『生、なお恐るべし』 | 本だけ読んで暮らせたら

『生、なお恐るべし』

THE TERROR OF LIVING (2011)

『生、なお恐るべし』   アーバン・ウェイト/著、 鈴木恵/訳、 新潮文庫(2011)

長篇デヴュー作だそうだ。今年は新人作家の作品を結構読んでるナ。

さて、先ず最初に思ったのが、どうしてこういう訳題になるかな?ってこと。 購買ターゲットはオッサンか??

若い人が、このタイトルに惹かれるとは思えんのだが・・・。


そして、帯の表と裏側に書かれた惹句。

 表側: 「C・マッカーシー、D・ウィンズロウ、T・R・スミスに叩きつける挑戦状!」

 裏側: 「どえらい小説だ。仮借なきテンポと流麗な語り。弛緩というものをまったく知らない。」

        ↑ この惹句、スティーヴン・キングの名前を持ってきている。

読み終わって言えることは、この煽りの惹句は、いくらなんでも言い過ぎだってこと。

大御所作家を羅列して釣る商法。。。このテのあざとい誇大広告はキライ。


文句ばかりを言ってもしょうがないので内容紹介。


小さな牧場で少数の馬を育てるだけでは生活が成り立たない主人公:初老の前科持ちフィル・ハントは、時折、麻薬の運び屋をしている。20年以上も運び屋をしてきたが、コレまで問題となることは無かった。

だが、遂にその日がやって来た。受け渡し場所を保安官補に発見され、歳若い相棒は捕まり、自身はなんとか逃亡を果たす。

そして、その失敗を償うために引き込まれた新たな仕事で命を狙われる始末。極僅かに生き残れる道を模索するため、取引の“麻薬”を持ち去るフィル・ハント。

フィル・ハントを執拗に追う殺し屋。

麻薬を追うベトナム人マフィア達。

殺し屋とマフィアが通った跡には数々の死体。

彼等を追うFBIと保安官補。

追う者と追われる者を描いたクライム・ノベルの佳作。


主人公と保安官補、この二人の人物造形はイイ。プロットは普通。結末はイイ。総じてソコソコの作品。

だが、D・ウィンズロウには敵わない。あれほどの作家にソウソウ敵うはずもない。

かなり、C・マッカーシーの影響を受けていることも判る。だが、C・マッカーシーまでは遥か彼方だ。