ア行の時代
M原率いる人事グループに
苗字別採用を提案することにした。
DeNAは多くのワタナベ姓により組成され発展して来た。
もともとは一緒に会社を作ったワタナベが、自分より賢いやつを
連れて来いと言ったら兄貴を連れてきて、監査役が足りない、
となったら父親を連れて来て、皆同じ印鑑でいいから便利とか
言っていたことから始まった。
それからワタナベ採用に勢いがつき、一時は25人くらいのワタナベ
がいて、なべプロなどと自称していた。
しかし先日ある雑誌の編集部の友人と話していて盛り上がり、
これからはア行を重点的に採用してはどうかという話になった。
アイカワとかアイザワとか。五十音順でもアルファベットでも
最前列の彼ら彼女らは、常に何事も最初にあてられる。十分に
思案する時間などなく、突然身に降りかかった難題、それは
自己紹介だったり質問への回答だったり、運動や作業だったり、
ありとあらゆる類のものだが、それらを全員の注目を浴びながら、
圧倒的な準備不足の中、なんとかまともに切り抜けて来た連中だ。
そして次の難題がいつ降りかかってくるのか、常にその
プレッシャーと戦いながらまともな大人になって来た。
リーダーシップの重要な要素を後天的に身につけている。
そこで分析してみると、わが社のMVP受賞者には確かにア行に
集中している。
アカガワ、アビル、イイオ、イナノベ、ウチムラ、ウチヤマ、オガタ、
オカザキ
やっぱりね。
やぱア行でしょ。
ワタナベが悪いわけではない。もうヤ行とかワ行になると、すべて
前に言われていて、よほど変わったことを言ったりしたりしないと
目立たないという宿命の中、必死で自己主張して来たわけだ。彼らには
ひと工夫のクセがついてる。ひと工夫もふた工夫もして待ち構えていると、
自分の順番が回ってくる前に先生が飽きてしまって打ち切られるという
臥薪嘗胆も味わってきた。わが社の発展はそんなワタナベで
支えられてきた。
これまではひと工夫で生き残ってきたDeNA。これからは
先陣を行くリーダーシップ。つまりア行の時代なのだ。
ずっと何事も準備不足で走らされてきたアイカワ君たちが
初めてトクをすることになる。
最近結婚してア行になった、などという「にわかア行」に
ごまかされないよう、筋金入りのア行を採用するために、
履歴書にア行歴○年という欄を設けるのが肝要だ。
体育会で主将のやつとかを集めまくっている大企業や、
なんだかんだ言って学歴で採用していたり、ヘンなテストをやって
高得点の学生に内定を出したりしている会社は多いが
苗字という切り口はないね。
新規軸だ。