『ゴリアテ ロリスと電磁兵器』 | 本だけ読んで暮らせたら

『ゴリアテ ロリスと電磁兵器』

『ゴリアテ ―ロリスと電磁兵器―』  スコット・ウェスターフェルド/著、 小林美幸/訳、 新ハヤカワ・SF・シリーズ(2012)

第一次世界大戦の歴史改変スチームパンク小説3部作の最終巻。

前2作の記事はコチラ ⇒ 『リヴァイアサン』   『ベヒモス』



生物の遺伝子操作技術を発展させ、様々な新生物を造り、それらを用いて文明を発展させてきたイギリスを中心とする“ダーウィニスト”陣営。

蒸気動力を用いた機器によって文明を発展させてきたドイツを中心とする“クランカー”陣営。

両陣営による戦争はヨーロッパ外の世界をも巻き込み拡大している・・・。


(2巻で)オスマントルコの革命成功の一翼を担った主人公の2人(イギリス海軍士官候補生デリン・シャープとオーストリア・ハンガリー帝国大公の息子アレック)を乗せたイギリス海軍巨大飛行獣<リヴァイアサン号>はイスタンブールを去り、東京に向かう途上のシベリア上空にいた。

二人の眼前に広がるシベリアの森林。そこは数百km四方に渡って木々が倒れている。この森林でいったい何が起こったのか??

リヴァイアサンには、このシベリアの大地から敵国クランカーの科学者を救出せよとの命令が下る。


ニコラ・テスラというクランカーの科学者による電磁兵器“ゴリアテ”の能力・威力を世界に見せることによって戦争を終結に向かわせたいと考えるアレック。

一方、女であることを隠して入隊し、その正体が周辺に明らかになりつつあるデリンは、旅の終わりを感じながら、そしてアレックへの感情にとまどいながらも、アレックが抱く戦争終結への想いに協力するのであった・・・。


二人を乗せたリヴァイアサンは、東京から大西洋を渡りアメリカ、メキシコへ、そしてまたアメリカへと戦いの舞台を移して行く・・・。



さて、このシリーズ、それぞれ1作が2段組みでだいたい450ページもある。それが3冊。長ーい作品だが、全体のストーリーは極めて単純だ。小中学生向きと云ってもイイかもしれない。まァ、全体の流れは単純であるが、一つひとつの場面に関しては細部にこだわって描いているものだから、これだけの分量になっている。

SFは世界観を大事に、細部にこだわって描いてほしいと思う私には満足のいく作品だった。

作中で描かれる生物兵器や蒸気機関兵器、そして様々なシーンがふんだんな挿絵によって表現されているのも、この物語を盛り上げるのに一役かっていた。なにより、こうした多量の挿絵が、昔読んだジュブナイルSF作品のテイストを思い出させてくれた。1年間楽しませてもらった。



ベヒモス ―クラーケンと潜水艦―
 ←第2作

リヴァイアサン クジラと蒸気機関
 ←第1作