「無限の住人」 | 本だけ読んで暮らせたら

「無限の住人」

「無限の住人」 講談社、沙村広明

10年以上も前から続いていて、この先どういう展開になるのか、まったく読めないネオ時代劇マンガです。

「勝つことこそ剣の道」、新興の剣術集団、逸刀流(いっとうりゅう)、その統主・天津影久(あのつかげひさ)。天津ら逸刀流に両親を惨殺された少女・凛(りん)。凛が両親の敵を討つために選んだ用心棒は、“百人斬り”、不死身の男・万次(まんじ)。

読み始めた頃は単純なストーリー展開だナと思いながらも、しかし、その画力と構図、殺陣の斬新さに圧倒されました。そして、何よりも、キャラクターがタッテイル!!のです。主要なキャラはともかく、逸刀流の面々、逸刀流の壊滅を狙う無骸流(むがいりゅう)の面々、これほど登場人物の個性が際立っているマンガもめずらしいのではないかと思います。
特に、女性キャラが秀逸です。
  かつては武家の奥方、無骸流・百琳(ひゃくりん)
  万次も敵わない、天才女剣士・乙橘槇絵(おとのたちばな まきえ)

主人公・万次と凛は、利害が一致する無骸流と組んで逸刀流のメンバーと戦ったかと思えば、場合によっては逸刀流のメンバーと組んで無骸流と戦ったりします。キャラの個性によって、敵味方が混在して、物語となっていくようです。
さらに、逸刀流vs無骸流の死闘場面とか、よんどころ無い事情(この辺のところは、読んでください)で凛と天津がある一派に狙われ、襲われる場面では、主人公・万次がほとんど登場しない巻があったりします。主人公なしでも読ませるのです。

無骸流との死闘・罠により壊滅状態となった逸刀流。その争いに加わった万次は、無骸流の頭目、公儀新番頭・吐鉤群(はばき かぎむら)の興味を引きます。そして万次は拉致されます。これが14巻の終わりでの出来事です。
吐鉤群とオランダ帰りの医師・綾目歩蘭人(あやめ ぶらんと)。この2人が万次の不死身の秘密を解き明かすべく執念を燃やします。一方、凛と逸刀流の残党・瞳阿(どうあ)と夷作(いさく)が巻き込まれる騒動。
現在最新刊である17巻では、この2つの話を中心に全体の物語が進行しています。主人公・万次は地下牢に閉じ込められ、身動きできない状態のまま、すでに3巻分が経過しているのです。

ヘンなマンガでしょう。主人公以外のキャラクターがドラマを動かしているのです。
現在のこの状況、作者が意図した展開なのでしょうか?
私には、たち過ぎたキャラが作者の意図を超えて暴走しているような気がします。
この先、どう展開していくのか?

このマンガの評価、好きか嫌いか、人によって真っ二つに分かれそうです。



著者: 沙村 広明
タイトル: 無限の住人 (1)



著者: 沙村 広明
タイトル: 無限の住人 (14)



著者: 沙村 広明
タイトル: 無限の住人 (17)