『図書館 愛書家の楽園』
- THE LIBRARY AT NIGHT (2006)
- 『図書館 愛書家の楽園』 アルベルト・マングェル/著、 野中邦子/訳、 白水社(2008)
図書館、書斎、本を読む人、本を読むこと、本そのもの、などについて、著者の想うままに書き連ねられたエッセイ。
「はしがき」の初っ端からの書き出しが素晴らしい!
著者はいきなり、宇宙の特徴=それは無意味さと目的不在であるということ、と言い出す。
私は、この文章の後に続くであろう著者の主張を、期待を持って予想する。
宇宙の無意味さと無目的性・・・・・、だから、また、読書(=情報の断片の収集)というものにも、意味や秩序などを求めても無駄なのだと。。。
ページをめくると、私の期待は半ば適えられる。ほぼ予想通りの文章が書かれていた。著者と私の、“本を読むこと”に対する基本的な、そして偏見に満ちた考え方は似ているかもしれない・・・。
だが、著者はその後の文章でこうも言っている。
「この世界に意味や秩序を求めることなど、まず不可能な企てであることは運命づけられている。それなのに、なぜ、人は情報を集めるのだろう? その欲求は、それ自体に価値があるのだろう。」と。
そして、スティーヴンスンの言葉を引用する。
「成功が見込めない分野でさえも、人類がけっして努力をやめようとしないその姿は、まさに感動であり、励みでもある」と。
こんな言葉・文章を読まされたりしたら、この後も全てを読まない訳にはいかなくなってしまうだろう!?
本を読むこと自体がやむにやまれぬ欲求であり、読書という無駄な行為を、それを承知の上でやり続ける我々のような異常体質の人間を、著者は肯定してくれているのだ。
そんな著者の、図書館・書斎・読書・本そのものに対する独断と偏見に満ちた主張や妄想が物凄く心地良い。
↓中身はこういった構成。
■はしがき
■神話としての図書館
■秩序としての図書館
■空間としての図書館
■権力としての図書館
■影の図書館
■形体としての図書館
■偶然の図書館
■仕事場としての図書館
■心のあり方としての図書館
■孤島の図書館
■生き延びた本たち
■忘れられた本たち
■空想図書館
■図書館のアイデンティティ
■帰る場所としての図書館
■終わりに
(↑ 本書中で使われている「図書館」という単語は、英語ではLibraryと表記されているから、公共の図書館だけでなく、個人的な書斎や本棚、PC内のフォルダ、WEB上のコンテンツなども含まれる)
読み終わって、あらためて思うことは・・・、
今現在、この時代、この世界で、本を読むこととは、実に個人的で観念的な行為だということだ。
読書を何かの役に立てたいとか、読んだ成果を利用して自分以外の誰かに影響を与えたいとか考えても、それは独善的であり、不遜な態度であり、他人にとっては余計な御世話であるということになる。そういった想いを強くしてくれる。
時間と精神的な余裕があるときに、もう一度読み返したい。
お薦めです。