中国において、習近平の独裁体制が完全に確立した。

先日行われた共産党大会において、習近平の政治的抵抗勢力が全て排除され、手下のみで構成された人事が発表された。

これで習近平の永年皇帝としての地位が完成してしまった。

 

習近平は総書記となった2012年からの任期1期目の5年間で、「腐敗撲滅運動」の名目の元、それまで中国共産党を支配してきた江沢民派や胡錦涛の共青団を中心に、政敵を次々と摘発・拘束していった。これによって幹部から末端に至るまで実に25万人以上が粛清された。習近平の派閥の者達ももちろん軒並み汚職や収賄に手を染めているわけだがそれらは一切摘発されなかった。この腐敗撲滅運動は、習近平の敵対勢力や、どこの派閥にも属していない者達に対しても、習近平に逆らうと粛清されるという明確なメッセージとなり、共産党内に習近平への絶対服従の空気を作った。

 

反対ができない状況にしてから習近平が行ったのは自らの権威・権力の強化だ。党規約を改定し自らを毛沢東らと並ぶ英雄的な指導者として規定し、人民に対して習近平思想の教育をすることを義務づけた。また共産党内に独裁者を作らないようにするために鄧小平が作った総書記職の最長2期10年という任期規定を変え、3期目4期目の続投も可能にした。

 

権力強化が終わった後に続いて手をつけたのは政敵の財源の破壊。「腐敗撲滅運動」によって既に対抗する意思を失っていた政敵達だったが、意思だけの屈服ではなく、身動きできないように手足をへし折っておこうというわけだ。香港の一国二制度を潰し中国共産党の完全支配にしたのも江沢民派が握っていた金融業界を奪うという目的が最初にあったと言われている。

 

そして次に中国経済をけん引してきたIT業界や不動産業界を潰しにかかった。江沢民世代の幹部やその子供や孫世代らと癒着することで急成長を遂げていたITや不動産業界であったが、大手IT企業の株式上場を止めたり規制で縛りあげていったり経営者を拘束するなどして業界の成長を止め、共産党の管理による国営化に向けて動き始めた。

また、不動産業者に対する銀行からの資金融資に規制をかけ、多額の借金を伴う拡大路線によって急成長してきた全ての大手デベロッパーへの資金の流れを止め、倒産寸前の状態にした。どうして自国が経済的に困るようなことをするのかと思うかもしれないが、習近平にとって自国の経済なんて二の次三の次、それよりも政敵を潰すことが最も重要だということである。

かつて毛沢東は大躍進政策による大量餓死者を出し経済や社会の混乱を起こしたことで一度主席の座を奪われ、権力奪還のために文化大革命を始めて政敵を排除することで復権を果たしたが、習近平は政敵が動く前にその力を全て削いでいくことで自らの地位を固めていった。

 

ところで、これらの動きの具体的施策、思想の論理構築などは習近平が自ら行ったものではない。習近平にはそのような能力は無い。これらを行ってきたのは王滬寧という人物である。

彼は1988年アイオワ大学に留学した際、アメリカ社会の乱れや堕落を目の当たりにすることで、このような社会は将来必ず崩壊すると考えた。中国をアメリカのような社会にさせないために、思想・経済・文化などを全て党がコントロールする方式を強化しなければいけないという思いを強めて中国に戻った。その後彼は中国共産党が世界の自由主義に対抗するための基礎的な価値観や思想の中心となった。江沢民・胡錦涛・習近平の、お互いに嫌い合い対立しているリーダー達の全ての側近としてその時代の重要な政策を立案してきた。このような人物は中国では非常に珍しい。中国は歴史的に、例えば戦功を挙げた英雄が出た場合、その英雄の上官などが何らかの理由をつけて真っ先にその英雄を粛清するようなことがよくあった。自らの保身のため、優秀な部下が自分を追い落とす前に潰しておくというような考え方だ。昨今の日本企業なんかでも有る話ではあるが、特に中国ではそういった考え方が強い。そういった社会、特に派閥間の争いが激しい中国においてこのように生き残っていく人はかなり稀だ。王滬寧という人物の立ち回りの凄さがよく分かる部分と言えるかもしれない。

中国共産党が今まで掲げてきたスローガン、「多角的発展観」「和階社会」「反腐敗」「一帯一路」「戦狼外交」「共同裕福」「習近平思想」などの政策は全て彼が立案し理論構築を行った。そしてそれらの中国の自由経済や腐敗した文化を終わらせる時が来たと習近平を説得することに成功した。習近平にとって王滬寧の考え方である共産主義社会の実現は、江沢民派などの政敵達の排除もできるし、毛沢東の時代に中国を戻し、自らも毛沢東を超える存在として歴史に名を残したいという彼の願望にも合致する。

 

習近平の悲願は毛沢東も成しえなかった台湾侵攻による中国統一だ。彼はこれを成し遂げることで自分が毛沢東を超えた存在になれると考えている。習近平政権は成立直後から一貫して、最も重要な目標は台湾統一であると掲げてきた。また、2期10年制の規定を変える際、「台湾統一の準備には10年では足りない。私は必ず台湾を統一する。」と突きつけ規定改定に反対する長老ら重鎮達の意見を封じた。最も重要なのは台湾統一なのだから、その目的遂行のための行動に反対するのは、反共産党、反国家、人民の敵であるという理屈だ。

アメリカの工作機関は当時もちろんこういった情報をつかんでおり、習近平は3期目の期間中に必ず台湾侵攻に動くと考え「中国は2026年までに台湾に侵攻するだろう」と発表することで中国を牽制した。

 

しかし今回の共産党大会で発表された人事により、習近平の暴走を止める人が完全にいなくなった。これは台湾侵攻を阻害する国内の要因がなくなったことになる。暗殺や事故などにより習近平が突然死なない限り、必ず台湾侵攻が始まる。そして何よりも今月、共産党大会が始まる直前にアメリカは中国のウイグル人虐殺迫害への制裁として、半導体の完全な輸出禁止規制を発表した。中国のサイレントインベージョンによって上層部が軒並み取り込まれている日本のマスコミは中国に関する報道を抑制しており、中国に不利なニュースをあまり大きく扱わないため日本国内ではあまり話題になっていないが、中国企業や中国国内の外資企業はこれによって半導体自体の生産はもちろん、半導体を使った製品が生産できないことになった。これは今までの規制とはわけが違う。今後まともな工業製品が生産不能になるということは、経済的なダメージが計り知れないだけではなく、先進的な兵器の生産が一切できなくなるというのが大きい。早い段階で台湾に侵攻しなければ、今後中国の兵器は使い物にならなくなってしまう。アメリカが敢えて中国を追い詰め、習近平がすぐにでも動かなくてはならない状態にしたとも言える。

 

侵攻する場合、いきなりミサイルを撃ち込んだり、ドローンや攻撃機でいきなり侵攻を開始するような事態は想定しにくい。なんらかの偶発的な事態やウクライナ情勢によってはそのようなことももちろん可能性はあるけど、なによりも中国軍には揚陸艦が不足しているため電撃作戦による台北占拠といった戦術はとりにくいためだ。ではどのような展開が想定されるか考えてみた。

 

現実的に最も可能性が高いのは、まずは台湾を取り囲む形での海上封鎖と思う。船や航空機が台湾へ入れないようにして兵糧攻めのような状態にし、核攻撃も言及した強い脅しで台湾へ降伏を迫る。実際に発砲や攻撃は行っていないギリギリ軍事的行動とは言いにくい難しい状態である上、民間の漁船と偽った船舶も多数使うため、台湾やアメリカは力でこれを排除しにくい状態。無理に排除しようとすれば軍事的衝突となり本格的な戦争が始まってしまう。そしてこの動きに合わせて、台湾に長年かけて浸透させてきた工作員達が一斉に反戦運動を開始する。人命尊重と無抵抗での降伏を主張しデモ活動を行い、マスコミやSNSを駆使して台湾内の世論を揺さぶるだろう。日本のリベラル系・左翼系活動家や親中インフルエンサーもこれに連動して運動を開始すると思う。マスコミも連日そちら側の運動や意見ばかりを取り上げ日本の世論は寧ろ降伏論の方に傾く可能性も高い。しかし台湾人民の大半は香港が蹂躙された経緯や民主活動家の行く末、今の暗黒状態をずっと明日の我が身として見てきたため、世論が降伏に傾く可能性は低い。日本に蔓延する平和ボケによるリベラル思考や、世界史的にみて占領された側にどのような悲劇が待っているかが想像できないという感覚は国際的にはかなり異質なものだと認識しなければならない。アメリカの占領政策が成功したため日本人にそういう悲劇的経験が無いためだ。

 

そしてこの混乱は、台湾が降伏するか、中国が諦めて撤退するか、降伏勧告への回答に期日をつけるか、しびれを切らして攻撃を開始するまで続く。台湾は降伏しないため、いつかは必ず全面的な戦闘になる。戦争が開始されたら、中国は容赦なく台湾、続いて日本各地にミサイルを撃ち込む。こう言うと「なんで日本に?」という人もいるだろう。日本人の感覚ではそうだけど、中国人の感覚はそうではない。日本は最初から敵国として想定されている。台湾を取りにいくということは同時に日本にある米軍基地・自衛隊基地は全て攻撃対象であるし、尖閣諸島はもちろん、状況次第では沖縄も取りに来る。何よりも東京にだけミサイルを撃ち込めば日本の政治・経済・情報などの全てが簡単に壊滅状態にできる。そしてそうなれば同時に北朝鮮、下手したらイランも動き世界大戦に発展する可能性さえもあるし、既に疲弊しきっているロシアでさえ、この時の情勢によっては北海道へ侵攻を開始する可能性が無いとは言えない。ちなみにこの場合は虐げられているアイヌ民族の救出解放という名目を掲げてくるだろう。ロシアはそのための準備をしてきたし、ロシアと中国の工作によってアイヌが土地を奪われ虐げられてきたかのような宣伝活動が今まで行われてきた。昨年北海道のアイヌ活動家からの手紙がプーチンの元に届いたと発表があった。内容は「私達アイヌは日本人から酷い扱いを受けている。助けに来てください」というようなもの。既にロシアにとっての口実作りは完了しているのだ。

 

平和ぼけの日本人には想像がつかないかもしれないが、台湾有事の際は必ず日本も巻き込まれる。それも直接的に。私達は備えなければいけない。最悪の状況を想定してそれに備え、最終的に「何もなかったね」だったらいいではないか。話し合いでなんとかしよう、対抗策を練ることで相手を刺激してしまうから止めておこうといったお花畑なことで思考停止せず、まずは最悪な状況で何ができるかを考え準備をしていかなければいけない。それも早急に。