以下、アメリカの作家エドワード・グリフィンが1968年に行った講話を参考にして、アメリカへ共産主義勢力が浸透していった際の戦略と現状のアメリカと日本の様子を簡単に紹介する。

政府が人民の全てを100%掌握しコントロールすることを全体主義と呼ぶ。共産主義・ファシズム・グローバリズムはそれぞれの外見や主張する主義主張は違っているし、表面上は敵対関係にあるように見えるが本質的には同じ全体主義であると言える。そのどれもが人々の道徳や伝統的価値観を奪われて統一された新たな価値観に変え、完全支配政府によって思想統一された集団主義を実現することを最終的な目的としている。全体主義によって極一部の支配的ポジションにいる者達に権力や富が集中され、大多数の人々は思想的行動的な自由を失い、生存を脅かされ、イデオロギーの論議さえ許されない社会になる。この分類の中にグローバリズムを入れることに違和感の有る人がいるかもしれないが、例えば共産主義は「全ての人民が平等な社会」という理想を掲げており、実際にそれを実現する手段として全体主義による思想統一と人民支配、それに伴う指導者層への権力集中や反対者の粛清が必須であることは宣伝されていない。グローバリズムとは一般的には単純な多国籍企業化を表している言葉として捉えられるが、実際は全世界の経済市場としての統一化を理念として掲げた思想であり、それを成し遂げるためには各国各地域の伝統的な価値観・宗教・文化・生活様式などの差異の標準化、新しいものへの統一化を必須としており、最終的な到達点は世界政府による全体主義に帰結する思想を内包した言葉であることを認識しておかなければならない。

私達が民主主義・自由主義による人類の発展や進歩を望むとしたら、マルクスの思想的教義はとりあえず置いておき、レーニンによる共産主義勢力の組織戦略・戦術をまずは理解しておかなければならない。これが共産主義だけでなく全体主義的思想の勢力の共通した戦略となっているからだ。

ジョセフ・コーンフェダーは1919年にアメリカ共産党の創立メンバーとなり、モスクワで教育・訓練を受けた後にアメリカに戻り工作活動を行った。しかし彼は共産主義の矛盾や道徳に反した戦術に疑問を持つようになって離党し、後に熱心な反共産主義者になった。1955年にサンフランシスコの講演で彼は、「共産党の特徴はその理論よりも組織化されていることにある。国内で活動する組織である労働組合・農業団体・マスコミ・学術教員組織・政治クラブ・政府機関などの総和が国家権力を形作るものとし、そこに侵入浸透し、組織内部でグループを編成することで征服していき最終的には国家そのものを征服するという手段を主としている。」と語った。共産主義勢力の戦略を長年学んだ彼が話したこの戦略は、今もなお、世界各国、日本国内でも行われている共産主義勢力の基礎的な戦略である。

ベンジャミン・ギトローはアメリカ共産党の書記長でありモスクワの共産主義国際執行委員会のメンバーでもあり、世界の共産主義勢力の中でも非常に力を持つ人物だったが、彼もまた後に共産党を抜けて反共産主義運動の一員となった。彼は著書の中で共産党時代の様々な体験を綴っている。かつてニューヨークで共産党が行った夜間の街頭演説で、共産党員と反対派の間で喧嘩が起きた。これは過去にも度々起こっていたことで、事前に準備していた共産党の屈強なチンピラ部隊が反対派の市民を叩きのめしたのであるが、その後彼らは事前に立てていた恐ろしい計画を実行した。周囲の建物の屋上に隠れていた共産党員が地上に集められたチンピラ部隊の頭めがけて石畳用の重い花崗岩を投下したのである。これによりチンピラ部隊の内2名が頭蓋骨骨折により亡くなった。もちろんこれらは共産党員にも真相を知らされることはなく反共産主義者によってなされたと宣伝された。共産党は自らの計画的殺人によって「殉教者」を作って反共産主義者に対する憎悪を高め、世間一般に対しても共産主義に反対する勢力の非人間性を演出したのであった。このような共産主義者による計画的な殺人(身内に対しても外敵に対しても)は常に繰り返されており、最終的な政治的目的のためにはどのような非人道的行為も許されると考えられている。

1928年の時点で共産主義者達はアメリカ国民の間における人種的違いは社会構造における最も脆弱な急所だと明言し、ここを利用したアメリカ国民の分断化と敵対構造を作るための工作活動を開始した。人種差別反対のスローガンを掲げた運動を知って共産党に入党した黒人の青年マニング・ジョンソンはやがてアメリカ共産党の全国黒人委員会の委員に任命されるまでになった。しかしその後、共産主義者は実際は黒人の状況を改善することに全く興味が無く、むしろその状況を利用して社会的混乱を作り出そうとしていることに気づき脱党した。彼は自著の中で「アメリカを破壊するための血生臭い革命における捨て駒として黒人を利用しているだけだ。それはモスクワの指導によって作られた“共産主義者の指令書”によって計画されており、人種間の争いがアメリカを分裂させ、混乱の中でモラルの崩壊とパニックが起こし、その混乱の中で共産党の指導の元で革命委員会を組織して民衆の蜂起を指揮、武装した民衆は主要官庁を占拠し大統領や閣僚を拘束し旧体制の廃止と新政府の樹立を宣言する。」と語った。共産主義勢力は、治安を悪化させて社会基盤を不安定化させ混乱を作り革命に繋げるという常套的な戦略があり、それに基づいて戦術を作ることを認識しなければいけない。

これらの事例は現在のアメリカの混乱は最近突発的に始まっているのではなく、かなり以前からの共産主義勢力による工作活動の浸透によるものであることを示している。現在のアメリカでは共産主義勢力に属する大半の政治家は民主党に属している(一部共和党にもいるし、民主党にも反共産主義者も一部いるので誤解ないよう)。もちろんゴリゴリの共産主義者である極左に属することを隠さない者もいるが、共産主義者であることを直接的には表明せず人道主義者・リベラリストの仮面を被っている者もいるし、イデオロギー的に共産主義には属していないもののその戦略上の利益を享受する者やグローバリスト、イデオロギー的には賛同してないが人道主義者として戦略に同調している無自覚な善意者も含まれる。

 

民主党のバラク・オバマは大統領時代にそれまでの慣習を破りFBIやCIAの主要役職を自分の子分に入れ替え、民主党の利益のために動く集団に変えた。民主党とウォール街は中国などと結託した目先の富を求める層が大半を占めるようになり、手っ取り早く儲かるために中国系企業の上場だけは審査をしなくて済むように法律を変えることまで行い、主要メディアへの浸透も完了して共産主義勢力の戦略に乗っかった巨大な利権集団を作り上げることに成功した。

 

トランプは、オバマが構築したこれらの結びつきによる政治的支配力を「ディープステート」と呼び影響力の排除を試みたが、既に浸透工作が終わっている主要メディアや大手SNSはこれらの情報を「陰謀論」と呼び情報規制を行った。また、熱狂的トランプ支持者の一部が「光の戦士トランプがディープステートを倒す」といった類のファンタジックな妄想と混ぜこぜにして情報発信したものを殊更大きく取り扱い、「ディープステートなどという概念は陰謀論から生まれた幻想だ」と宣伝することに利用した。因みに日本の大手マスコミもほとんどが民主党系アメリカメディアの影響下にあること、日本国内の共産主義勢力が浸透していること、中国共産党の浸透と脅迫による工作によって、アメリカ国内の事情に関しては民主党系アメリカメディアの報道内容だけをそのまま垂れ流しており、アメリカの実情の報道はなされていない。

例えば、アメリカで頻繁に起こる銃乱射事件に関しての報道は「だから銃規制が必要である」という主張のみが報道されている。これは民主党系主要メディアによる論調そのままであるし、日本人が聞くとそれは非常に理に叶った意見としか思えない。しかし実際はそんな単純な問題ではない。アメリカはその国家設立の経緯によって、建国の精神として「政府は絶対的なものではなく、政府が国民に対して弾圧を行った際には、国民は武装蜂起して政府を倒す権利が有る」という、民主主義・自由主義の根本となる非常に重要な国民の権利(義務的なニュアンスもある)として銃火器の所持が認められているのである。しかしこれは共産主義者にとっては非常に邪魔で憎むべき「伝統的文化」であり「民主主義的思想の具現化」であり「一神教であるキリスト教的教義の下では政府も国民も同等の存在であるという思想」であり、何よりも、自分達に抵抗する力を国民が持つことに対する強い拒絶がある。だから民主党系主要メディアは銃乱射事件が起きる度にこれを銃規制実現のためのプロパガンダに利用するし、保守系の人々はそのような意図を知っているから強くこれに反発する。そして残念ながら日本でこのようなアメリカ社会の実情が両方の視点から報道されることはない。

共産主義勢力・グローバリズム勢力と強く結びついた民主党はアメリカを破壊する政策を進めている。黒人青年の死をきっかけに大きく広がり一般的に認知されることになったBLM(ブラック・ライブス・マター)運動は、日本のマスコミではまるで民主的な反人種差別運動かのように報道されている。しかし実態は、共産革命を標榜するテロ破壊活動の実行部隊でしかない。1977年、ウェザーアンダーグラウンドという共産テロ組織がFBIによって解散させられた。彼らの残党が立ち上げた組織がBLMで、BLMのリーダーは「私たちはイデオロギー的な枠組みを確立し、訓練されたマルクス主義者です。私達はイデオロギー的な理論に極めて精通しており本当の目的は、多くの黒人が利用できる社会運動を構築することです。」と公言し、更に環境活動・不法移民受け入れ促進もこれらの社会不安定化のための活動手段であることも名言している。彼らは民主党の影響の強い州の都市部を中心に暴動や破壊活動を行った。その理由はそれらの地域の警察組織はBLMメンバーを逮捕しないように民主党政治家から指示されていたからだ。また民主党系マスコミはBLMの破壊活動を「言論の自由である」と擁護した。因みに共産主義者でありグローバリストであることでも有名な大富豪であるジョージ・ソロスはBLMに活動資金を出しているメインスポンサーの一人である。

民主党バイデンは大統領になって真っ先にトランプ時代に建設中だった国境の壁を撤去し、続々と押し寄せてくる不法移民の入国を増加させるように努め、それから2022年までの約2年間で500万人以上の不法移民をそのままアメリカ社会に解き放った。なぜこのような事をするのか、共産主義者の戦略・戦術を知れば容易に理解できる。不法移民の増加は治安を悪化させる最も有効な手段の一つであるからだ。LGBTや環境問題に関する活動も同様に共産主義活動家が利用し社会問題として拡大させてきた。特にアメリカやヨーロッパ諸国でLGBTに関しての運動が実を結び、女子トイレや更衣室に男が自由に入れたり、女子スポーツに男が混ざったりなどして既存の社会秩序を破壊して混乱を拡大させていっている。

では日本の共産主義勢力の活動はどうか。日本の場合は人種的な分断が難しかったため長く時間をかけて在日朝鮮人差別の切り取りと拡大宣伝による分断、沖縄の独立運動、アイヌ差別の捏造と拡大宣伝による分断工作を行ってきた。最近は欧米でのLGBTによる社会混乱の成功例を見てこれを急速に取り入れようとしている。島国のため不法入国者の増加推進は遅々として進んでないが、不法滞在外国人の強制送還反対活動などをして日本の治安悪化のために地道な活動をしている。

日本だけの特徴的な分断工作としてとりあえず3点挙げるとしたら、まずは反戦平和運動という名の日本弱体化運動。共産主義勢力は「敗戦革命」という言葉を使い、外国勢力の侵略による日本の敗戦とその混乱に乗じた共産革命を視野に入れて反戦運動・軍備増強反対・憲法改正反対などの活動を続けており、その意図を認識しておらず思考停止で、無条件でそれに同調する国民も多い。これは他国には無い特徴的なものである。
2つめは選択的夫婦別姓・同性婚問題だ。実際に困っている人はかなり少数であるし少しの知識があれば簡単に対応可能な事象であるのだが、その少ない問題を切り出して拡大宣伝・報道することで強引に社会問題であるかのようすることに成功した。左翼マスコミがこれに全面協力していることも大きい。中国の明確な侵略行為が激化している中、自民党総裁選を扱った日本マスコミが候補者達になげかけた質問は「日本の防衛に関して」ではなく「夫婦別姓に賛成か反対か」であった。「選択的」なんだからやりたい人だけやればいい、個人で判断することなので他人が拒絶する必要はないという人は多い。しかしこの運動は日本の最小社会単位である家族制度とそれの元になっている戸籍制度の破壊を最終目標としたものだ。ダムに蟻の一穴を開け全体を崩壊させるための最初の一撃として、レーニン的戦略に忠実に基づいて始められた社会運動であるという背景を知らなければいけない。

そして3つめは女系天皇問題だ。日本人のアイデンティティは天皇にあると考える共産主義勢力はまずは天皇制の有名無実化からの廃止を目的にし、女系天皇制を主張している。従来の男系天皇による血統主義を破壊するための蟻の一穴である。

私達日本人は、共産主義勢力が行う活動は、平和を愛し人権を守りたい善意の人々のその善意を利用した戦略・戦術であることを認識しなければいけない。共産主義工作のお題目として利用される言葉は「平和」や「人権」であることに注意し、更に、日本のマスコミの報道が必ずしも真実を報道しているとは限らず、なんらかの意図を持って情報が選択的に、時には捻じ曲げられて報道されている可能性さえもあることを知り、能動的にテレビ以外の多角的な情報を得て、欧米諸国の実情を多面的に知った上で自国の実情を考えることが必要である。