世渡り上手と商売上手 | DNA of DeNA

世渡り上手と商売上手

もしも来世などと言うものがあるとしたらやってみたいと思う職業がいくつかあるが、タクシー運転手になって「今日の珍客」というブログを書き続けるのも良いと思っている。


しかしそうなったらなってで、あーあ、客の立場で書いてみたいなぁ、なんてないものねだりをするのは間違いないので、今世のうちに客から見た珍タクシーをなるべく書いておこうと思う。


先週日曜日、会議が長引いて夜半過ぎにタクシーを拾った。下り坂の度に運転手さんが「あー俺の人生も下り坂だよ」と繰り返す。「ほら、まただよ。女房にも言われてね、アンタの人生下り坂ね、なんてさ」


初台から上原は坂が多い。土地を知り尽くしている私は運転手さんが気の毒になり、大回りして上り坂のある道を行ってもらった。「ほら、運転手さん!上り坂ですよ、捨てたもんじゃないですね、あたしたち!」


「よっしゃ~、上り坂だっ、捨てたもんじゃないね!」と運転手さんもアクセルを景気良く踏んだ。


「お客さん世渡り上手だね」


「えっ?アタシ新潟出身なんですよ、真逆です」


「いやいや、世渡り上手だよ、そりゃ間違いない、いいことだよ」


「それ褒め言葉としては微妙ですね」


「いやいや、褒めてんだよ」


しばらく本件につき問答が繰り返されたあと、運転手さんは言った。







「でもね、お客さん、玉手箱だけは開けちゃぁいけないよ」






私は急に不気味になり、「た、玉手箱って、現実の世界ではいったいなんなんでしょうね」


「さあね、おっちゃんは知らないね。ただ、親切にして不幸になるなんて、変だろ?気をつけなきゃいけないよ」

と急に突き放したようなことを言う。


普通1400円の距離が大回りのせいで1800円を超えたが、占いまでしていただいて、となぜか生まれて初めて釣りはいらねーをやってしまった。2000円を渡し、「お釣り、結構です。。。気をつけます」と神妙に言って降りることになった。


世渡り上手のはるか上を行く商売上手か?


一応、亀を助けた場合は竜宮城で図に乗らないように気をつけて生きることにした。