お駄賃は50円 | おバカな2人の二人三脚

おバカな2人の二人三脚

 ふたりで楽しいお気楽生活。 胸を張って前を向いて歩きましょ。

僕の日課は、夜中の散歩。
いつも深夜24時を過ぎて歩き回るから、散歩というより徘徊と言えなくもない。
実際、職質も何度か経験したし。

昨夜は雨上がりで涼しく、実に徘徊日和でした。
途中の自販機で買ったペットボトルを飲みながら歩いていると、空き缶を詰めた大きな袋を自転車の荷台に載せたおじさんが、追い抜いていきました。
空き缶拾いのおじさんも、暑い日中より、こんな時間に ”お仕事” してるんですな。

このおじさん、あまりに空き缶が多すぎて、ハンドル操作が怪しい。
補助がとれたばかりの子どものように、左右にフラフラしながら運転していました。
大丈夫かぁ? 転ぶんじゃねーの? なんて思っていた矢先、突き当たりのT字路から、ウインカーも出さないバイクが右折して来ました。
空き缶おじさんは、かろうじてバイクをかわしたものの、バランスを失い(もともとバランスがとれてないように見えたけど)、転倒してしまいました。

ガッシャーーーーン ガラガラガラ

寝静まった近所の安眠を奪う強烈な音。 道には無数の空き缶がばら撒かれました。
道端に座り込んでるおじさんに追いついた僕は、心配になったので声をかけました。
「大丈夫……ですか?」
「おう、大丈夫だ。 ひでー野郎だな」 と走り去ったバイクの方を睨むおじさん。 とりあえず怪我はないようです。
「あんちゃん、空き缶集めるの手伝ってくれや」
あんちゃんってオレのこと? なんで、オレがゴミ拾い手伝うの?
しかし、おじさんにとっては、僕が手伝うのは当たり前のことのよう。

交通量の少ない路地ではありましたが、万一車が来れば、邪魔になります。 早く片付けた方がいい。 しょうがないから、手伝いましたよ。 はい。
しかし、ペッチャンコに潰した空き缶というのは、なかなか拾うのが難しい。 それに、なんか汚れてて触るのが気持ち悪いし。

もしここに巡回の警官がやって来たら間違いなく職質だよ。 ブツブツ。
…… 幸いなことに、警官は来ませんでした。 よかった。

全ての空き缶を袋に戻しました。 また転んでも散乱しないよう、口もしっかり縛りました。
「もうそれ以上、空き缶載せちゃダメですよ」
ほんとはもっと言ってやりたかったけど、それで我慢。 おじさんは被害者だし。
「あんちゃん、ありがとな。 これ、お駄賃」
空き缶おじさんは、僕の手に硬貨をおいて、フラフラしながら走り去りました。

お駄賃―― 懐かしい響き。 最後にお駄賃を貰ったの、いつだっただろう?
手のひらの50円硬貨を眺めながら、ふとそんなことを想いました。