『予告された殺人の記録』 | 本だけ読んで暮らせたら

『予告された殺人の記録』



『予告された殺人の記録』  ガブリエル・ガルシア=マルケス/著、 野谷文昭/訳   新潮文庫(1997)




この本の著者ガブリエル・ガルシア・マルケスという人、1982年のノーベル文学賞受賞者だそうだ。

ノーベル文学賞受賞者が書いた作品なんて読むのはおそらく初めてだ。

(川端康成でさえも読んでいない私って・・・・・)

ノーベル文学賞を受賞するような人が書いたんだから、この作品、“純文学”なんだ・・・・・?

しかし、このブログには、“純文学” というカテゴリーは無い・・・・・。

この私が “純文学” にカテゴライズされる本を読むとは思っていなかったからだ・・・・・。 ・・・ってことで、このブログの既存のカテゴリーに納まらない本は “ミステリーとか” に入れてしまう・・・。

140ページ程度の薄い本だ。直ぐ読める。読んだ後は、奇妙な余韻に浸れる。

南米コロンビアの海岸沿いの貧しい小さな町で起きた殺人事件。その記録。記録?って云えるのか???

町中を巻き込んでの婚礼騒ぎが終わりつつあった早朝、若い男が、花嫁の双子の兄にメッタ切りにされて殺される。しかもこの殺人は、当の双子の兄弟がその日の晩から町中の人間達に宣言していたものだった。町中の人々が知っていたにも関わらず、サンティアゴ・ナサールという男一人だけが殺される直前まで知らなかった・・・。

殺されたサンティアゴ・ナサールを中心にして、彼の母親や亡父、家政婦母子の話が冒頭に語られる。そして、サンティアゴ・ナサールの友人たちの話、この物語の語り手もナサールの親友である。

その後、花嫁とその一家の話や、花婿となった男=突如この町にやって来たバヤルド・サン・ロマンという男の話が語られる。

これらの話の合間、合間に、ナサールが殺される朝までの町の人々の様子が描かれる。

花嫁が生娘ではなかったことから、結婚当夜に実家に帰された。婚前に関係したのがナサールであった、との花嫁の証言により、一家の名誉を汚されたことに怒りを抱いた花嫁の双子の兄がナサールを殺したのである。

小さな町だから、誰もが知り合いである。町中の人間が、殺されたナサールのことも、殺した側の双子のことも、花嫁のことも花婿のことも知っている。それなのに、何故この殺人を止める事ができなかったのか?

全体的にストーリーは淡々と進行する。 物語にはなんとも奇妙な雰囲気と時間が流れている。

この小説の最期に、ナサールが殺される朝の街中の状況と殺人の様子がドキュメンタリー・タッチで詳細に描かれる。この部分を描いたラスト数ページは、この小説のここまでの筆致とは違っているような感じがする。

その描き方が、読後に不思議な余韻を残す要因となっているような気がする。