イカ拾いませんでした? | おバカな2人の二人三脚

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 ふたりで楽しいお気楽生活。 胸を張って前を向いて歩きましょ。

魚屋さん

めっきり寒くなりました。
かじかむ手に気合を入れながらガラスケースを水拭きしていると、清治さんが築地の仕入れから帰ってきました。 「美咲っ、今日はいいネタが入ったぜ!」
店の前にトラックを停め、勢いよく荷台を開きます。
よほど満足のいく仕入れだったんでしょうね。 ニコニコです。
でも、こういう時が危ないんだよなぁ……。

清治さんって、優しくてカッコ良くてとってもいい人なんだけど、なんていうか、ちょっと抜けてるところがあるんです。 調子に乗ってると、アチャ~! ってことが多くって。
あたし、しょっちゅう脱力させられちゃうんです。

お義父さんはよく心得ています。
清治さんをチラ見すると、黙々と発砲スチロールのケースを開けていきます。
「本マグロ、真鯛、サバ、メカジキ、アンキモ、ヒラメ、真アジ ――」
ひとつずつ真剣に確認していく目つきは、まさに職人。
横でタバコを吹かしている清治さんとは、親子とは思えません。
「大ハマグリ、サザエ、ウニ ――」
「イクラ、アカザエビ、甲イカ……。 甲イカ?

お義父さんは前掛けのポケットから覚え書きを取り出します。
「おい清治、甲イカどうした? 仕入れ見送ったんか?」
「どこ見てんだよオヤジ。 その真鯛の横にあるだろ」
「おう、良く見てるよ。 鯛のどこにあるんだ?」
「ここだよ。 ここ……。 アレ?」
「どうした。 ワシの見間違いか?」
「いや、その……。 あれ、おかしいなぁ」
清治さんは慌てて荷台の隅や運転席も探しますが、甲イカは見つかりません。
オーマイ…… ガッ!
ムンクのマネをしてその場を流そうとしますが、お義父さんには通じません。

あ~ぁ、清治さん、やっぱやらかしちゃった。 あたしのイヤな予感は的中。
やれやれ。 こんな調子じゃ、お義父さんはまだまだ隠居できないわね。

   *   *   *

土曜日の演奏会の帰り、築地市場に行きました。
市場の中で食事しようと思ったのですが、土曜の夕方なんてどこも閉まってるんですね。
甲イカ
メシは諦めましたが、せっかくなので ひと回り見学させてもらいました。 僕は小学校の社会科見学以来、なるは初めて見る市場です。

途中、拾得物掲示板というのがありました。
書かれたモノの中に、甲いか とあります。
さすが築地。 クールな落し物です。
サニーレタスも負けてませんけどww

落とした人をイメージしてなるが描いたのが冒頭の絵で文章はほんのオマケ。 (もちろんフィクションだよー)