コメント欄に以下のようなご質問をいただきました。
「他校の話で申し訳ないのですが,先日TKC・伊藤塾の模試の結果が返却されました。
短答・論文・総合すべて上位二桁の順位を獲得しました。
ただ,
・司法試験の受験生が6000人いる中で1500人しか受けていないこと,
・出題形式が必ずしも司法試験と一致しないこと,
・全く現場思考の問題がほとんどなく,判例ままの出題で,判例を知っているか否かにより点数が左右される出題がほとんどであったこと,
・返却された答案の添削コメントを見る限り出題を正確に理解できていない添削者が多く,また,明らかに間違いではない論証が伊藤塾の論証に直されているなど,添削者の質がかなり悪いと思われること,
・解説冊子を見る限り,検討されるべき点が検討されていないなど,採点基準もあまり信用ができないのではないかと思われること,
等々の数々の疑問点があります。
もちろん結果はあまり気にせず,しっかりと勉強しなければならないことは大前提ですが,先生からみて,TKCの模試の信頼性はどのように思われますか?」
TKCだから辰巳だからとかいうことではなく一般論になってしまいますが,私は模試の成績と本試験の成績の関係や模試の成績の受け止め方について以下のように考えています。ちなみに,1500人受験していれば,サンプルとしては十分でしょう(特定の予備校の模試が特定の法科大学院生に偏っている可能性は否定できませんが…)。
まず,客観的なデータとして,模試の成績と本試験の成績には相関関係があります。これは,否定できない事実です。辰巳のパンフなんかにデータが掲載されていると思いますので,ご参照ください。
しかし,模試で上位の方(上位20パーセント程度)の成績をとっていても,本試験に合格できないという人もいます。
原因としては,3つ考えらえます。
1つ目は,本番に弱いといったメンタル面の問題。
2つ目は,ほとんど想定されませんが,模試の成績に安心してしまって,勉強をサボってしまったという人がいること。
3つ目は,質問者の方が仰るような問題や採点基準等の質の違いのよるものです。これが一番大きいところでしょう。模試で上位の方の成績を採っている人は実力は十分なのですが,この点で足をすくわれる可能性があります。例えば,模試では,何となく定義や趣旨を書けば点数がつくという場合がありますが,採点実感で指摘されているように,本試験では点数はつきません。ちなみに,本試験での採点基準はハッキリとはわかりませんが,このような感じなのではないかと推測しています。
一方で,模試で下位の方の成績をとっても本試験に合格するという人もいます。
私が,答案を見ている限り,答練や模試で下位の方(下位20パーセント程度)の成績を取ってしまう人は,予備校模試だからとか本試験問題だからとかいう以前に,単純に実力がないということが多いように感じます。法的根拠を間違える,要件のあてはめができない,基本論証が吐き出せない,極端に分量が少ないなどなど。ある程度の実力があれば,偶然模試のときに実力を発揮しきれなかったとしても,そこまで低い点数はつかないはずです。
では,なぜそれでも本試験に合格できるのかというと,これには3つの原因が考えられます。
1つ目は,本試験は,そもそも模試すら受けないという非常にレベルの低い層が受験していること。辰巳のパンフのデータによれば,かなり下位の方でも,全国平均の合格率よりは高い合格率が出ています。これは,模試すら受けないでぶっつけ本番,という(一部の天才を除き,)受験生として考え難い姿勢の層がいることによるものと思われます。模試を受験している時点で,ある程度勝負の土俵には立てているというわけです。
2つ目は,模試の結果を真摯に受け止め,残りの期間死に物狂いで勉強するという人がいることです。
3つ目は,正に,質問者の方が仰るような問題や採点基準の質の違いに基づくものです。ただ,上記のように,そもそも論として,実力不足が原因で点数が低くなっているものと思われますので,その影響は小さいでしょう。
長くなってしまいましたが,上位の方の成績を取ることができたのであれば,素直にそれを自信にすればよいと思います。ただ,本試験用の感覚にシフトするために,今後1か月程度は過去問中心に学習することをお勧めします。
一方で,模試で下位の方の点数を取ってしまった場合は,基本的な部分に問題がある可能性が高いので,基本知識の確認,問題処理パターンの確立など,基本事項を徹底するようにしてください。