「今度の部屋は……窓が広い」
窓の大きさ。
それは俺にとって、最も重要だ。
だが、大抵、窓から見える風景に人は居ない。
そう、そういう場所を割り当てられている。
他の囚人たちとは違う。俺の罪はそう言う事。
俺の被写体となった彼女。
彼女に出会ったことは今まで一度としてなかった。
自分で撮影した、あの写真。
あの写真を撮るその【時】までは。
聞いた話。
彼女はこの国の最高指導者の娘らしい。
そして、ずっとベッドに眠り続けているらしい。
生まれたときからずっとベッドで寝たままでいるらしい。
そう……
俺が写真を撮るずっと前から……
そう……
だから俺は探そうとは思わない……
連中は……
理由が欲しかったに過ぎない。
ただ理由が欲しかったに過ぎない。
変わる事無く眠り続ける自分の娘の。
己の娘の変わらぬ眠りの理由を。
そして、噂を流す……
フィルムカメラで撮られればその人の時間は止まると……
決して人が現れる事の無い、その部屋は……
人々をカメラから守る為ではない。
己の嘘を塗り固め、より噂を真実に近づけるための偽りの拘束。
「……馬鹿馬鹿しい」
限りなく馬鹿馬鹿しく、限りなく呆れるその状況を受け入れている理由。
それはただ1つ。
彼女に出会うため。
何も無い部屋のたった一つの窓。
拘束され、噂の罪人になる為の交換条件。
カメラを使う為の材料を切らさない事、必ず窓のある部屋を割り当てる事。
その2つ。
連中にとっては嬉しい交換条件だっただろう。
それで欲している【理由】が作れるのだから。
すぐにその条件は聞き入れられた。
太陽は拘束されている俺の、唯一変わり行く被写体。
オレンジから白へそして紅く燃える。
「フッ、今日も綺麗だね……」
そう呟いた俺は。
いつも通り、ファインダーを覗き込んで。
シャッターをきった。
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