透明な風、猫の背中。

2006.8.18記事最掲載




私の行っているシネコンでの上映は、小さめの所一館でした。
日本での扱いはそんなものなのかなぁ。
もっとこういう映画を見て欲しいと思いました。



9.11で、唯一テロリストの目標に達せず墜落したユナイテッド93のお話を、調査して映画化したものです。いわゆる派手な娯楽作ではないけれど、ついこの間世界を震撼させた事件を扱った映画として出来は良く、大変考えさせられました。


とてもリアルに出来ていました。
それはテロリストに関する事。
ユナイテッド93の乗客やアメリカ国民、もちろん私たちにとっても敵なのですが、いわゆる映画や物語の悪役とは違いますよね。
とても真剣に宗教的な言葉(念仏みたいなもの?)を唱え、神が我らを護ってくれる、成功へと導いてくれると、びくびくしながら行動していました。あれっ て。逆から見たら、大きな権力や悪に立ち向かうか弱い勇者ですよね。そんな映画や物語もたくさんあると思います。彼らには彼らから見たアメリカがあり、自 国や同胞があり、神があり、信念があり、私たちと見ているモノが違うと感じ、とても悲しくなりました。

戦争とはそういうモノだとは思いますが、それに屈する事もできず。果たして彼らはそれに気が付いて戦っていたのでしょうか。きっとそんな余裕すらないでしょうね。そこに悲しさを感じます。



この話が美談となっているのは、自己犠牲を感じ、そこに神を見たからでしょうか。不謹慎な事を書いてしまってごめんなさい。もちろん普通に考えて、生きよ うともがいた人々に感動はするんですが、Yahoo!に「あなたならどうしますか?」というような意見を募る所があって、そこの質問の内容に「唯一他に犠 牲者を出さずに」という箇所があり、ちょっと反感があったようなのです。それを読んだ時「自己犠牲の精神→キリスト→神」という感じでアメリカで見ている のかなって思ってしまいました。犠牲者の方は自己犠牲なんて考えていないと思いますけどね。テロに屈しないでなんとか生きよう!と行動した事が結果として 二次被害を出さなかったという事なんでしょう。



私ならどうするか…。想像もできません。でも、今まで死にそうな目にあった事もなく、死んだ事もないので、そのあまりになさすぎる死に対する想像力が 私を助けるかも知れません。恐ろしさでいっぱいいっぱいになってしまわないようなら、なんとか生きようと行動する男性達の力になりたいと思います。なんの 知恵でも良い、作業でも演技でも良いから。


神は信じます。でも、お祈りするなら、「なんとかなりますように」でも「神様なんとかしてください」ではなくて、「私たちの行動が実りますように」だと思いますから。それってテロリスト達 と一緒なんですよね。相手が信心+行動で来るなら、こちらも同じようにする。ユナイテッド93の乗客達は、きちんと戦ったのです。尊敬に値します。結局ど うなったかは知っているはずなのに、必死で応援してしまいました。



アメリカだけの味方をするつもりはありませんが、この世に生き、戦争やテロに心を痛める人間として、とても考えさせられる作品でした。多くの人に見てもらいたいと思います。