またまた謎のPC職人Xこと◆bswihrZhO2様に記事をいただきました。
今回はインド洋での給油支援について
とある場所、とある話
(注意*この話に出てくる登場人物は架空の存在です。しかし、内容はそうではありません。現実にさらされている状況の解説です)
猫車嬢(以下、猫車)
「まったく、憂鬱な仕事増やしてくれるわねー・・・」
鬱陶しい仕事に疲れた猫車は、久々に公園に散歩へとやってきた。
かなり広い上にお気に入りのクレープ屋が屋台を出しているので、気分転換に来たのである。
しかし、いつもなら癒してくれる自然の空間も晴天の日差しもまったく効果が無かった。
せめて、クレープでも食べて気分が変わる事を期待して足を運ぶが、その足取りもあまり楽しげではない。
彼女は、屋台から漂う甘い香りに期待して声をかける。
猫車
「おじちゃーん、いつものクレープを一つ」
背中を向けて材料を確認しているとおぼしき人影に声をかけたが、振り返った人物に驚愕する。
職人X
「はい、ちょっと待ってね?・・・て、猫車ちゃんじゃないの?」
猫車
「なんで、職人Xさんがお店にいるの!?」
いつもの店主ではなく職場のPC等を修理に訪れる職人Xがいるのか?首をかしげるが、事情を説明されると納得した。
職人X
「店主さんは友人なんだけど、交通事故にあってね。代理を頼まれたんだよ。料理関係は自炊するから慣れてるし、他に人が都合つかなくてねぇ」
猫車
「あちゃー・・・。それじゃ、いつものチョコクレープは駄目かなぁ・・・」
職人X
「ん?いつものというのはちょっと分からないけど、今日仕入れたマンゴーを使ってスペシャル・パフェクレープがあるよ?」
彼女は、諦め顔で落ち込むが返答を聞いて再び驚く。
猫車
「マジで!?」
職人X
「なんなら、ちょっとこれを味見してから判断してみたらどうかな?」
取り出されたタッパーから、一掬いのマンゴーの角切りを小さい紙コップに入れた物を受け取ると早速彼女は味見をしてみる。
充分に熟してはいてもしっかりとした歯ごたえを残し、噛むほどに甘く芳醇な味と香りが口に広がっていく。
顔がほころぶのが、止められない。
猫車
「ああ、これは良いね。うん、スペシャルでお願いします!」
職人X
「はい。それじゃ、すぐに作るね。でも、えらく落ち込んでたみたいだけど、どうしたの?」
早速、クレープが焼かれ始めるが猫車は眉間に眉を寄せてしまう。
猫車
「今回、民主党がインド洋の給油やめるって言い出したでしょ?そのせいで、かなり鬱陶しい翻訳が増えちゃって・・・」
職人X
「あれか・・・。納得。みんな、色々な問題が一気に起きるのに誰もちゃんと言わないしねぇ」
納得顔の職人Xは、話しをしながらもテキパキと作り続け、すぐにクレープは出来上がった。
職人X
「はい、出来上がったよ。五百円です」
普通の物よりも少しボリュームがあるクレープを、丁寧に包んで彼女に渡した。
猫車
「ありがとう。頂きます!!」
職人X
「色々表に出てこないところも、いつもみたいに話してあげたいけど・・・。まだもうちょっと在庫あるしなぁ」
女性
「おじさーん。私達もちょっと興味あるんだけど、聞かせてもらえません?」
近くで聞いてたのか、3人組の女性の一人が声をかけてくきた。
それぞれタイプは違うが、みな美人である。
職人X
「お店、ほっとくわけにも行かないんだよ・・・」
彼は、困った顔で返答する。
女性
「じゃあ、クレープみんなで買うからお願いします」
そういって、笑顔で頼み込む女性に仕方がないと考えた彼は在庫を確認する。
職人X
「んー・・・。それじゃ、ちょっと高くなるけどスペシャルに一手間加えた物ができるけどどうする?そこで食べている猫車ちゃんと同じ物なんだけど」
3人の視線が一斉に猫車に向けられると、彼女は頷く。
猫車
「このクレープは、本当に美味しいよ。当たりだと思う」
猫車の発言で、彼女達も決めたのだろう。
すぐに注文する。
女性達
「「「スペシャル・クレープください!!」」」
女性四人がクレープを食べ終えたところに、在庫が尽きた事を確認した職人Xは声をかける。
職人X
「在庫もなくなったし、話を聞きたいなら良いよ。今、サービスでお茶入れるからねー」
女性全員
「頂きます!!」
ティーバックではあるが紅茶が振る舞われた後で、メニュー用の黒板を持って職人Xは屋台から出て来た。
職人X
「さて、今回の給油問題について解説しようか。まずは、「Power Projection」て分かるかな?」
猫車
「えっと、軍事用語で「力の投射」て意味だよね?なんでそれが関係あるの?」
女性陣が首をかしげるが、さらに彼は続ける。
職人X
「うん、軍事用語で使われるんだけどね。これがビジネスでも、同じ事が言えるんだ。
軍事だと、好きな場所に戦力を持っていって都合が良いように利用できるようにする事を指しているけど、ビジネスでも商品とか技術を持っていってスムーズに活動できる事も同様に言えるんだ。
例えば君たちの食べたクレープに使っているマンゴーは、ブラジル産で向こうから鮮度を維持して持ってきてビジネスになっている。
つまり、様々な人たちが物を運び、書類やお金を決済してスムーズに活動できるのも、それぞれの企業にとって「Power Projection」というべき物になっている。
グローバル経済の姿の一端だね。ここまでは良い?」
全員が頷くのを見て、さらに彼は続ける。
職人X
「さて、インド洋の給油だけど、テロリストや海賊を監視し海の流通の安全確保と参加国への侵入を防いでいます。
でも、海の上だと自動車みたいにすぐに燃料を給油できない。一旦、港まで戻らないといけないんだ。
そうすると、船の数を増やさないと警戒なんて維持できないし、そんなたくさんの軍艦なんてどこも提供できない。
解決するには、海の上で迅速かつ円滑に燃料を補給して活動時間を増やすしかない。
燃料補給せずに動けるのは核動力の船だけど、アニメじゃないし高価な船を彼方此方の国がもてるわけでもないしね。
補給艦を提供しているのも、日本以外だと足りなくて困っている状態なんだ」
眼鏡をかけ理知的な面が強く出ている女性が、手を挙げて質問した。
女性B
「ちょっと待って欲しい。それは、そこまでコストと労力を出さなければいけない事なんだろうか?」
職人X
「良い質問だね。答えは、Yes。
実例を取り上げると、海賊にとってタンカーなんかを襲撃して身代金を取ったり、積み荷を奪って売りさばくのは儲かるんだ。
例えば、アルミのインゴットや銅のインゴットを積んだタンカーが襲われた場合なんかだと、精製済みだから価値が高いんだ。
原油やガスなんかもそう。
あれだけの資源だと、トータルでとてつもない金額になる。銀行強盗が大銀行を同時に十件襲って成功させるのと同じくらい儲かっちゃうんだ。
テロリストも、そういった船を襲って沈めてしまえばいい。
「金を出せ。さもないと沈めるぞ」と脅してお金を奪うケースも実在する。
アングラビジネスの拡大を防がないと、深刻な問題になるわけ。
もちろん、日本に供給している船も襲われたりしているから、他人事じゃすまない」
女性B
「つまり、放置すれば深刻な供給不安と原価の上昇を招くわけですね?」
職人X
「その通り。
代用が効かないからね。
飛行機だと、一度に運べる量とコストから絶対に不可能だしね
アメリカ軍も世界中に展開する上で、装備の移動という問題を抱えている。
輸送機で運ぶ事が可能な装甲車や戦車、弾薬、これは戦闘機用のミサイルや爆弾も含むけど、一度に航空輸送できる量は海上輸送に及ばないんだ。
そういった制限があるので事前展開準備として備蓄施設や備蓄装備を搭載した事前展開輸送船を彼方此方に配備している。
これだけでも、海上輸送というものの重要性を示しているね。
で、話を戻すけど、ここにサブプライム問題以降の金融トラブルが絡んでくるんだ」
穏やかさを感じさせる令嬢のような女性が、不思議そうに尋ねる。
女性C
「あの、どうして金融が絡むんでしょう?」
職人X
「これは、造船時の資金と保険、各国間の資金決済に絡むんだ。
タンカーの建造には大金がかかる。
だから、造船の資金を発注者や造船会社は銀行などから借りて一時的に賄ったりするんだけど、銀行は借り入れを債券化して金融市場で販売したりしていたの。
つまり、船を動かして稼がないと船会社や造船会社だけでなく銀行や金融市場も損失を発生してしまうんだ。
商品の売買でも金融が絡んでくるしね。
身代金を払ってでも早く取り戻さないと、それ以上の莫大な損失を被りかねない。
だから、安全の確保が金融市場にとっても絶対条件になる。
保険も金融で運用されているしね。
損失を保険で賄うにしても、どのみち損失が市場に影響してしまう構図になっている」
女性C
「つまり、「避けがたいほどに絡み合っている」という事なんですね?驚きました」
猫車
「あー、あたしも船の代金と金融については、ちょっと忘れてたな。そこにも絡むんだった」
最初に声をかけてきた活発な印象の女性は、不思議そうに猫車に尋ねた。
女性A
「あれ?お嬢ちゃん中学生なんじゃないの?なんでそこまで知ってるのかな?」
猫車は、頭痛をこらえるかのように表情で声を絞り出した。
猫車
「あたし、22才なんだけど?」
ポシェットから自動車の免許証を取り出して見せると、女性3人に驚愕が走った。
女性ABC
「「「本当なんだ。同い年だったなんて・・・・・・ゴメンナサイ」」」
職人X
「猫車ちゃんは、歴とした社会人だよ。会社で翻訳業務に携わっているんだけど、実質そこの課長さんよりも実権あったりするし」
女性ABC
「「「マジですか!?てか、なんで知っているの!?」」」
職人X
「だって、そこのPCとかシステム入れたの俺だもん」
女性ABC
「「「クレープ屋さんじゃなかったの!?」」」
職人X
「店主が怪我したから、代理のピンチヒッター」
女性ABC
「「「・・・・・・・何者?」」」
猫車
「いや、ふつーのPC屋でもそこまで突っ込んだ事を知らないと思う・・・」
職人X
「とりあえず、話を戻すよ。
さて、現在の深刻な世界状況。
つまり、金融という車輪の一つに火が着いていて消火しつつ何とか運用されているところに物流が吹き飛ばされ、エネルギーや資源が足りなくなったらどうなるのか?
世界というシステムが動かなくなってしまう。
つまり、それだけみんなが深刻に考えて動いているのが、インド洋の現状なんだ
そこに撤退というとんでもない事を言い出したのが、民主党を率いる鳩山政権の実態なんだよ」
女性A
「えーっと・・・それって、もしかして世界全体に喧嘩を売った事にならない?」
猫車
「もう、なっちゃってるよ。おかげで憂鬱になりそうな物が沢山こっちに回ってくるんだよねー」
猫車は、ウンザリとした表情で突っ込みを入れる。
女性B
「なるほど、それで感謝状が自衛隊にたくさん送られていたのか。確かに、感謝されるだけの重要な位置を占めている訳だ」
職人X
「残念だけど、それは半分だけ正解」
女性ABC
「「「え?まだあるの?」」」
猫車
「どういうこと?」
職人X
「まず、給油している時の映像とかを見ていたら思い出して欲しい。
航行中に随伴しながら給油していたでしょ?」
女性全員
「「「「確かに・・・」」」」
職人X
「ああいったフォーメーションを組んで航行するには、とてつもない技量が要求されるんだ。
今まで友好親善でしかやった事のない国やそれすらした事のない国の船と正確なフォーメーションを組んで航行している。
しかも、波の荒い外洋でだよ?」
女性全員
「「「「うわー・・・。それ、なんてアクロバット・・・」」」」
職人X
「実際には、波の影響とかを避けるためにかなりの速度なんだけどね」
女性全員
「「「「・・・・・・」」」」
職人X
「給油にしても、まず最初に常に進路を同調させ、揺れ続ける中を最初にワイヤーを相手の船にきちんと投げ渡すんだ。
そして、ワイヤーを相手の船との間にきちんと張って、それをガイドにして給油管を相手の方に繰り出して接続して貰い、給油を開始する。
その間は、常にワイヤーが切れたりしないように速度と進路を同調させ続けるわけ。
考えてみて欲しい。
時速30㎞以上で、その行為をするのにどれだけの技量が必要だと思う?
もちろん、操船だけじゃなくて給油管を扱う人たちの技能も優秀でなくては実現できない。
下手をすれば甲板で目玉焼きが出来るほど過酷な環境の海域で、だよ?
彼らは、尊敬に値すると思う」
女性ABC
「「「そんなにすごい事だったんだ・・・」」」
猫車
「そこまで考えてなかったなー・・・。実際の速度から考えたら、すごく優秀じゃない・・・」
職人X
「その通り。凄い人たちなんだよ。
でも、懸念すべき点もあるんだよね」
女性全員
「「「「え?問題なんてあるの?」」」」
職人X
「あるよ。議論されないし、表にも出ないけどね。
普通に考えたら、分かるんだけどなぁ」
女性全員
「「「「????」」」」
職人X
「給油中は、無防備になっているから警戒が必要でしょ?」
女性全員
「「「「あ!?」」」」
職人X
「もちろん、警戒任務に自衛隊の別の船が当たっているけど、対処で想定されている部分に穴があるんだ。
実際にはAKアサルトライフルやRPGロケットとかによる襲撃が想定されているんだけど、今までの襲撃で資金を得た海賊やテロリストが武装を充実させているケースが全く入ってない。
12.7㎜以上の大口径アンチマテリアル・ライフルやレーザー誘導の対戦車ミサイルが使われてもおかしくないんだよ。
でもって、レーダーに引っかかったりした物を確認するためには最初にヘリを飛ばして確認させたり警告させたりもしている。
しかし、日本の護衛艦が搭載しているヘリコプターは銃撃戦を想定してはいても装甲は貧弱なんだ。
アンチマテリアル・ライフルなんかで撃たれたら、絶対に穴が開く。
しかも、アフガニスタンでソ連軍相手に猛威をふるったスティンガー・ミサイルで対空迎撃されたら大変だよ。
回避できたとしても、持っているという想定がなければ対処が遅れる。
確実に防げる保証は、どこにもないんだ
タンカーが、アンチマテリアル・ライフルで銃撃されているしね」
猫車
「でも、船には迎撃や妨害手段があるんじゃなかったかな?」
職人X
「あるよ。
対空迎撃でCIWS(シーウィズ)とチャフ、スモークとフレアがね
でも、直接迎撃だとしても射界に入らないと駄目だし、チャフはレーダー誘導にスモークはTV誘導にフレアは熱源追尾に対応しているけど、レーザー誘導に対応している物は無い。
油断は大敵なんだ。
イエメンでアメリカ海軍のイージス艦・コールが爆薬を満載したモーターボートに特攻されて重大な損傷を負った事がある」
女性C
「そこまで危険なんですね・・・」
職人X
「その通り。
想定が修正されている事を切に願うよ。
もっとも、そんな場所に海上保安庁を派遣する主張を繰り返す馬鹿な人たちもいるけどね?」
女性A
「それ、死んでこいと言っているようなものだよねぇ・・・」
女性C
「私達が知らなかったのも問題だが、政治家がそれではとても安心できる状態では無いな・・・」
職人X
「国民全体で、しっかりと今の世界状況をしっかりと考える必要があると思う。
どこにも逃げ場なんて無い戦いなのだから。
では、以上を持って解説を終わらせていただきます。
ご感想は?」
女性全員
「「「「とても大変な状況を支えている人たちがいて、頑張っている事も分かったよ。
世界的な影響も。
でも、そこまで解説できるって本当に何者なの!?」」」」
女性陣全員からの突っ込みに、職人Xは苦笑しつつ答えた。
職人X
「ちょっと料理のできる、ただのPC職人だよ」
End
追記
クレープの内容
熟したブラジル産アップルマンゴーがメインでバナナが入った上に、生クリームとチョコソースがたっぷりきいてるところへバニラアイ少々がアクセントになったものです。
むう、あたいの年齢が実際より高く書かれている…それは置いておくとして。
うーん、今回はあんまり付け加えるところが無いです。
今回の給油支援、CTF150に参加してる国はもちろん、少なくともインド洋・ペルシャ湾を貿易に使ってる国全てに対して恩恵があるんですよね。さらには、インド洋やペルシャ湾で艦艇の経済的運用が可能になった結果、ソマリア沖に派遣できる艦艇を増やすという副次効果も生んでいます。
ここで撤退すると、インド洋・ペルシャ湾の洋上テロ頻発やテロリストの物流ネットワークが再活性化、さらにはソマリア沖の護衛艦艇希薄化で海賊大跋扈って事になりそうです。この件に関しては黙ってますが、中韓なども撤退完了後に日本を叩く材料にするかもしれませんね。捏造した歴史などと違い、こちらは実害が生じるわけですから反論も不可能です。
ただでさえ苦戦が伝えられているアフガニスタン。ここで日本が対処を誤れば、中東はテロリストの天国となるかもしれません。鳩山政権にはその点よく考えて、何をすべきかをよく考えて欲しいものですね。
…警察官養成とか、寝ぼけたこと言ってますけどorz
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今回はインド洋での給油支援について
とある場所、とある話
(注意*この話に出てくる登場人物は架空の存在です。しかし、内容はそうではありません。現実にさらされている状況の解説です)
猫車嬢(以下、猫車)
「まったく、憂鬱な仕事増やしてくれるわねー・・・」
鬱陶しい仕事に疲れた猫車は、久々に公園に散歩へとやってきた。
かなり広い上にお気に入りのクレープ屋が屋台を出しているので、気分転換に来たのである。
しかし、いつもなら癒してくれる自然の空間も晴天の日差しもまったく効果が無かった。
せめて、クレープでも食べて気分が変わる事を期待して足を運ぶが、その足取りもあまり楽しげではない。
彼女は、屋台から漂う甘い香りに期待して声をかける。
猫車
「おじちゃーん、いつものクレープを一つ」
背中を向けて材料を確認しているとおぼしき人影に声をかけたが、振り返った人物に驚愕する。
職人X
「はい、ちょっと待ってね?・・・て、猫車ちゃんじゃないの?」
猫車
「なんで、職人Xさんがお店にいるの!?」
いつもの店主ではなく職場のPC等を修理に訪れる職人Xがいるのか?首をかしげるが、事情を説明されると納得した。
職人X
「店主さんは友人なんだけど、交通事故にあってね。代理を頼まれたんだよ。料理関係は自炊するから慣れてるし、他に人が都合つかなくてねぇ」
猫車
「あちゃー・・・。それじゃ、いつものチョコクレープは駄目かなぁ・・・」
職人X
「ん?いつものというのはちょっと分からないけど、今日仕入れたマンゴーを使ってスペシャル・パフェクレープがあるよ?」
彼女は、諦め顔で落ち込むが返答を聞いて再び驚く。
猫車
「マジで!?」
職人X
「なんなら、ちょっとこれを味見してから判断してみたらどうかな?」
取り出されたタッパーから、一掬いのマンゴーの角切りを小さい紙コップに入れた物を受け取ると早速彼女は味見をしてみる。
充分に熟してはいてもしっかりとした歯ごたえを残し、噛むほどに甘く芳醇な味と香りが口に広がっていく。
顔がほころぶのが、止められない。
猫車
「ああ、これは良いね。うん、スペシャルでお願いします!」
職人X
「はい。それじゃ、すぐに作るね。でも、えらく落ち込んでたみたいだけど、どうしたの?」
早速、クレープが焼かれ始めるが猫車は眉間に眉を寄せてしまう。
猫車
「今回、民主党がインド洋の給油やめるって言い出したでしょ?そのせいで、かなり鬱陶しい翻訳が増えちゃって・・・」
職人X
「あれか・・・。納得。みんな、色々な問題が一気に起きるのに誰もちゃんと言わないしねぇ」
納得顔の職人Xは、話しをしながらもテキパキと作り続け、すぐにクレープは出来上がった。
職人X
「はい、出来上がったよ。五百円です」
普通の物よりも少しボリュームがあるクレープを、丁寧に包んで彼女に渡した。
猫車
「ありがとう。頂きます!!」
職人X
「色々表に出てこないところも、いつもみたいに話してあげたいけど・・・。まだもうちょっと在庫あるしなぁ」
女性
「おじさーん。私達もちょっと興味あるんだけど、聞かせてもらえません?」
近くで聞いてたのか、3人組の女性の一人が声をかけてくきた。
それぞれタイプは違うが、みな美人である。
職人X
「お店、ほっとくわけにも行かないんだよ・・・」
彼は、困った顔で返答する。
女性
「じゃあ、クレープみんなで買うからお願いします」
そういって、笑顔で頼み込む女性に仕方がないと考えた彼は在庫を確認する。
職人X
「んー・・・。それじゃ、ちょっと高くなるけどスペシャルに一手間加えた物ができるけどどうする?そこで食べている猫車ちゃんと同じ物なんだけど」
3人の視線が一斉に猫車に向けられると、彼女は頷く。
猫車
「このクレープは、本当に美味しいよ。当たりだと思う」
猫車の発言で、彼女達も決めたのだろう。
すぐに注文する。
女性達
「「「スペシャル・クレープください!!」」」
女性四人がクレープを食べ終えたところに、在庫が尽きた事を確認した職人Xは声をかける。
職人X
「在庫もなくなったし、話を聞きたいなら良いよ。今、サービスでお茶入れるからねー」
女性全員
「頂きます!!」
ティーバックではあるが紅茶が振る舞われた後で、メニュー用の黒板を持って職人Xは屋台から出て来た。
職人X
「さて、今回の給油問題について解説しようか。まずは、「Power Projection」て分かるかな?」
猫車
「えっと、軍事用語で「力の投射」て意味だよね?なんでそれが関係あるの?」
女性陣が首をかしげるが、さらに彼は続ける。
職人X
「うん、軍事用語で使われるんだけどね。これがビジネスでも、同じ事が言えるんだ。
軍事だと、好きな場所に戦力を持っていって都合が良いように利用できるようにする事を指しているけど、ビジネスでも商品とか技術を持っていってスムーズに活動できる事も同様に言えるんだ。
例えば君たちの食べたクレープに使っているマンゴーは、ブラジル産で向こうから鮮度を維持して持ってきてビジネスになっている。
つまり、様々な人たちが物を運び、書類やお金を決済してスムーズに活動できるのも、それぞれの企業にとって「Power Projection」というべき物になっている。
グローバル経済の姿の一端だね。ここまでは良い?」
全員が頷くのを見て、さらに彼は続ける。
職人X
「さて、インド洋の給油だけど、テロリストや海賊を監視し海の流通の安全確保と参加国への侵入を防いでいます。
でも、海の上だと自動車みたいにすぐに燃料を給油できない。一旦、港まで戻らないといけないんだ。
そうすると、船の数を増やさないと警戒なんて維持できないし、そんなたくさんの軍艦なんてどこも提供できない。
解決するには、海の上で迅速かつ円滑に燃料を補給して活動時間を増やすしかない。
燃料補給せずに動けるのは核動力の船だけど、アニメじゃないし高価な船を彼方此方の国がもてるわけでもないしね。
補給艦を提供しているのも、日本以外だと足りなくて困っている状態なんだ」
眼鏡をかけ理知的な面が強く出ている女性が、手を挙げて質問した。
女性B
「ちょっと待って欲しい。それは、そこまでコストと労力を出さなければいけない事なんだろうか?」
職人X
「良い質問だね。答えは、Yes。
実例を取り上げると、海賊にとってタンカーなんかを襲撃して身代金を取ったり、積み荷を奪って売りさばくのは儲かるんだ。
例えば、アルミのインゴットや銅のインゴットを積んだタンカーが襲われた場合なんかだと、精製済みだから価値が高いんだ。
原油やガスなんかもそう。
あれだけの資源だと、トータルでとてつもない金額になる。銀行強盗が大銀行を同時に十件襲って成功させるのと同じくらい儲かっちゃうんだ。
テロリストも、そういった船を襲って沈めてしまえばいい。
「金を出せ。さもないと沈めるぞ」と脅してお金を奪うケースも実在する。
アングラビジネスの拡大を防がないと、深刻な問題になるわけ。
もちろん、日本に供給している船も襲われたりしているから、他人事じゃすまない」
女性B
「つまり、放置すれば深刻な供給不安と原価の上昇を招くわけですね?」
職人X
「その通り。
代用が効かないからね。
飛行機だと、一度に運べる量とコストから絶対に不可能だしね
アメリカ軍も世界中に展開する上で、装備の移動という問題を抱えている。
輸送機で運ぶ事が可能な装甲車や戦車、弾薬、これは戦闘機用のミサイルや爆弾も含むけど、一度に航空輸送できる量は海上輸送に及ばないんだ。
そういった制限があるので事前展開準備として備蓄施設や備蓄装備を搭載した事前展開輸送船を彼方此方に配備している。
これだけでも、海上輸送というものの重要性を示しているね。
で、話を戻すけど、ここにサブプライム問題以降の金融トラブルが絡んでくるんだ」
穏やかさを感じさせる令嬢のような女性が、不思議そうに尋ねる。
女性C
「あの、どうして金融が絡むんでしょう?」
職人X
「これは、造船時の資金と保険、各国間の資金決済に絡むんだ。
タンカーの建造には大金がかかる。
だから、造船の資金を発注者や造船会社は銀行などから借りて一時的に賄ったりするんだけど、銀行は借り入れを債券化して金融市場で販売したりしていたの。
つまり、船を動かして稼がないと船会社や造船会社だけでなく銀行や金融市場も損失を発生してしまうんだ。
商品の売買でも金融が絡んでくるしね。
身代金を払ってでも早く取り戻さないと、それ以上の莫大な損失を被りかねない。
だから、安全の確保が金融市場にとっても絶対条件になる。
保険も金融で運用されているしね。
損失を保険で賄うにしても、どのみち損失が市場に影響してしまう構図になっている」
女性C
「つまり、「避けがたいほどに絡み合っている」という事なんですね?驚きました」
猫車
「あー、あたしも船の代金と金融については、ちょっと忘れてたな。そこにも絡むんだった」
最初に声をかけてきた活発な印象の女性は、不思議そうに猫車に尋ねた。
女性A
「あれ?お嬢ちゃん中学生なんじゃないの?なんでそこまで知ってるのかな?」
猫車は、頭痛をこらえるかのように表情で声を絞り出した。
猫車
「あたし、22才なんだけど?」
ポシェットから自動車の免許証を取り出して見せると、女性3人に驚愕が走った。
女性ABC
「「「本当なんだ。同い年だったなんて・・・・・・ゴメンナサイ」」」
職人X
「猫車ちゃんは、歴とした社会人だよ。会社で翻訳業務に携わっているんだけど、実質そこの課長さんよりも実権あったりするし」
女性ABC
「「「マジですか!?てか、なんで知っているの!?」」」
職人X
「だって、そこのPCとかシステム入れたの俺だもん」
女性ABC
「「「クレープ屋さんじゃなかったの!?」」」
職人X
「店主が怪我したから、代理のピンチヒッター」
女性ABC
「「「・・・・・・・何者?」」」
猫車
「いや、ふつーのPC屋でもそこまで突っ込んだ事を知らないと思う・・・」
職人X
「とりあえず、話を戻すよ。
さて、現在の深刻な世界状況。
つまり、金融という車輪の一つに火が着いていて消火しつつ何とか運用されているところに物流が吹き飛ばされ、エネルギーや資源が足りなくなったらどうなるのか?
世界というシステムが動かなくなってしまう。
つまり、それだけみんなが深刻に考えて動いているのが、インド洋の現状なんだ
そこに撤退というとんでもない事を言い出したのが、民主党を率いる鳩山政権の実態なんだよ」
女性A
「えーっと・・・それって、もしかして世界全体に喧嘩を売った事にならない?」
猫車
「もう、なっちゃってるよ。おかげで憂鬱になりそうな物が沢山こっちに回ってくるんだよねー」
猫車は、ウンザリとした表情で突っ込みを入れる。
女性B
「なるほど、それで感謝状が自衛隊にたくさん送られていたのか。確かに、感謝されるだけの重要な位置を占めている訳だ」
職人X
「残念だけど、それは半分だけ正解」
女性ABC
「「「え?まだあるの?」」」
猫車
「どういうこと?」
職人X
「まず、給油している時の映像とかを見ていたら思い出して欲しい。
航行中に随伴しながら給油していたでしょ?」
女性全員
「「「「確かに・・・」」」」
職人X
「ああいったフォーメーションを組んで航行するには、とてつもない技量が要求されるんだ。
今まで友好親善でしかやった事のない国やそれすらした事のない国の船と正確なフォーメーションを組んで航行している。
しかも、波の荒い外洋でだよ?」
女性全員
「「「「うわー・・・。それ、なんてアクロバット・・・」」」」
職人X
「実際には、波の影響とかを避けるためにかなりの速度なんだけどね」
女性全員
「「「「・・・・・・」」」」
職人X
「給油にしても、まず最初に常に進路を同調させ、揺れ続ける中を最初にワイヤーを相手の船にきちんと投げ渡すんだ。
そして、ワイヤーを相手の船との間にきちんと張って、それをガイドにして給油管を相手の方に繰り出して接続して貰い、給油を開始する。
その間は、常にワイヤーが切れたりしないように速度と進路を同調させ続けるわけ。
考えてみて欲しい。
時速30㎞以上で、その行為をするのにどれだけの技量が必要だと思う?
もちろん、操船だけじゃなくて給油管を扱う人たちの技能も優秀でなくては実現できない。
下手をすれば甲板で目玉焼きが出来るほど過酷な環境の海域で、だよ?
彼らは、尊敬に値すると思う」
女性ABC
「「「そんなにすごい事だったんだ・・・」」」
猫車
「そこまで考えてなかったなー・・・。実際の速度から考えたら、すごく優秀じゃない・・・」
職人X
「その通り。凄い人たちなんだよ。
でも、懸念すべき点もあるんだよね」
女性全員
「「「「え?問題なんてあるの?」」」」
職人X
「あるよ。議論されないし、表にも出ないけどね。
普通に考えたら、分かるんだけどなぁ」
女性全員
「「「「????」」」」
職人X
「給油中は、無防備になっているから警戒が必要でしょ?」
女性全員
「「「「あ!?」」」」
職人X
「もちろん、警戒任務に自衛隊の別の船が当たっているけど、対処で想定されている部分に穴があるんだ。
実際にはAKアサルトライフルやRPGロケットとかによる襲撃が想定されているんだけど、今までの襲撃で資金を得た海賊やテロリストが武装を充実させているケースが全く入ってない。
12.7㎜以上の大口径アンチマテリアル・ライフルやレーザー誘導の対戦車ミサイルが使われてもおかしくないんだよ。
でもって、レーダーに引っかかったりした物を確認するためには最初にヘリを飛ばして確認させたり警告させたりもしている。
しかし、日本の護衛艦が搭載しているヘリコプターは銃撃戦を想定してはいても装甲は貧弱なんだ。
アンチマテリアル・ライフルなんかで撃たれたら、絶対に穴が開く。
しかも、アフガニスタンでソ連軍相手に猛威をふるったスティンガー・ミサイルで対空迎撃されたら大変だよ。
回避できたとしても、持っているという想定がなければ対処が遅れる。
確実に防げる保証は、どこにもないんだ
タンカーが、アンチマテリアル・ライフルで銃撃されているしね」
猫車
「でも、船には迎撃や妨害手段があるんじゃなかったかな?」
職人X
「あるよ。
対空迎撃でCIWS(シーウィズ)とチャフ、スモークとフレアがね
でも、直接迎撃だとしても射界に入らないと駄目だし、チャフはレーダー誘導にスモークはTV誘導にフレアは熱源追尾に対応しているけど、レーザー誘導に対応している物は無い。
油断は大敵なんだ。
イエメンでアメリカ海軍のイージス艦・コールが爆薬を満載したモーターボートに特攻されて重大な損傷を負った事がある」
女性C
「そこまで危険なんですね・・・」
職人X
「その通り。
想定が修正されている事を切に願うよ。
もっとも、そんな場所に海上保安庁を派遣する主張を繰り返す馬鹿な人たちもいるけどね?」
女性A
「それ、死んでこいと言っているようなものだよねぇ・・・」
女性C
「私達が知らなかったのも問題だが、政治家がそれではとても安心できる状態では無いな・・・」
職人X
「国民全体で、しっかりと今の世界状況をしっかりと考える必要があると思う。
どこにも逃げ場なんて無い戦いなのだから。
では、以上を持って解説を終わらせていただきます。
ご感想は?」
女性全員
「「「「とても大変な状況を支えている人たちがいて、頑張っている事も分かったよ。
世界的な影響も。
でも、そこまで解説できるって本当に何者なの!?」」」」
女性陣全員からの突っ込みに、職人Xは苦笑しつつ答えた。
職人X
「ちょっと料理のできる、ただのPC職人だよ」
End
追記
クレープの内容
熟したブラジル産アップルマンゴーがメインでバナナが入った上に、生クリームとチョコソースがたっぷりきいてるところへバニラアイ少々がアクセントになったものです。
むう、あたいの年齢が実際より高く書かれている…それは置いておくとして。
うーん、今回はあんまり付け加えるところが無いです。
今回の給油支援、CTF150に参加してる国はもちろん、少なくともインド洋・ペルシャ湾を貿易に使ってる国全てに対して恩恵があるんですよね。さらには、インド洋やペルシャ湾で艦艇の経済的運用が可能になった結果、ソマリア沖に派遣できる艦艇を増やすという副次効果も生んでいます。
ここで撤退すると、インド洋・ペルシャ湾の洋上テロ頻発やテロリストの物流ネットワークが再活性化、さらにはソマリア沖の護衛艦艇希薄化で海賊大跋扈って事になりそうです。この件に関しては黙ってますが、中韓なども撤退完了後に日本を叩く材料にするかもしれませんね。捏造した歴史などと違い、こちらは実害が生じるわけですから反論も不可能です。
ただでさえ苦戦が伝えられているアフガニスタン。ここで日本が対処を誤れば、中東はテロリストの天国となるかもしれません。鳩山政権にはその点よく考えて、何をすべきかをよく考えて欲しいものですね。
…警察官養成とか、寝ぼけたこと言ってますけどorz
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