元厚労次官殺傷事件に蘇る　民主党・石井紘基議員刺殺事件の闇

事件発生直後に「テロ」と断定したかのような報道をしたかと思ったら、今度はどのマスコミも容疑者の異常人格が事件の要因であるかのような方向に流れている。昨日の某テレビの報道系番組に出演した元警察関係者などは「テレビで最初に顔を見た時、あ、コイツが犯人に決まっていると直感した！」と、過去の経歴の中に冤罪をでっち上げた可能性をも示唆する始末。「こういう面構えの奴はこういう犯行に及ぶモンですよ」って、こんなマンガ脳でも務まるのだから警察のレベルが知れるというものだ。読売新聞宛に送ったメールの中で「日本警察の捜査能力に疑問」と小泉容疑者は書いているが、小泉容疑者がその理由に指摘している事柄は全て「（容疑者自首前まで）警察はこれらの点を非常に重要視しています」とマスコミが報じたもの。私が見聞きする限り、マスコミも、自称有識者も、何だかよくわからいコメンテーターも、これらの点において「警察の情報は何だったのか」と言及する方々は殆どいない。右へ倣えでやっているのは先にも書いたように、小泉容疑者の異常人格を印象付けるための証言ビデオを繰り返し垂れ流すこと。４６歳の大人の犯行であるのに、実家にいる容疑者の年老いた父親を執拗に取材対象とし、「息子から届いている筈の手紙をどうして見せないのか！」と迫るマスコミも異常ではないのか。

今日のTBS「朝ズバ」では容疑者が犯行動機とした保健所への恨みについて取り上げ、ボードを示しながら「保健所の業務は国の行政からは独立しており、厚労省を恨むのは間違っている」と時間を割く有様。いくら問題多き「朝ズバ」とはいえ、元警察関係の田宮氏まで出演していながら情けないやら恥ずかしいやら・・・・・。で、その田宮氏の発言については昨日の記事でも取り上げたが、「捜査や報道に追い詰められ、逃げ切れないと思ったからではないか」とした容疑者出頭理由の一つが足跡について、各マスコミによってその表現に微妙な違いがあるのは何なのだろう。「靴底の模様が酷似しているという（朝日新聞）」があれば、「２足のスニーカーの靴底が両事件の現場の足跡と一致（読売新聞）」との断定記事もあったりして・・・・・。マスコミのキャラクターの差だけでは片付けられないものを感じるのだが、考え過ぎだろうか。東南アジア製のソールを使用し大量製造販売（月販数千足）されているスニーカーの足跡が、こんな短時間で断定出来るのか。「足跡という決定的な証拠を残したので逃げられないと観念したのだろう」と田宮氏は言うが、決定的な証拠を残さないために大量製造販売されているスニーカーを履いていたのではないか。また、これまで重要とされていた「（ミニバンの）スライドドアの開閉する音を聞いた」、「黒い大型セダンを見た」、「怪しい２人組みの男を見た」との証言は何だったのか。マスコミが一糸乱れずこれらの証言を「ああ勘違い」として闇に葬り、「異常人格者の小泉容疑者による単独犯行」とする洗脳報道で思い出すのはあの事件だ。

2002年10月25日。民主党の石井紘基議員が、自宅駐車場で指定暴力団山口組系の右翼団体『守皇塾』（構成員は本人一人のみ）代表・伊藤白水に柳刃包丁で刺殺された。伊藤白水は「家賃の工面を断られたため、仕返しでやった」と供述したが、石井氏が国会議員や官僚の腐敗を徹底追及していたことから、暗殺されたとみる識者は多い。殺害される前、石井議員が知人に「これを発表したら自民党はおろか、日本全体がひっくり返るかもしれない・・・」と語っていたのが、民主党の長妻議員をはじめとした方々が白日の下に曝した現在の年金問題についてだ。これを記した石井議員著の『日本が自滅する日―官制経済体制が国民のお金を食い尽くす (単行本)』は絶版になっており、中古でも高値で取引されていることからも関心の高さが窺える。そして今回の事件。トヨタの奥田氏が「厚労行政を批判するマスコミに報復してやろか！」と恐喝発言をし、その後間もなく起きた元厚労次官殺傷事件後には自民党の津島元厚生相が「厚労省と社保庁批判を繰り返すマスコミが悪い！」と公言する見事な連携プレー。あまりにも出来過ぎているとは思わないか。外国なら漢字が読めなくても大丈夫と思ったか、わざわざペルーでまで行って「・・・・・真相究明を急がせるとともに、暴力には断固屈しないことをあらためて表明する」と、マンガ脳のチンピラが読む原稿の一節も腑に落ちない。「真相究明を急がせる」とはどういう意味か。そうしなければならない理由でもあるのか。この国において、「ペンは剣よりも強し」のジャーナリズムが復活することはもう永遠に無いのか。

民主党故・衆議院議員石井紘基
http://www014.upp.so-net.ne.jp/ISHIIKOKI/

第12回ＦＮＳドキュメンタリー大賞ノミネート作品
「『日本病』の正体～政治家　石井紘基の見た風景～」　（フジテレビ制作）
http://www.fujitv.co.jp/b_hp/fnsaward/backnumber/12th/03-226.html