大法院
第1部
判決


事件 2008度11921  A.海洋汚染防止法違反
B.業務上過失船舶破壊
C.船員法違反
被告人   被告人1他5人
上告    被告人ら
弁護人   法務法人 
       担当弁護士 チョ・ヨンム、ユン・ビョング、イ・ヒョンジュ、
                イ・カンフン、ナム・サンスク
               (被告人主タグボート船長「Seung Min Cho」のため)
       弁護士   カク・ギョンチョク、ソン・ジヨル、ハン・サンホ、キム・スヒョン、
               イ・ジンホン、ホン・ソクポム、イ・ウンネ、リュ・ヨンホ
               (被告人Hebei船長「Jasprit Chawla」、Hebei航海士「Syan Chetan」、Hebei Spirit船舶株式会社のため)
       法務法人 
       担当弁護士 イム・ソニョン、チャン・ヒョジョン、イ・ヘミ
               (被告人主タグボート船長「Seung Min Cho」、副タグボート船長「Yi Hyun Kim」、三星重工業株式会社のため)
原審判決  大田(テジョン)地方法院 2008.12.10. 宣告2008ノ1644判決
判決宣告  2009.4.23.


主文
原審判決中、被告人「Yi Hyun Kim」に対する部分、被告人「Seung Min Cho」に対する業務上過失船舶破壊罪と海洋汚染防止法違反及び訴訟費用負担の部分、被告人「Jasprit Chawla」、「Syan Chetan」に対する業務上過失船舶破壊罪の部分を皆破棄し、この部分事件を大田(テジョン)地方法院合議部に還送する。
被告人「Seung Min Cho」、「Jasprit Chawla」、「Syan Chetan」の残り上告及び、被告人三星重工業株式会社、Hebei Spirit船舶株式会社の上告を皆棄却する。

理由
上告理由を判断する。
1.海洋汚染防止法違反および船員法違反の部分に関する上告理由に対し
A.被告人「Seung Min Cho」、「Yi Hyun Kim」、三星重工業株式会社の上告理由の部分
(1)結果発生を予想でき、またそれを回避できることにもかかわらず、正常の注意義務を怠慢にすることで結果発生を引き起こしたとすれば、過失犯の罪責を免じることができなく、上のような注意義務は必ず個別的な法令でいちいちその根拠や内容が明示されていなければならないことではなく、結果発生に際した具体的な状況でこれと関連した諸般事情らを総合的に評価し、結果発生に対する予想及び、回避の可能性を基準とし、その結果発生を防止しなければならない注意義務が認められることだ。
上の法理に照らして調べれば、この事件曳き船団が遵守しなければならない船内安全運航規則遵守に、航海中、特に非常状況発生時、船団長の被告人「Yi Hyun Kim」の指示を遵守するように規定している事情と、被告人「Yi Hyun Kim」の会社組織内での地位及び航海経験、実際航海にあっての介入の程度及び、その影響力など判示のような色々理由を挙げ、原審が被告人「Yi Hyun Kim」の、この事件曳き船団の安全な運航に関し、判示のような色々な注意義務を負担すると判断したことは正当で、そこに過失犯の成立要件に関する法理を誤解した違法がない。

(2)旧海上交通安全法(2007.1.19.法律第8260号で改正され、2008.1.20.施行される前のこと)、第46条第2項は、操縦制限船が表わさなければならない灯火や、形状物に関し規定した後、第3項で“動力船が進路から離脱能力を非常に制限受ける曳航作業に従事している場合には、第43条第1項にともなう灯火や形状物に付け加え、第2項第1号と第2号にともなう灯火や形状物を表わさなければならない。”と決めている。
これによれば、曳き船が進路から離脱、能力を非常に制限受ける曳航作業に従事している場合には、曳き船者に上のような灯火や形状物を表わさなければならなく、曳航対象である他の船舶または、物体に上のような灯火や形状物を表わすのは、上の条項による適法な灯火や形状物表示方法だと見られない。
原審が同じ趣旨で、この事件主曳き船と副曳き船に操縦制限灯火を表わすが違い、曳航対象である艀船に操縦制限灯火をしたことは、旧海上交通安全法による適法な灯火表示方法ではなく、これまたこの事件衝突のある原因になったと判断したことは正当で、そこに上告理由で主張するところのような操縦制限灯火表示方法、因果関係に関する法理誤解などの違法がない。

(3)刑法第17条は“どんな行為でも罪の要素なる危険発生に連結しない時にはその結果によって罰しない。”と決めているところ、自身の行為でもたらされた危険がそのまままたは、その一部が犯罪結果で現実化された場合ならば、たとえその結果発生に第三者の行為が一部寄与したとしても、その結果に対する罪責を免じることができない(大法院1984.6.26.宣告84度831、84感度129判決など参照)。
原審が適法に採択した証拠らによれば、この事件曳き船団とHebei Spirit号(下では、‘Hebei’という)の衝突でHebei左舷1、3、5番オイルタンク各一ヶ所ずつ穴ができ、その穴からこの事件油が漏れ出たが、その漏出程度は上のようなタンク破損によって、追加要因がない場合にも物理法則により自然的で現実化されることが予想される範囲内のことであるだけで、Hebei船員らの追加的な行為によって通常予想される範囲を超過する程度にまでなったことではない事実が認められる。
それなら、上の法理に照らしてみる時、たとえHebei船員らがオイルタンク破損以後、汚染防止注意義務を怠らなかったならば、この事件衝突による油漏出の程度を減らすことができたといっても、この事件曳き船団がHebeiのオイルタンクに穴をあけ、この事件油漏出の危険を招いた行為と実際発生したこの事件油漏出という結果間に、因果関係が断絶すると見ることはできない。
同じ趣旨の原審判断は正当で、そこに上告理由で主張するところのような因果関係などに関する法理誤解の違法がない。

(4)刑法、第22条第1項は、“自分または他人の法益に対する現在の危難を避けるための行為は相当な理由がある時には罰しない。”とするのに、ここで相当な理由ある行為に該当しようとするなら、最初避難行為は危難に処した法益を保護するための唯一の手段であってこそして、二番目被害者に最も軽微な損害をあたえる方法を選ぶべきで、三番目避難行為によって、保全される利益はこれによって侵害される利益より優れなければならなく、四番目避難行為はそれ自体が社会倫理や法秩序全体の精神に照らし、適合した手段であることを要するなどの要件をそろえなければならない(大法院2006.4.13.宣告2005度9396判決など)。
また、職場上司の指示によってその部下が法律違反行為に加担した場合、たとえ職務上指揮服従関係が認められるといっても、それのために法律違反行為に加担しない期待、可能性が否定されると見ることはできない(大法院1999.7.23.宣告99度1911判決など参照)。
原審が判示のような理由を挙げ、この事件曳き船団の無理な運航が緊急避難に該当するとか商社の航海指示に従わなければならなかったために、適法な運航に対する期待可能性がないという主張を皆排斥したことは上の法理に照らして、皆正当で、そこに上告理由で主張するところのような緊急避難,期待不可能性などに関する法理誤解の違法がない。

(5)旧海洋汚染防止法(2007.4.11.法律第8371号で海洋環境管理法が制定されて2008.1.20.施行されることによって廃止される前のこと)第77条は“法人の代表者または法人や個人の代理人使用人その他の従業員がその法人または個人の業務に関し、第71条ないし第76条の違反行為をした時には行為者を罰する他にその法人または個人に対しも各該当組の罰金刑を過多。”と規定している。
このような両罰条項の趣旨は法人など業務主義処罰を通じ、罰則条項の実効性を確保するところにあることであるから、ここで話す法人の使用人には法人と正式雇用契約が締結され、勤める者だけでなくその法人の業務を直接または間接で遂行し、法人の統制・監督下にある者も含まれるというだろう(大法院2004.3.12.宣告2002度2298判決、大法院2006.2.24.宣告2003度4966判決など参照)。
原審が適法に採択した証拠らによれば、被告人「Seung Min Cho」、「Yi Hyun Kim」がたとえ控訴外株式会社所属職員ではあるが、上の会社は被告人三星重工業株式会社の協力業者としてこの事件曳き船団用役(サービス)管理委託契約により、被告人三星重工業株式会社のために、この事件曳航船団を管理、運営する他には、他の営業を全くしない会社であり、上の被告人らは被告人三星重工業株式会社所属職員らの統制監督を受け、この事件曳き船団を運航する方法で、被告人三星重工業株式会社のこの事件曳き船団使用業務を直接または、間接で遂行してきた事実が認められるため、原審が被告人三星重工業株式会社に上の両罰条項を適用したことは上の法理に照らして正当で、そこに上告理由で主張するところのような両罰条項の適用範囲に関する法理誤解の違法がない。

(6)原審が判示のような色々理由を挙げ、この事件主曳き船の船長の被告人「Seung Min Cho」は気象状態をいつも綿密に把握し、気象悪化で曳航能力が制限または喪失になる場合、避航(被港)、非常投錨、調整制限灯火など適切な非常措置を協議し、施行することと同時に、近接距離にある危険船舶を発見する場合、船内に設置されている超短波無線電話機(VHF)を使用し、管制所および相手船舶と速かに交信を取り、衝突の危険が発生する前にあらかじめ衝突を避ける措置を講じることにもこれを怠って、一歩遅れて衝突を避けるという理由で、無理に変針した過失などが認められ、この事件曳き船団の船団長の被告人「Yi Hyun Kim」は、気象状態をいつも綿密に把握し、気象悪化で曳航能力が制限または、喪失になる場合、曳き船団内の通信設備を利用し、曳き船船長らといつも交信し、予想される危険要素らをあらかじめ把握し、避航(被港)、非常投錨のような非常措置などを協議し、適切な時点で施行するようにすることにもこれを怠って、主曳き船の曳航列が切れた後には、艀船のイカリを十分な杷駐力を発揮できるほどまともに投錨することにもこれを誤らせた過失などが認められると判断した措置に、証拠によらなかったり、合理的な疑いがない程度の証明に達しなかったのに、控訴事実を認めた違法または証拠評価に関する論理法則、経験法則を違反し、自由心証の限界を越えた違法は見えない。
これは原審が、被告人「Seung Min Cho」が大山(テサン)地方海洋水産庁海産交通管制センターとの交信に関し、航海日誌を偽り記載したと認めた部分と同じことだ。その他に被告人らが原審の事実認定に関して前に出す理由らは結局、具体的な論理法則、経験法則違反事実を特定しないまま原審の事実認定を争う趣旨に過ぎず、これは適法な上告理由に該当しない。
また、被告人「Seung Min Cho」の量刑不当主張は懲役2年6月および罰金刑が宣告されたこの事件では適法な上告理由に該当しない。

(7)結局、海洋汚染防止法違反および船員法違反の部分に関する被告人「Seung Min Cho」、「Yi Hyun Kim」、三星重工業株式会社の上告理由は皆受け入れない。

B.被告人「Jasprit Chawla」、「Syan Chetan」、Hebei Spirit船舶株式会社の上告理由の部分
(1)刑事訴訟法、第298条第1項は、“検事は裁判所の許可を得て、控訴状に記載した控訴事実または適用法曹の追加撤回または変更ができる。この場合に裁判所は、控訴事実の同一性を害しない限度で許可しなければならない。”と決めているところ、控訴事実の同一性可否は事実の同一性が持つ法律的機能を念頭に置き、被告人の行為とその社会的な事実関係を基本でするものの、その規範的要素も考慮に入れて判断しなければならない(大法院1996.6.28.宣告95度1270判決など参照)。
この事件訴訟記録によれば、検事はこの事件曳き船団とHebeiの衝突でもたらされた多量の油漏出に対する刑事責任を問うために、被告人「Jasprit Chawla」、「Syan Chetan」に対し業務上過失船舶破壊罪と海洋汚染防止法違反の想像的競合犯で控訴提起し(Hebei Spirit船舶株式会社に対しは海洋汚染防止法違反だけ適用)、初めには、衝突防止のための注意義務違反だけを控訴事実で特定し、原審に達し、上二つの罪の関係を実体的競合犯に変更し、衝突防止のための注意義務違反の具体的な内容を一部変更し、衝突後油漏出を防ぐための汚染防止関連注意義務違反を控訴事実に追加し、すでにこの事件捜査及び一審審理過程でも汚染防止関連注意義務違反可否が論議になり、相当部分審理が進行されてきた事実が認められるところ、上のようにすでに控訴提起された数個の罪に対する囚人評価を変更することでも、単純一罪の過失犯の注意義務違反内容を一部補完するのは既存の控訴事実の同一性を害する場合に該当しない。
同じ趣旨の原審は正当で、そこに上告理由で主張するところのような控訴状変更許容範囲に関する法理誤解の違法がない。

(2)海上交通安全法などによれば、船舶は周囲の状況及び、他の船舶と衝突する危険性を十分に把握できるように視覚、聴覚および当時の状況に合うように、利用することができるすべての手段を利用し、適切な警戒をしなければならなく、原則的に停泊船が航行船との衝突危険を回避するため、先に積極的に避航(被港)措置をしなければならない注意義務を負担するのではないが、すでに衝突危険が発生した状況で航行船が自ら避航(被港)することができない状態に置かれているならば、停泊船としても衝突危険を回避するのに要求される適切な避航(被港)措置をしなければならない注意義務が認められることだ(大法院1984.1.17.宣告83度2746判決など参照)。
また、過失犯に関する、所謂、信頼の原則は、相手方がすでに非正常的な形態を見せている場合には適用される余地がないことで、これは行為者が警戒義務を怠ったせいで相手方の非正常的な形態をあらかじめ認識することが出来ない場合にも同じことだ。
進んで、結果発生に際した具体的な状況で要求される正常の注意義務をつくしたというためには、単純に法規や内部指針などに羅列されている事項を形式的に履行したとのことだけでは不足し、具体的な状況で結果発生を回避するために一般的に要求される合理的で適切な措置をしたことと評価するべきだ。
原審が判示のような色々理由を挙げ、気象がずっと悪化している状況で、船舶の通航が頻繁な遮蔽されなかった海上に、原油約302,640kl(約263,994t)を積んだ単一船体船舶のHebeiを停泊させた以上、一等航海士であり事故当時当直士官だった被告人「Syan Chetan」としては、肉眼およびアルファレーダーなど航海装備を利用し、近接して進行する船舶があるかをよく見回し、Hebeiとの衝突危険性などを把握し、交信を通じ、相手船舶でとって十分な距離をおいて安全に通過するようにしたり、相手船舶が航海能力を失ったり深刻に制限されていることで疑われる場合には、迅速にHebeiの機関を稼動し、イカリを上げ、停泊場所から移動するなど衝突を避けられるように直ちに船長を呼び出しすることにもこれを怠った過失があり、船長の被告人「Jasprit Chawla」としては停泊中にも主機関を準備状態に置くように措置し、当直士官の適切な任務遂行を促し、呼び出しを受け船橋に上がってきた後には、正確に状況を把握し、相手船舶との交信等を通して、衝突を防ぐために協力することはもちろん、相手船舶の航海能力障害によって衝突危険が発生した時には迅速に強い後進機関を使うなど衝突を避けるための積極的措置を取ることにもこれを怠った過失があり、上被告人らの上のような過失がこの事件曳き船団船員らの過失と競合し、曳き船団とHebeiが衝突するに至ったし、また、上の被告人らは衝突以後、油漏出を最小化するために損傷したタンクの油を損傷しなかったタンクに最大限移送し、油流出タンクの内部圧力を降下して平衡水槽等で油の追加流出防止のための最適の状態を作ることにもこれを怠った過失などが認められると判断したことは、上の法理に照らして正当で、そこに証拠によらなかったり合理的な疑いがない程度の証明に達しなかったのに、控訴事実を認めた違法または証拠評価に関する論理法則、経験法則を違反し、自由心証の限界を越えた違法は見えない。その他に被告人らが原審の事実認定に関し、前に出す理由らは、結局具体的な論理法則、経験法則違反事実を特定しないまま原審の事実認定を争う趣旨に過ぎないのでこれは適法な上告理由に該当しない。

(3)原審判決理由によれば、原審が判示のような被告人「Jasprit Chawla」、「Syan Chetan」の汚染防止措置の不適切を認め、ただし、彼によって漏れ出た油の量が正確にいくらなのか算定することは難しいと説示しているだけで、汚染防止措置ないがしろ自体が認められないと判示したところはないことを分かる。原審が、汚染防止措置ないがしろ自体が認められないと判示したことを前提にし、原審判決に理由、矛盾があると言う主張は原審判決主旨を過ち理解したことから始まったことのため、受け入れることができない。残り原審判決の理由、矛盾を指摘する主張なども皆原審判決を過ち理解したこともしくは、原審の事実認定及び判断とは違う前提で原審を責める主旨に過ぎず皆受け入れることができない。

(4)この事件訴訟記録によれば、原審の証拠調査過程で、一部証拠能力ない証拠が現出されたことは、大部分この事件曳き船団とHebei側が防御権行使の方法で、この事件衝突および海洋汚染の主な責任が自身でない相手方にあると主張し、自身に有利で相手方に不利な資料を積極的に浮上させる過程から始まったことが分かるため、そういう事情だけでまさに原審の審理手続きに判決に影響を及ぼした違法があると断定することはできない。
進んで、原審の事実認定中一部は検事が作成した控訴外因に対する陳述調書などと同じように、証拠能力が認められない証拠に基づいて成り立ったと見られたりもするか、これを除いて原審が適法に採択したあげく、証拠らだけによっても被告人「Jasprit Chawla」、「Syan Chetan」の衝突及び、汚染防止注意義務違反を認めた原審結論を後押しするのに充分なため、これは原審判決に影響を及ぼした理由に該当しない。
残り原審審理手続きの違法を争う主張は、皆その採否や実施可否が原審議裁量に属する事項に関し、その要請を指摘する趣旨に過ぎないので受け入れない。

(5)量刑の基礎事実に関し、事実を誤認したか量刑の条件になる情状に関し、審理を正しくしなかったという主張などは結局量刑不当を主張することのため、この事件で適法な上告理由になれない。

(6)結局、海洋汚染防止法違反の部分に関する被告人「Jasprit Chawla」、「Syan Chetan」、Hebei Spirit船舶株式会社の上告理由やはり皆受け入れない。

2.業務上過失船舶破壊罪の部分に関する上告理由に対し
刑法、第15章交通妨害の罪に属する、刑法、第187条は、“人の現存する汽車、電車、自動車、船舶または航空機を転覆、埋没、墜落または破壊した者は、無期または3年以上の懲役に処する。”とし、第190条は未遂犯を、第191条は予備または陰謀した者を処罰するように決めている。刑法が第187条を交通妨害の罪の中の一つとして、その法定刑を高く決める一方未遂、予備陰謀までも処罰対象としている事情に付け加えて‘破壊’他に、他の構成要件行為の転覆、埋没、墜落行為が一般的に相当な程度の損壊を伴うことが当然予想される事情などを考慮してみる時、刑法、第187条で定めた‘破壊’というのは、他の構成要件行為の転覆、埋没、墜落などと同じ水準と認定できる程、交通機関としての機能用法の全部や一部を不可能にするほどの破損を意味し、その程度に達しない単純な損壊は含まれないと解釈される(大法院1970.10.23.宣告70度1611判決、大法院1983.9.27.宣告82度671判決など参照)。
原審が適法に採択した証拠らによれば、Hebeiは総長さ338m、甲板高さ28.9m、総トン数146,848トン、オイルタンク13ヶ、平衡数タンク4ヶの大型タンカーで、この事件衝突による損傷は左舷1、3、5番オイルタンクに各一ヶ所ずつ穴(1番タンク0.3m×0.03m、3番タンク1.2m×0.1m、5番タンク1.6m×2m)ができ、船首マスト、衛星通信アンテナ、航海などなどが破損した程度に過ぎない事実が認められる。
先立ってみた法理に上認定事実を照らしてみれば、この事件衝突でHebeiに発生した損傷は刑法、第187条で定めた船舶の‘破壊’にこれを程度と見にくく、これはオイルタンクにできた穴で油が漏れ出て、これを修理する時まで油を運送するタンカーとしての機能を正常に遂行できなかったといって別に見るものでもない。
これとは違い、この事件衝突でHebeiに発生した損傷が刑法、第187条で定めた船舶の‘破壊’に該当すると見た原審は、上の条項の解釈適用に関する法理を誤解した違法がある。
これを指摘する被告人「Seung Min Cho」、「Jasprit Chawla」、「Syan Chetan」の上告理由は正しく、上のような原審判決の違法理由は共に上告した共同被告人の被告人「Yi Hyun Kim」に対しても共通するため、被告人「Yi Hyun Kim」に対するこの部門原審判決やはり破棄を免じることはできない。
したがって、被告人「Seung Min Cho」、「Yi Hyun Kim」、「Jasprit Chawla」、「Jasprit Chawla」に対する業務上過失船舶破壊罪や、上の罪が成立することを前提にした残り罪らとの囚人及び、処断刑罰算定方法などに関する原審の他の判断の部分に対し争う趣旨の残り上告理由に対しては進んで見回す必要なしで、上の被告人らに対し業務上過失船舶破壊罪を認めた原審判断の部分はそのまま維持されることはできない。

3.破棄の範囲
原審は、被告人「Seung Min Cho」の業務上過失船舶破壊罪と海洋汚染防止法違反および船員法違反(一部)を有罪と認定した後、これらを実体的競合犯で業務上過失船舶破壊罪と海洋汚染防止法違反に対しては、一つの懲役刑を宣告して、船員法違反に対しはこれと別個で罰金刑を併科した。
この場合一つの懲役刑が宣告された業務上過失船舶破壊罪と海洋汚染防止法違反は訴訟上一体で取り扱いされなければならないため、業務上過失船舶破壊罪に関する原審判断に違法がある以上、海洋汚染防止法違反の部分まで共に破棄を免じることはできない。
ただし、別個の罰金刑が併科された船員法違反の部分は訴訟上別個で分離取り扱いされなければならないため、この部分は破棄範囲に属しない(原審は被告人「Seung Min Cho」に対する一審判決中本案に対する部分を破棄しながらも、訴訟費用負担に対する部分は破棄をしなかった。ところで訴訟費用負担の部分は本案の部分と一度に審判されなければならなく、分離確定することができないことであるから、一審本案の部分を破棄する場合には当然訴訟費用負担の部分まで共に破棄していなければならないだろう。 したがって被告人「Seung Min Cho」に対する訴訟費用負担の部分まで共に破棄することにする)。
原審は被告人「Yi Hyun Kim」の業務上過失船舶破壊罪と海洋汚染防止法違反に対しても一つの刑を宣告したので、被告人「Yi Hyun Kim」に対する原審判決は皆破棄を免じることはできない。
一方、原審はこの事件業務上過失船舶破壊罪と海洋汚染防止法違反が実体的競合犯だと判断し、被告人「Jasprit Chawla」、「Syan Chetan」に対し業務上過失船舶破壊罪に対しは禁固刑を、海洋汚染防止法違反に対しは罰金刑を各選択した後これを併科した。この場合もつかむ訴訟上別個で分離取り扱いされなければならないため、破棄範囲は業務上過失船舶破壊罪に限定されて、海洋汚染防止法違反に対しは及ぼさない。

4.結論
したがって、原審判決中、被告人「Yi Hyun Kim」に対する部分、被告人「Seung Min Cho」に対する業務上過失船舶破壊罪と海洋汚染防止法違反及び、訴訟費用負担の部分、被告人「Jasprit Chawla」、「Syan Chetan」に対する業務上過失船舶破壊罪の部分を皆破棄し、この部分事件をまた心理判断するようにするため、原審裁判所に還送することにし、被告人「Seung Min Cho」、「Jasprit Chawla」、「Syan Chetan」の残り上告及び、被告人三星重工業株式会社、Hebei Spirit船舶株式会社の上告を皆棄却することにし、関与、最高裁判事の一致した意見で主文と同じように判決する。

裁判長  最高裁判事 イ・ホンフン
最高裁判事 キム・ヨンナン
最高裁判事 キム・ヌンファン
主審   最高裁判事 チャ・ハンソン