今年も昨年同様よろしくお願いいたします。
さて、今年第1回目はクラシックから。決して恰好つけるわけではありませんが、中学時代にカルチャーショックを受けた1枚。
"ムソルギスキー"作曲のピアノ組曲である
「展覧会の絵」
演奏者は"冨田勲"氏。
- 展覧会の絵 ultimate edition/冨田勲
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75年の中三の時、同級生から「これ聴いてみてよ」とクロームカセットに録音されたテープを渡された。聴いてみるとクラシック音楽。だがオーケストラではなく、金属音めいて、またあまり聴きなれないサウンド。
「何、これ?」
「シンセサイザーで一人で多重録音したもの」
シンセサイザーで16chのテープに重ねて録音したものと聞いて驚いた。(まだアナログ・シンセの時代)当時は楽器を持っているなんて学年で数人いるかどうかの時代でバンドなんか組めるわけがなく、私はエレクトーンをラジカセ2台で演奏しながら音を重ねていく方法でやっていた。
しかし、ラジカセは音質が悪く、3度目あたりから1回目に録音した音がAMラジオ位の音質になり苦労していた。まだTEACの4chのテープデッキすら30万以上していた時代。それが1chをそれぞれ音色を自由に変えて演奏して録音ができなんて夢のような話だった。
冨田氏は、作曲家として手塚治虫氏の作品の音楽などを手掛け、69年モーグ・シンセサイザーで制作された「スウィッチト・オン・バッハ」と出会い、71年日本で初めてモーグを個人購入。
試行錯誤しながら、74年「月の光」でアルバムデビュー。日本では評価されなかったものの、アメリカで評価を受ける。
どこかめぐり合わせを感じる。もし10年後に作成されていれば冨田氏のシンセのサウンドでこのアニメが見られたはずだ。
トータル40分弱のものだが、1人で7ヶ月を費やして作成された
「展覧会の絵」
このアルバムを聴いて、冨田氏のように曲を多重録音で作ってみたいと憧れたものだ。(この願いが叶ったのは20年後、マッキントッシュが買えるようになってからでその時で30万位だった。)
(アルバム1.、5、11の短縮版)
「月の光」はビルボード全米クラシカル・チャートで第2位と獲得、日本人では初めてグラミー賞にノミネートされた。「展覧会の絵」はビルボード1位となり「世界の冨田」となり、日本でも評価されることとなる。
シンセといえば、"YMO"が有名であるが、マニピュレーターとしてYMOをサポートする"松武秀樹"氏も冨田氏の弟子的存在にあたる。
ン千万もかけて輸入したものの、マニュアルもなく使い方に苦労して「だたの鉄くずか?」と後悔しながらも、日本シンセサイザー奏者の第一人者となった冨田氏の功績は偉大である。当時海外で一番有名な日本アーティストでもあった。
冨田氏のように1人で音楽を制作してみたいと憧れた、私にとって貴重なアルバムの1枚なのである。