故郷:生家 | 根岸俊雄の住まいづくり入門

故郷:生家

太郎よ、君は私の生家を見たことはありませんね。
それは君が生まれる前に壊されてしまったからです。


根岸の家は祖父の代まで専業農家でした。
父は教員になり、母が祖父と農業を続けました。
学校が農繁休業のときは、私たち子供もみんな手伝いました。


私が生まれ育った家は大きな総二階の家でした。
二階は養蚕部屋でトタン葺きの屋根には二つの換気窓がありました。
どのくらい古い家だったか、定かではありません。
祖父が婿養子にきた時すでにこの家は建っていたはずです。

05062001

通り抜け土間がありました。
近所の子供たちが鬼ごっこで駆け抜けて行きました。
そこで餅をついたこともあったような記憶があります。


囲炉裏が土間の脇の板の間にありました。
中に足を踏み入れることができる大きさだった気がします。
鍋の中の「おっ切り込み(ほうとう)」、灰の中の焼きリンゴ・・・。


縁側もありました。
目の前の庭、その先の蓑山(みのやま)、空の上の満月・・・・。
ススキ、まんじゅう、ふかし芋を供え、祖父とお月見をしました。


縁の下が家全体に広がっていて、子供は中に入り遊びました。
乾いた土、そこにはあり地獄などがありました。


生家のことは大切な思い出です。
そこでの生活と家の様子は、私の記憶から一生消えることはありません。
私が住まいを設計するときの原点です。