被写体~それは真偽 【伍】 | 晴侍と雨女…時々猫

晴侍と雨女…時々猫

飛鳥の雑談、裏話ブログです♪よろしくお願いします(^^♪

【被写体~それは真偽】目次へ


「今度の部屋は……窓が広い」

窓の大きさ。
それは俺にとって、最も重要だ。

だが、大抵、窓から見える風景に人は居ない。
そう、そういう場所を割り当てられている。
他の囚人たちとは違う。俺の罪はそう言う事。

俺の被写体となった彼女。
彼女に出会ったことは今まで一度としてなかった。
自分で撮影した、あの写真。
あの写真を撮るその【時】までは。

聞いた話。
彼女はこの国の最高指導者の娘らしい。
そして、ずっとベッドに眠り続けているらしい。
生まれたときからずっとベッドで寝たままでいるらしい。

そう……
俺が写真を撮るずっと前から……

そう……
だから俺は探そうとは思わない……

連中は……
理由が欲しかったに過ぎない。
ただ理由が欲しかったに過ぎない。

変わる事無く眠り続ける自分の娘の。
己の娘の変わらぬ眠りの理由を。

そして、噂を流す……
フィルムカメラで撮られればその人の時間は止まると……

決して人が現れる事の無い、その部屋は……
人々をカメラから守る為ではない。
己の嘘を塗り固め、より噂を真実に近づけるための偽りの拘束。

「……馬鹿馬鹿しい」

限りなく馬鹿馬鹿しく、限りなく呆れるその状況を受け入れている理由。
それはただ1つ。
彼女に出会うため。

何も無い部屋のたった一つの窓。

拘束され、噂の罪人になる為の交換条件。
カメラを使う為の材料を切らさない事、必ず窓のある部屋を割り当てる事。
その2つ。
連中にとっては嬉しい交換条件だっただろう。
それで欲している【理由】が作れるのだから。

すぐにその条件は聞き入れられた。

太陽は拘束されている俺の、唯一変わり行く被写体。
オレンジから白へそして紅く燃える。

「フッ、今日も綺麗だね……」

そう呟いた俺は。
いつも通り、ファインダーを覗き込んで。
シャッターをきった。

Prev←  カメラ →Next

↓良ければポチッとお願いします♪

アルファポリスWebcontents
※別サイトに移動します。