「ホーボーの歌(ことば)、ビートの言葉(うた)」 | イベント 「NAKED SONGS」 blog

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ビートジェレネーションの詩人たちや音楽ライターでミュージシャンの故・下村誠をリスペクトするきっかけではじめた ミュージシャンによるポエトリーリーディング&弾き語り 中心の音楽イベント。その情報を伝えるブログ。

イベント立ち上げの時から助けていただいていて朗読出演もされている村田さんに今回のイベントについて寄稿をお願いしました。
文才のない自分の気持ちを代弁していただいたような素敵な文章です。
是非みなさんに読んでいただきたいです。



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「ホーボーの歌(ことば)、ビートの言葉(うた)」
 
ずっと「戦後」を生きていると思っていたら、あっという間に「戦前」になってしまった雰囲気の昨今。以前、テレビを見ていたらあるアナウンサーが「アベノミクスに影響が出るといけないのでこうした発言は控えていたのですが・・・・・」と前置きしてから話し始めるのを見て、話の内容そのものよりその前置きの方に驚かされた事がある。つまり他の何よりも経済が優先されるムードの中で、ある種の「言葉・話題」はすでに自粛されていて、その動きは日々加速しているという事だ。
 
この正月、紅白で桑田佳祐がヒトラー髭を付けて「ピースとハイライト」を歌ったら、SNS上で物議になって、 さらに彼の「アビーロード」の政権批判・全曲替え歌「ソラミミ アビーロード(アベーロード)」の動画サイトのコメントには見たくもない文字が並んでいたりする。芸人の一世一代のジョークを「粋」と笑って過ごす余裕もないのか。
 
去年、首相の「集団的自衛権行使容認」の記者会見直後に行われた「N A K E D S O N G S Vol.6」で中川五郎さんが読んだC・ブコワスキーの「シャワー」と、最後に歌われた「 トーキング烏山神社の椎の木ブルース」が忘れられない。
 
「シャワー」は男性器・女性器の単語そのものズバリが連発された詩だが、最後まで聞けば分かる通りこれは美しい「愛のうた」だ。時期が時期だっただけに僕は大島渚の映画「愛のコリーダ」で阿部定と散々情事を交わした後の主人公が「2・26事件」の将校の隊列とすれ違うシーンを思い出した。「個人」と「国家」。故下村誠は自著の中で「ボブ・ディランのプロテストソングはすべて世界に対するラブソング」と書いたが、逆もしかり。美しい愛のうたが本質的にプロテストソングなのだと、あんなに肌身に染みて実感された瞬間は無かった。不覚にも涙が出そうになった。
 そして「 トーキング烏山神社の椎の木ブルース」。実際に起きた事件を取り上げたトーキングブルースだが、あの頃、あの中で語られる朝鮮人労働者を乗せたトラックと同じようなトラックで毎日甲州街道を烏山!に向けて走っていたので、悪夢が眼前に展開されるようで震えがきた。大きな自然災害の後で世の中がどんな空気になっていくのか。関東大震災の後の悲劇と3・11後のヘイトスピーチの今が重なった。
 
今回の「N A K E D S O N G S Vol.8」はVol.6の時と同じ中川五郎さんと風二吹カレテの再演。オープニングアクトは詩人・三木悠莉の朗読。故下村誠の意志を継ぐとして、またアメリカ50sの「ビートの精神」を合言葉に始まった「N A K E D S O N G S 」も今回で8回目を数える。Vol.6の時、五郎さんは弾き語りだったが今回はバンドTo tell the truthを率いての登場。CROSSの風二吹カレテとどんなステージを見せてくれるのか今から楽しみだ。そして初めて見る三木悠莉の朗読も。
 
先日、遅ればせながらやっとウォルター・サレス監督の映画「オン・ザ・ロード」を見て、前半、季節労働者(オーキー)たちが乗るトラックの荷台にサル・パラダイスがヒッチハイクするシーンを見、ジャック・ケルアックやニール・キャサディがウディ・ガスリーと相乗りになることは無かったのか?とそんな妄想を抱いた。時代が違うか。なんにしても「ビート」出現以前にはその先輩のようなホーボー達がいて、その様は今回のフォークシンガー五郎さんとビートの精神を標榜するロッカーや詩人ようでもある。そう言えばこの「N A K E D S O N G S 」イヴェントの前身である下村さん主催のイヴェント名は「Bound for gloly(ウディ・ガスリーの著書名)」だったっけ。この列車は栄光に向かって走っていてビートはホーボーの歌(ことば)を聞き、ホーボーはビートの言葉(うた)を聞く。そしてそれは決して"ソラミミ"ではない。
 
  今、リツィートやシェアじゃない、生の言葉に耳を傾けたい。









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N A K E D S O N G S vol.8
-BURN,BURN,BURN -



2015/01/31 (Sat)
18:00 open 18:30 start

adv ¥3,000 +Drink / door ¥3,500 +Drink
ご予約はclub Doctor 又はm3sami.wakamatsu@gmail.com まで

荻窪club Doctor
東京都杉並区上荻 1-16-10 ローレルビルB1
tel 03-3392-1877 doctor@khaki.plala.or.jp

出演

To Tell The Truth
(中川五郎/中野督夫/永原元/寺岡信芳)

風ニ吹カレテ
(CROSS/KUBOTA/LINA)

ゲスト:篠原太郎 ( THE BRICK'S TONE )

オープニングアクト(リーディング):三木悠莉