藩金蓮……AVと日本史と京都好きなバスガイド兼ライター。『DMM DVD』で連載経験あり。詳しくはこちら をごらん下さい。


島奈世子……平成生まれのホラー小説家志望。見た目とは裏腹に“闇の世界”に憧れを持つ。特撮、B級ホラーといったマニアックな物を好む。詳しくはこちら をご参照下さい。




高田:今回から始まりました『さくげき座談会』ですが、本日は“世代差”について語っていただきたいと思います。多少の脱線は歓迎しますので、ざっくばらんに話して下さい。さっそくですが、藩さんは今おいくつですか?


藩:1971年生まれなので、現在38歳。藤原紀香さんと同い年です(笑)。塾内では今のところ最年長になりますね。


高田:島さんは?


島:私は今年で19歳になりました。



さくげき座談会

高田:島さんは塾内で最年少なんですよね。何年生まれですか?


島:平成2年です。


藩:へ、平成……。


高田:いきなり絶句されましたね(笑)。ちなみに僕が1979年生まれなので、大体お二人の間ぐらいの年齢になります。島さんと同い年の木下くん という塾生がいるんですけど、やっぱりこうして作劇塾に平成生まれの人が何人か入ってくると、時の流れを感じますね。藩さんは19歳の頃、何をされていましたか?


藩:私は現在バスガイドをしているのですが、19歳の頃バスガイドのアルバイトをし始めていたんですよ。ちょうどそれが面白かった頃ですね。


高田:その頃、今のような人生を歩んでおられると、想像されていましたか?


藩:いえ全くできませんでした。その頃は、普通に大学を卒業して結婚しようと考えていましたから。


高田:十代で、作劇塾に入れるというのは羨ましいなと思いますね。この塾って、いろんな世代の人がいるじゃないですか? 専門学校だとまず同世代以外の人たちと話せる機会というのが、あまりないですからね。


藩:小説の合評にしても、やっぱりそれぞれの人生経験によって、出てくる意見というのが違ってくると思うんです。


高田:僕が印象に残っているのは、「四十前になってくると、今のうちに子どもを作っておかないと、という焦りが出てくる」という藩さんの言葉ですね。確か青谷さん に対して、藩さんがおっしゃっていたんだと思うんですけど。


藩:覚えています。私が合評の授業で書いてきた小説の主人公が不倫をしていて、不倫相手の子どもを、騙すような形で産んでしまうのですが、それに対しての意見でしたね。この行動は「男への愛情ゆえ」なのか「復讐のためか」というように意見が分かれ、それについて私がそう言ったのだと思います。


高田:やっぱり二十歳前後の人ばかりだと、こういった意見は出てこないはずなんですよ。「いろんな経験をした様々な世代の人がいる」というのは、作劇塾の特色ですよね。

合評で、他の塾生から指摘されるのが辛いという人がたまにいらっしゃいますよね? 藩さんはその点についてはどうでしたか?


藩:私はやはりライター経験があるので、赤が入るのは当たり前だという感覚です。一度、ある雑誌で『自分にとってオウム真理教や阪神大震災は何だったのか?』という記事を書いたんですけど、その時の赤入れが秀逸でした。編集の人から返された原稿は赤だらけ。本当に真っ赤でしたね(笑)。それだけ読み込んでくれているという事ですから、編集の方の熱意に感動しました。その赤入れも凄く的確でしたしね。あの経験は大きかったです。


さくげき座談会

島:小説の合評でも、ちゃんと読み込んでないと意見ってできないですもんね。


高田:島さんは合評に関してはどう思われますか?


島:たくさんの人の意見が聞けるというのは、小説を書く上で参考になります。やっぱりひとりで書いていると自己完結というか、どうしても閉じていってしまいますからね。この前、入塾して間もない頃に書いた小説を読み返してみたんですけど、「なんだこれは?」って思いました。読んでいてかなり恥ずかしかったです。


藩:過去に書いた物を恥ずかしく思えるというのは、それだけ成長しているという事ですよ。赤を入れてもらって、それを直すという作業はプロデビューしてから、編集さんとのやりとりで絶対に役に立つと思います。


高田:お二人とも作劇塾に入ってから、プロのクリエイターとお会いされていると思うんですが、それについてはいかがでしょう?


島:8月に行われた『新耳袋殴り込み』のイベントでは、憧れであったライターのギンティ小林さんとお話させていただきました。打ち上げの席に入れていただいたんですが、何とギンティさんの正面に座らせていただいたんですよ! もう感動で泣きそうでした。


高田:ギンティさんの事はいつごろからご存知だったんですか?


島:お名前は高校生の頃から『映画秘宝』などを読んで知っていました。本格的にファンになったのは、やっぱり『新耳袋殴り込み』を読んでからですね。


藩:『映画秘宝』を読む女子高生ってなんかマニアックでいいわね(笑)。


高田:打ち上げの席には藩さんもいらっしゃいましたけど、藩さんて塾に来られたゲストの方の中へいつもも自然に入っていかれるじゃないですか?


島:それは私もお聞きしたいですね。どうしたらプロの方と緊張せずに話せるんですか?


藩:私自身がライターの仕事をしているというのが大きいと思います。もしそういう事をやっていなかったら、緊張してあのようには話せていないかもしれないですね。あとはやっぱりバスガイドをやる前にテレクラのサクラとか様々な職種に就いていましたし、私生活でもたくさんの修羅場を経験しているので、度胸がついたのかもしれません。


島:そんなにたくさんの修羅場を経験されているんですか?


藩:いっぱいしてるわよ。多分、島さんもこれからたくさん経験していくと思うけどね(笑)。


島:そうなんですか……。


高田:島さんの顔が若干引きつり気味ではありますが、続けます(笑)。島さんはまだお若いですが、今後の人生設計というのはありますか?


島:やっぱりクリエイター業で食べていきたいですね。結婚はそれが叶ってからでいいかな(笑)。


藩:私が島さんぐらいの頃はちょうどバブルの時期だったので、「結婚すればなんとかなる」という甘い夢が見られたんですよ。


高田:どれぐらいの年齢から、周囲の女性が結婚していくものなんですか?


藩:20代後半に1回目のラッシュがあるんですよ。35ぐらいに2回目のラッシュがありました。年を重ねてから結婚した人の方が、現実を知っている感じがしますね。旦那さんに食べさせてもらうというより、自分も手に職をつけて稼ぐという感じで。


島:やっぱり自活できるようなスキルって大事ですか?


さくげき座談会

藩:旦那さんに養われていると、完全に主導権を向こうに握られちゃうのよ。まだ昔は就職難でもなかったですし、“専業主婦幻想”みたいなものがあったかもしれないですが、そういう意味では、今は完全に価値観が変わってしまってますね。


高田:藩さんはバスガイドというお仕事をされているので、島さんぐらいの世代の人たちと顔を合わす機会も多いと思うんですが、島さんは同世代の人と比べてずばりどうですか?


藩:しっかりしていますね。あと、絶対この世代では知らないだろうという事に詳しいのは強みだと思います。19歳で『海底人8823』を知っている人が、果たして何人いるか(笑)。あとは自分が何を書きたいという方向性がすでに固まっているのもいいですね。この年で“自分が何をやりたいか”がすでにわかっているだけでも、有利ですよ。


高田:方向性を決めるのに、かなり悩む人もいますからね。


藩:司馬遼太郎さんが『運命を決めるのは能力よりも性格である』と言ってましたが、本当にその通りだと思いますね。


高田:島さんは、藩さんから本などの色々な物を貸してもらっているようですが。


島:はい。今日も『雨月物語』や杉浦日向子さんの『百物語』、ラフカディオ・ハーンの『怪談』を貸していただきました。


高田:島さんが現在、授業の課題で書いているホラー小説に役立ちそうですね。


藩:島さんの小説はね。見た目と違っていい意味で陰湿なところがいいですね(笑)。


島:……(苦笑い)。


藩:あれは誰にでも書ける小説ではないんですよ。“ある種の暗さ”がないと書けない小説だと思いますね。


島:確かに自分の中のドロドロとした部分を、書くという行為で吐き出してる部分はあるかもしれないです。


藩:それはよくわかる! 排泄行為に近い感覚なのかもしれませんね。島さんは、ずっとああいう嫌な事ばっかり考えてるの?


島:そうですね。ネガティブという訳じゃないんですけど、やっぱりああいった暗い妄想をするのが好きなんでしょうね。こんな事言っちゃっていいんですかね?


高田:大丈夫です。どんどん陰湿さをアピールしていきましょう(笑)。


島:元々映画や漫画や小説にしてもホラー系が好きですし、どんな物語でもあまりハッピーエンドは期待しないんですよ。こんな私って変ですか?


藩:でも変っていうのは、クリエイターになる上で重要な要素なのよ。逆にいうと常に前向きで悩みとかない人は小説なんて書こうと思わない気がしますね。島さんてマニアックな物が好きだから、なかなかそういう部分では、共感してもらえないんじゃないかな。同世代の人と話が合う方?


島:変な人って思われたくないというのがあるので、一生懸命話を合わせようとするんですけど、友達の知っている事を私が知らなくて困るというのが多いんですよ。


藩:それはわかるなあ。私も大学生の頃、周りの女の子がJリーグを応援してる時に、ひとりで西武ライオンズの応援をしてました。ちなみに清原選手や石毛選手、デストラーデがいた時代ですけどね(笑)。

(次回、後編へ続きます)