『論文演習会社法(上)』『論文演習会社法(下)』(上田純子=松嶋隆弘編)
☆司法試験向き度→5/5点
☆予備試験向き度→5/5点
☆法科入試向き度→3/5点
新旧司法試験,予備試験の過去問を中心にオリジナル問題も取り扱った会社法の演習書(手形法も一部取扱いあり)。
構成は,問題→司法試験合格者(弁護士)による解答例→教員による解説。解答例には,解説者のコメントが付されている(解答例を称賛するコメントが多い)。
解答例は基本的に判例・通説の立場からコンパクトにまとめられており,解説も概ね論点を網羅できている。
会社法も含め,信頼できる過去問の解説・解答例が不足している中で,とても出来のいい1冊。
なお,会社法の過去問を扱った解説書として,『司法試験論文過去問LIVE解説講義本(商法)』(末永敏和),『事例演習会社法(第2版)』(石山卓磨)があるが,検討が浅く,出題趣旨等を踏まえられていない部分もあり,本書に劣る。
ただし,解答例も解説も,もちろん完璧ではない(解答例は分量の関係があるので,仕方がない面もあるが)。
例えば,平成20年(新)司法試験商法設問1の「株式交換の問題点」については,「株主に対 して交付する株式交換の対価が不当である点」の検討が求められているところ(出題趣旨),この対価の不当性によって不利益を被るのは誰か,債権者である(そもそも「債権者」といえるのかも問題となるが)丙銀行がこれを主張することができるか(別冊法セミ参照)等の検討は落ちている。
とはいえ,過去問を完璧に解ききることは不可能に近いから,この点はある程度仕方がない。
また,解答例と解説がマッチしていない部分も散見されるので,使用の際はその点に注意が必要である(ただし,解答例にコメントが付されている箇所があり,そこでミスマッチが是正されている場合もある)。
全体としては,司法試験向け,予備試験向けの優れた演習書であると評価できる。