弁論要旨 | 今日も花曇り

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先日、弁論要旨を起案した刑事事件の判決言渡しがありました。弁論要旨とは、刑事事件の証拠調べが終わった後で、弁護人が述べる意見の要旨を書面にまとめたものです。

教科書で説明されている基本的な弁論要旨とは少し異なったものになりましたが、実際に接見に行き、被告人の話を聞いて自分が考えたことから、できるだけ離れずに起案した結果でした。

判決言渡しでは、その弁論の内容が判決にどのように反映されるか、怖くもあり、少し期待もしましたが、実際には「弁護人が主張するような事情を考慮しても・・・」と、軽く触れられただけでした。実務での最終弁論の扱いなど、たぶん、これが普通なのでしょう。

知恵を絞って起案した弁論要旨ですが、被告人はその弁論を聞いて、何か思ってくれたでしょうか。実刑の懲役で、被告人は勾留中だったので、判決言渡しが終わると、脇にいた警察官からまた手錠と腰縄をつけられていました。そのまま収監されるのでしょうか。

指導担当弁護士も被告人に特に声をかけるでもなく、法廷を後にし、私もそれに続きました。被告人は控訴しないことを以前から明言していたし、国選ですので、特に何かない限りは、もう接見に行くこともありません。

弁護人、裁判官と被告人の間の、小さくない距離を感じた体験でした。