※文中に出てくる地域名、人名、団体名、組事務所名などは全て架空のものです。

ミナの野望はともかく、私たちは「乱」で有名になった。

しばらく来ていなかったお客さんも、私たちを一目見ようと店に来てくれる。

今まで店に来ていたお客さんの来る回数が増える。

ママにとってこんなに嬉しいことはない。

カウンターに二人で登り、少し前に流行ったノリのいい曲でダンスを踊る。

超ミニで。

お札が舞うってことはなかったけど、胸にはお札。

手にはお札。

インスタント扇子を作るためにお札。

とにかくお客さんはお札をくれた。

当然、売上げにも繋がる。

ママは私たちを持ち上げた。

そして、チーママに冷たく当たった。

「あんたもあの子たちみたいに客呼んでみなさいよ」

見ていて、涙が出そうだった。

無理だよ、絶対。

そう思った。

だってチーママ、歳だもん。

「あんなふうにはなりたくないよね」

ミナが言うたび、自分の将来が不安になった。

今は若いからいいけど…

そう思うと、いつまで家出をしてるんだろう、ってふと不安になった。

ノブタカだって、いつまでも私たちに居られても迷惑だろうし。

でも、ミナにはそんな不安は全くないようで、

「お金貯めて、オバサンになんないうちにママになんないとね」

なんて企んでるんだから、ほんと頭が下がる。

「ただいま」

いつものようにノブタカとヒサヒデのいる家へ戻る。

この頃は順調。

ノブタカに借りていたお金も全額返済。

「今日はフルーツ土産っ!」

お客さんが手をつけずに残したフルーツを広げるミナ。

「げ、いつの間にそんなの持って帰ってきたの?」

「え?ナツがボーっとしてる間」

ミナはニヤつくと、

「とにかく食べよ」

さっさとフォークを用意した。

眠りかけていたヒサヒデも起きてきて、フルーツパーティ。

やるな、ミナ。

「ってか、うちら、ほんとヤバイんだよ。ね、ナツ!」

「ん?」

「もうホント、店の客全部がうちらの客、みたいな雰囲気だよね~」

「あぁ、う、うん」

ノリノリのミナに、将来が不安だなんて言えるわけがない。

それにしても、家出なんてしてて、将来幸せになれたりするんだろうか…

ほんとその辺、不安んだわ…

しれっと一番大きなメロンをフォークで突き刺しながら、しばし不安に溺れるナツであった。

つづく