200億ドル相当に拡大。2010年4月末には、為替市場が安定化したとして増額措置を終了していた。今回の300億ドルへの拡大は、リーマン・ショック時を上回る額となる。

 あー、やっぱりきましたか。極端な外需依存体質が一向に改まらない国ですので、欧州発の不況の波をもろに被ってしまいました。以前から口を酸っぱくして言ってるとおり、日本も外需依存度を高めれば(通貨危機が起こるかは別として)韓国と同様に世界経済の影響を良くも悪くも受けやすくなるってのを、今一度認識すべきじゃないかと思います。

 さて、案の定というべきかなんというか、Twitterでこの通貨スワップ協定をなにか勘違いして、韓国に5兆円ぽーんっと渡すのか!許せーん!って噴き上がってる人が殊の外多くて、頭が痛いったらありません。
 えー、こうした誤解を解くために、国家間のスワップ協定ってのはどのように行われるか、自分自身の整理のためにも書き出してみましょうか。

①協定
 今回の記事のことですね。これ締結してないと話になりません。
②発動要請
 えー、日本から韓国に要請するってのはまずありえないので、韓国から日本に要請が出たとしましょうか。仮に1000万円都合してくれという要請がきたとしましょうか。
 この場合、日本銀行は1000万円を韓国銀行側に渡しますが、それと引き替えに韓国ウォンを1000万円分、えーと、今日のレートですと1円=約14.77ウォンですので1億4770万ウォンを日本側が受け取ります。

③調達した資金の市中への供給
 スワップで調達した日本円は、市中銀行へと貸し出され、その後、市中銀行から決済に必要とされる企業へと融資されていくことになります。

④-1 償還
 貸出期限(米韓スワップの時は84日。おそらくは日韓スワップもその程度の短期間かと思われます)が来たら、当然のことながら再交換を行う必要があります。
 この場合、③を逆行させる形で市中から韓銀に日本円が戻ってきていれば問題ありませんが、回収出来なかった場合は何らかの手段(ウォンを売ってドルを買い、さらに円を買う/手持ちのドル資金で円を買う/再度スワップ要請して(限度額内であれば可能)、ロールオーバーする等々)で円を調達する必要があります。
 このとき重要なのは、為替レートがどのように変化していても、発動した時に受け取った金額(この場合は1000万円)+金利(国家間のスワップの場合はLIBORが適用される場合が多いとか)分の日本円を用意しなければいけないこと。
 えーと、例えばウォンが下落して1円=20ウォンになった場合、ウォン売りによって全部用意するとなると、2億ウォン+金利分が必要になってしまいます。逆に1円=10ウォンまで上昇した場合は、1億ウォンで十分と言うことになりますね。それに対し、日本側は塩漬けにしてる分に金利分のウォン(日本が円の代りに預かっているウォンにも金利はかかります)を乗せて交換すればいいだけですので、為替変動についてはあんまり考慮する必要がありません。

⑤償還日にお互いの通貨を返して貰えば、決済は完了。

④-2 償還出来なかった場合は?
 韓国側の資金繰りが上手くいかず、④-1から⑤へと繋がらなかった場合は、当然の事ながらデフォルトということになり、IMFなり世銀が乗り出して生き血を絞るかのような返済を強いられることになります。どっとはらい

 で、スワップ協定をただの資金援助と勘違いしてる人は論外として、上記の仕組みを知りつつも売国と騒いでる人は何なのか?
 まあ、韓国が借金を踏み倒したと思いこんでるんでしょうが……実際のところ、以前のアジア通貨危機においてアジア開発銀行経由で貸したお金、ほぼ返ってきてるんですよ。多少は残ってますが、元本完済までいかないまでも、利子を支払い続けるなど文句をつけられないような形で債務を保持していることは確実。なんせ、それすらしてないのであれば、再度のデフォルトに陥ってることになりますから。
 それでもなお韓国が踏み倒すと思いこんでるのは……それだけ民主党政権に信用がないんでしょうけど、経済は日韓で完結してると思いこんでるんじゃないですかね。
 今現在、ギリシャはデフォルトを巡りヘアカット率で火花を散らしていますが、未だデフォルトしていない状況においてすら、1年物国債の利回りが136%になったりと、それだけ資金調達が困難になっています。
 もし日本が甘い顔をして、全額ヘアカットで韓国のデフォルトを防いだとしても、世界の金融機関や投資家が再び韓国へと資金を投じるとは思えません。また、そんなことをすれば日本国内においても民主党が政権を維持することは不可能になりますし、国内金融機関や投資家が韓国へと再投資することもなくなるでしょう。
 日本からの借金がチャラになったとしても、将来の展望を描きようもなくなっては韓国にとってもメリットありませんし、自殺行為だと言って過言ではないでしょう。果たして、そこまで彼の国はアホですかねぇ……?
 あ、ついでに言えば、そういう事を民主党が画策したとしても、財務省が首を縦に振るとは思えないです。財務省には色々と問題はありますけど、借金の踏み倒しを許容するような馬鹿はいないでしょうし、政府がそういう真似しようとしてもリークするなりして妨害しにかかるんじゃないですかね。


 日本においては外需依存度は低く、対韓国貿易は総貿易の5%程度を占めているにすぎませんが、それでも毎年3兆円近い貿易黒字を叩き出してる相手ですし、なるべくなら破綻を回避させるか、避けられないにしても日本に対する衝撃は和らげるべき。
 その意味で、今回のスワップ協定にそこまで目くじら立てる必要はないと思うんですけどね。一挙に五倍ですから、結構驚きはしましたが。
 なんといっても、鵜を絞め殺す鵜飼いはいないですし。


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