第五回 『藩金蓮さん』(作家コース) | 『作劇的人々』

第五回 『藩金蓮さん』(作家コース)

高田:本日は藩金蓮さんに来ていただきました。藩さんはお仕事をしながら、作劇塾に通われていますよね。


藩:はい。バスガイドと社長秘書をやらせてもらっています。


高田:入塾されたきっかけを教えて下さい。


藩:インターネットで「クリエイターの養成をしている所はないかな?」と検索してたんです。そこで初めて作劇塾 の存在を知りました。どうしても仕事柄、忙しくなる季節があって、お休みをしないといけない月が出てくるんですが、ここは月単位で受講できるので、システム的にも、自分に合っているなと思いました。あと授業料が安かったのも魅力でしたね。


高田:仕事と創作の両立って大変じゃないですか?


藩:もっと時間が欲しいなって思う時も、たまにあるんですけど、好きでやっている事ですので、それほど苦にはなりません。


高田:授業終わりに、藩さんが他の塾生へ、色んな本やDVDを貸しているという光景をよく見かけるんですが。


藩:ある程度の期間、小説の合評をやっていると、この人にはこれを貸してあげると役に立つなというのが、わかってくるんですよ。それで参考になればいいなと思って、渡しています。


高田:そう言えば、藩さんのイラストを描かれたBOM さん (漫画コース)にも、よく何か貸していらっしゃいますよね。


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藩: はい、ここで言える物、言えない物など(笑)、いろいろとお渡ししています。


高田:作劇塾に入られる前から、すでにライターとしてデビューされていた藩さんなんですが、何の雑誌で書かれていたんでしたっけ。


藩:『DMM DVD』というAV雑誌で連載を持たせてもらっています。もうすぐ連載開始から二年になるんですよ。


高田:二年近く書いていると書くネタに困りませんか?


藩:最近、塾生の人たちがネタを提供してくれてるんで、助かってます。


高田:女性でAVが好きという人って珍しいですよね。


藩:一般の人と話す時は、そういう話題って結構ためらっちゃうんですが、この塾は、プロのクリエイターを目指しているだけあって、みなさん考え方が柔軟なんですよ。だから自分を出しやすかったですね。


高田:『DMM DVD』で、連載を持つに至った経緯を教えて下さい。


藩:ブログがきっかけでした。私の大好きなAVの作品を、東良美季さんというライターの方が書かれていたんです。その人にメールを送らせてもらったりしているうちに、段々と交流ができて、マイミク(mixyでのお友達)になってもらったんです。その後、ありがたい事に、その方がご自分のブログ で、私のブログ を紹介して下さったんですよ。その後、それを見た編集者の方から「雑誌で書いてみませんか?」というメールが送られてきた、という流れでした。


高田:連載を持たれるまでに、何か文章をお書きになっていたんですか?


藩:高校生の時に戯曲を書いてたぐらいです。それから十年間は全く何も書きませんでした。


高田:なぜ十年もの空白が?


藩:当時、元放送作家の人とお付き合いしていたんですが、その人から「君には文章を書く力がないよ」と、言われ続けていたんです。まあ言ってみれば洗脳ですよね。その頃は自分でも書けないと、完全に思い込んでいました。だから二十代の頃は、一切書いてなかったです。いろいろ書くようになったのは、ここ三、四年です。


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高田:藩さんの周囲には、面白い方がたくさんいらっしゃいますよね。


藩:やはりエロ関係の方が主ですが、みなさんユニークです。気が付けば、一風変わった仲間ができていたという感じがしますね。私は、やっぱりアダルトの世界って、本質的にアウトローだと思うんですよ。自分もどちらかと言えば、優等生じゃなかったんで、肌が合います。こういう世界の人って、あまり先入観で人の事を見ないんですよ。


高田:やはり小説を書きたいという事で、作劇塾に入ってこられたわけですか?


藩:そうですね。コラムや批評など、基本的に書くという事が好きなんですけど、一番の目的は小説でした。以前から書こう、書こうと思いながら、書けなかったんで、こういう所に飛び込めば、書くようになるだろうというのはありました。実際、その通りでしたね。


高田:こんな小説を書いてみたいというのはありますか?


藩:私の場合、何を書いても京都が舞台になるんです。それぐらい京都が好きですね。京都というのは人間の『愛』と『死』、そして『情念』が存在する土地なんで、そういう事を含めた作品を書いてみたいですね。


高田:小説を書く上で、原動力になってるものがあれば教えて下さい。


藩:実は私、すごく男運が悪いんですよ。過去に結構な額を、男の人へ貢いだ経験もあります。だから小説でお金を稼いで元を取ってやろうというのがありますね(笑)。転んでも、ただじゃ起きないぞって。


高田:僕はよく藩さんのブログ を読ませていただいているんですが、二十代の頃に色々と辛い目に合われてますよね? それが作品を書く上で役立ってるなと思う事は、ありますか?


藩:クリエイターというのは、死にたいくらい辛い経験とか反社会的な事柄とか、一般的に言うとマイナスとされる事を作品に昇華する事で、“プラスに転化できる”という、非常に特殊な職業なんですよね。それが面白いし、何よりやりがいがあります。


高田:これを一生、描いていきたいというテーマは?


藩:突き詰めていくと、私のテーマって『愛は怖い。だけど人間は愛なしでは生きられない』。この言葉に集約されるんじゃないかと思うんです。


高田:という事は、ご自分で愛に満たされている状態ではないという実感がある?


藩:ありますね。愛に限らず、私って常に飢餓状態なんです。逆に言うと満たされたら、書こうと思わなかったかもしれない。


高田:小説の課題を読ませていただいていると、藩さんの小説って、女性ならではの怖さというのが出ていて、ぞっとするんですよね。どろどろとした感情というか、ああいうのは、男には書けないと思うんですが。


藩:ハーヴェイ・カイテルという俳優がこんな事を言ってるんです。「俺は人を殺したいと思った事のない人間を信用しない」と。それほどの深い感情を持っているのが人間である、私はこの言葉をそう解釈しています。非常に印象的なフレーズですね。


高田:最後に「これだけは言っておきたい」というのがありましたら、どうぞ。


藩:歴史、コラム、批評など、言っていただければ何でも書かせていただきます。エロネタ、または非エロの真面目な話のどちらも書かせていただきますんで、よろしくお願い致します。


※次回の更新は、4月9日(木)の予定。ゲストは小波くろさん (漫画コース)です。