最判平27.12.14 | 司法試験ブログ・予備試験ブログ|工藤北斗の業務日誌

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1か月ほど前の判例ですが,行政事件訴訟上の(狭義の)訴えの利益に関する重要判例(最判平27.12.14)が出されたので,ご紹介します。

【要旨】
都市計画法上の市街化調整区域において,開発許可に基づく開発行為が完了し,検査済証の交付があっても,開発許可の取消訴訟は,狭義の訴えの利益を失わない。
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【解説】
都市計画法上,「都市計画区域」「準都市計画区域」の2つの地域の指定をすることができると定められています。
「都市計画区域」は,「都道府県は,市又は人口,就業者数その他の事項が政令で定める要件に該当する町村の中心の市街地を含み,かつ,自然的及び社会的条件ならびに人口,土地利用,交通量その他国土交通省令で定める事項に関する現状及び推移を勘案して,一体の都市として,総合的に整備し,開発し,及び保全する必要がある区域を都市計画区域として指定するものとする。」(都市計画法4条2項,5条1項前段)と定められています。
「準都市計画区域」は,「都道府県は,都市計画区域外の区域のうち,相当数の建築物その他の工作物(以下「建築物等」という。)の建築若しくは建設又はこれらの敷地の造成が現に行われ,又は行われると見込まれる区域を含み,かつ……そのまま土地利用を整序し,又は環境を保全するための措置を講ずることなく放置すれば,将来における一体の都市としての整備,開発及び保全に支障が生じるおそれがあると認められる一定の区域を,準都市計画区域として指定することができる。」(同法4条2項,5条の2第1項)と定められています。
イメージとしては,都市計画区域は今後計画的な街づくりが行われるために指定されるのに対し,準都市計画区域はすぐに計画的な街づくりが行われるわけではないものの,放置すれば将来の街づくりに支障が生じるおそれがあるために指定されるという感じです。

そして,都市計画区域に関しては,さらに,市街化区域と市街化調整区域に分けられます。
市街化区域とは,「すでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」をいいます(都市計画法7条2項)。イメージとしては,現に市街地化されているか,今後建物を建築するなど,積極的に整備,開発を行っていき,市街地化していく区域という感じです。
これに対して,市街化調整区域とは,「市街化を抑制すべき区域」をいいます(同法7条3項)。
市街化区域については,少なくとも用途地域を定めるものとし,市街化調整区域については,原則として用途地域を定めないとされています(同法13条1項7号後段)。
なお,都市計画に市街化区域と市街化調整区域との区分を定めることを「区域区分」(同法7条1項柱書)といいます(一般的に「線引き」と呼ばれています。)。都市計画法上,この線引きが行われていない区域のことを「区域区分が定められていない都市計画区域」と表現します(一般的には,「非線引き区域」と呼ばれています)。

従来最高裁判例は,「市街化区域」について,開発許可を受けた開発行為に関する工事が完了し,当該工事の検査済証の交付がされた後においては,開発許可の取消訴訟について(狭義の)訴えの利益が消滅するとしていました(最判平5.9.10,最判平11.10.26。前者は,予定建築物(開発区域内において予定される建築物)について建築確認がされ,建築工事も完了し,検査済証の交付がされて,建築物の使用が開始されていた事案であるのに対し,後者は,建築確認がされていなかった事案)。

これに対して本件最高裁判例は,「市街化調整区域」について,開発許可に係る開発行為に関する工事が完了し,検査済証が交付された後においても,開発許可の取消しを求める訴えの利益は失われないと判示しました

その理由について,本件最高裁判例は,「市街化調整区域のうち,開発許可を受けた開発区域以外の区域においては,都市計画法43条1項により,原則として知事等の許可を受けない限り建築物の建築等が制限されるのに対し,開発許可を受けた開発区域においては,同法42条1項により,開発行為に関する工事が完了し,検査済証が交付されて工事完了公告がされた後は,当該開発許可に係る予定建築物等以外の建築物の建築等が原則として制限されるものの,予定建築物等の建築等についてはこれが可能となる。そうすると,市街化調整区域においては,開発許可がされ,その効力を前提とする検査済証が交付されて工事完了公告がされることにより,予定建築物等の建築等が可能となるという法的効果が生ずるものということができる。
したがって,市街化調整区域内にある土地を開発区域とする開発行為ひいては当該開発行為に係る予定建築物等の建築等が制限されるべきであるとして開発許可の取消しを求める者は,当該開発行為に関する工事が完了し,当該工事の検査済証が交付された後においても,当該開発許可の取消しによって,その効力を前提とする上記予定建築物等の建築等が可能となるという法的効果を排除することができる。
以上によれば,市街化調整区域内にある土地を開発区域とする開発許可に関する工事が完了し,当該工事の検査済証が交付された後においても,当該開発許可の取消しを求める訴えの利益は失われないと解するのが相当である。」
上記2つの最高裁判例は,「市街化区域内における土地を開発区域とする開発許可に関するものであるところ,市街化区域においては,開発許可を取り消しても,用途地域等における建築物の制限……等に従う限り,自由に建築物の建築等を行うことが可能であり,市街化調整区域における場合とは開発許可の取消しにより排除し得る法的効果が異なるから,本件に適切でない。」と説明しています。


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