指揮権発動:検察が国際関係への影響について判断できるというなら、指揮権発動の考え方は? | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

指揮権発動:検察が国際関係への影響について判断できるというなら、指揮権発動の考え方は?

秘書です。

指揮権発動についてです。

素朴な疑問として漁船船長釈放の際、刑事訴訟法第248条「犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる」ということだったのですが、法務大臣は「犯罪後の情況」判断のうち、国際関係への影響についての判断は違うじゃないかな、ちょっと待ったということで、法務大臣は検察庁法第14条に基づいて検事総長を指揮することはできなかったのか?


検察庁法第14条 法務大臣は、第4条及び第6条に規定する検察官の事務に関し、検察官を一般に指揮監督することができる。但し、個々の事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができる。

→船長釈放以後の指揮権発動についての国会論戦を振り返ってみましょう。

衆・外務委員会平成22年10月27日

○秋葉委員 相手がある話でもありますし、ある意味でのセンシティブな問題もあろうかと思いますけれども、検察が最終的には決めるとはいいましても、証拠物の第一義的な保管者は海上保安庁、いわば国交省、その大臣の立場にいられたわけでありますので、いろいろな意味での影響力もあるわけでございますから、しっかりと国民にこれを公開していくということが大事だというふうに思っておりますので、時宜を見ながら責任ある対応を求めておきたいと存じます。
 さて、今回、大臣に話を伺っても総理に話を伺っても、あくまでも検察庁が判断をして処分保留で釈放したんだということが繰り返し述べられてきたわけでございますが、民主党政権の特徴というのは、やはり政治主導で官僚に丸投げせずに、政治主導というのはすなわち政治家が責任をとって対応していくということでありますから、私は、今回のようなケースほど、むしろ官僚に丸投げせずに政治家がリーダーシップを発揮して指示していくのにふさわしい事案ではなかったのかなというふうに思っているんですね
 そういう文脈でいいますと、例えば法務大臣なども指揮権発動のトラウマにとらわれることなく大いに、今回、そういった事案にふさわしいテーマではなかったのかな、こう私は思っているわけでございます
 そういう文脈の中で、改めて前原大臣にお伺いしたいのは、政治介入がなかったということではあるんですけれども、政治家が検察庁との協議の中でもっとリーダーシップを発揮してこれに積極的にかかわっていくべきではなかったのかという問いに対しては、どんな問題意識を持っておられるか、伺っておきたいと思います。

○前原国務大臣 むしろ逆で、それについては関与すべきではないというのが司法の独立だと私は思っております。
 何度も国会で答弁をさせていただいておりますけれども、起きた事案によって、いわゆる刑事的な判断をするのはあくまでも司法手続でやるわけですが、そのことによって外交問題になったり、あるいは戦争になったことなんというのもあるわけですね。それについては政治がまさに責任を持って対応していくということなんだと私は思っております

○秋葉委員 逆のお立場だというお話がありましたけれども、私は、やはり今回の検察庁の判断というものが明らかに刑訴法の二百四十八条のいわゆる起訴便宜主義の解釈を拡大しているんじゃないかと思わざるを得ないんですね。
 私も改めて何十年かぶりでコンメンタールなんかをひもといてみたんですけれども、やはり犯罪後の状況に関する事項の中に外交問題が含まれているという解釈は、どうしても無理がある。どちらかというと、いわゆる被疑者を取り巻く環境の変化ということが専らでございまして、その意味では検察庁の越権行為だというような見方も成り立つわけですね。
 だからこそ、まさに検察庁ののりを越えている問題だからこそ、そこに政治家が責任をとるという形で主体的にかかわっていくべきではなかったのかという問題意識で私は申し上げているんですね。改めて、大臣、どうなんでしょうか

○前原国務大臣 同じ答弁になって恐縮でありますけれども、その点については検察が法と証拠に基づいて判断をするということで、その案件が起きたことによってさまざまな外交問題が起きたことについては、しっかりと、まさに政治主導で解決をしていくということだと思います。

○秋葉委員 では、これ以上申し上げても同じ考えがあれだと思いますけれども、政治主導とは何かというのを考えたときに、やはりそれは責任をとる、そして官僚に丸投げせずに進んでやっていくということが大事だと私は思います。
 そういう文脈で、やはり今回のようなケースでの指揮権発動というのは最もふさわしいと私は思っているんですけれども、これまで事実関係として指揮権発動がなされた例というのは、一九五四年のいわゆる造船疑獄のとき一例だけなのかどうか、確認しておきたいと思います

○甲斐政府参考人 お尋ねのような例はその件だけだというふうに承知をいたしております。

○秋葉委員 仙谷官房長官が、この指揮権発動のあり方についても、やはりいろいろなケースの適用も含めて研究していかなきゃいけないというようなコメントを発表していますけれども、それは、例えば法務省とかどこかの中でそういう検討委員会を立ち上げて、何かいろいろ事例研究していくというような段取りになっているんでしょうか。

○甲斐政府参考人 現在のところ、そういう動きにはなっておりません。

→秋葉議員おっしゃる通り、指揮権発動にトラウマになってはいけないのではないか?特に、刑事訴訟法第248条「犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる」のうち「犯罪後の情況」について国際関係への影響についての判断ができるということであれば、その判断が間違っていて外交問題になってから政治の役割というのはおかしい。検察の判断が外交問題になるおそれがあれば未然に防止するために、検察庁法第14条で指揮権発動すべきなのでは?

衆・法務委員会平成22年10月22日

○平沢委員 では、大臣にお聞きしますけれども、指揮権発動というのがあります。指揮権発動は昭和二十九年ですか、与党が自分のところの幹事長が強制捜査になるのを阻止するために使ったものだから、非常に悪い印象を与えていますけれども、民主主義のプロセスとしては、検察の暴走を抑えるために、選挙で選ばれた、あるいは選挙で選ばれた内閣の一員である法務大臣がそれなりの権限を行使する、そして、検察の暴走にストップをかける、これは決して悪いことじゃないんですよ。これがなかったら、検察は何でもできるということになっちゃいますよ。だから、私は、悪いイメージがあるけれども、適正にブレーキをかけて、後は選挙で選ばれた政治家が国民の審判を問えばいいわけだから、これを検察、捜査当局に、こんな判断をさせていいんですかということを聞いているわけですよ。
 だから、指揮権発動があったっていいじゃないですか。あとは、国民の皆さんに、日中関係は大事なんです、このままいったら大変なことになります、検察の判断を超えています、だから政治家が判断しますと言ったらいいじゃないですか。実際そのとおりだったんでしょう。恐らく、検察はその意を酌んでやったんでしょう、これは。ダイレクトかインダイレクトかは別にして。
 だから、そこは大臣が、本来はそうあるべきだったと言われたらいいじゃないですか。これを、検察に責任をおっかぶせる、検察に責任転嫁させる。一那覇地検に日中関係なんて考えられるはずがないじゃないですか。捜査に日中関係を持ってくるなんということは、専門家でもない検事がやるなんということは、越権行為も甚だしいと思いますよ。検察はあくまでも、六法全書を見て、法律と証拠に基づいてやればいいんですよ。
 だから、何度も言いますけれども、こういうことを言ったのはおかしくないですかということを聞いているんですよ。大臣に聞きたい。大臣の見解。

○柳田国務大臣 約一月ぐらい、るるいろいろなところでお話をしていますので、総合的に判断した結果だというのは、もう私の主張は御理解をしていただいているものと。それが正しいか間違いかは別問題ですが。
 先ほど平沢委員がおっしゃっていたように、この検察の、地検の判断が間違いだったら、指揮権を発動すればいいじゃないかとおっしゃるわけですね。私は、間違いじゃない、わかったという認識でそのまんましただけなんです。指揮権発動ということについていろいろ意見があるんだったら、指揮権について議論をするのはやぶさかではありませんけれども、私は、指揮権というのはあくまでも慎重にやるべきだ、そういう思いでやっています。

→国際情勢の判断については外務大臣に確認すべきだったのでは?

参・決算委員会 平成22年10月18日

国務大臣(仙谷由人君) 川口先生にもう言葉を返すようで失礼なんでありますが、逮捕したことが、逮捕手続に海上保安庁が入ることが間違っていたのか。あるいは、勾留請求をすることをむしろ政治の立場からやめろと、従前の自民党政権下のように、勾留請求をしないで釈放せよという政治的な判断を政治の側から……(発言する者あり)いいですか、政治の側からそういう政治的な判断を、言わば指揮権発動に似た行為をすべきだったと、こうおっしゃるのか
 さらに、勾留請求後、政治の立場で判断をして指揮権を発動して釈放せよということをやらなかったからあなたは政治的に見識がないとおっしゃっているのか。あるいは、勾留延長をさせたことがまずいと言っているのか。あるいは、釈放を検察当局がしたことについて、検察当局ではなくて政治の立場から指揮権を発動して、検察が何を言おうと釈放させなかったということが政治が責任を取ってないとおっしゃっているのか
 私は、やっぱり自民党の、川口先生も、自分のポジションを決めてから私を批判していただかなければ分からないということであります

→先日の塩崎議員の質問にも、指揮権発動について声を荒げて、党としての見解をまとめてこい、個人の意見で聞くな、という趣旨で答弁を拒否していましたね。こんなことを政府側がいっていいのか。国会議員の質問権の制約ではないですか?どの質問が個人的意見で聞いてよくて、どの意見が党の意見をまとめなければならない質問なのか、誰が判断するのか。答弁側の政府が判断するのか?いちいち党議決定をしなければ質問ができないのか?あるいは自民党がこの件で意見が割れているとでも思っているのか?

衆・予算委員会平成22年10月12日

○石原(伸)委員 その答弁が問題だということを私は言っているわけであります。
 外交案件を考慮して検察が判断したら、おまえ、どういうことだとしかるのが法務大臣じゃないんですか。越えてはならないところを越えたわけですよ。
 そして、今と同じような答弁を繰り返しているならば、検察の越権行為を座視し、さらに、あろうことか、了とした。はい、わかりましたと今おっしゃった。私は、こんな職務怠慢の法務大臣は罷免すべきだと思いますよ。総理のお考えを聞かせてください。

○柳田国務大臣 先ほども触れましたとおり、第二百四十八条にのっとって地検は粛々と判断を下したものと私は思っております。
 なお、その報告を聞いて、私は指揮権を発動しなかったというのが事実でございます。

○菅内閣総理大臣 私は、今の石原さんの一連の議論を聞いていて、必ずしも私の中ではよく流れがわからないんですね。つまりは、政治が判断しろと。しかし、例えば逮捕するしないというのを直接、総理がしろとかするなとかという、そこまで判断をすべきだというところまで言われているのか。
 基本的には、いろんな判断がいろんな段階であると思いますが、少なくとも海保も一つの捜査機関でありますので、そこでの判断があり、その後は検察の判断があり、釈放についても、それは例外的に指揮権発動という規定が法律にあることは私も承知しておりますけれども、今、法務大臣が言われたように、そうではなくて、検察官の判断の中には、先ほど私が多少詳しく申し上げたら、何か役人の文書を読んでいると言われましたが、詳しく言わなければいけないときには間違っては困りますので、つまりは、こういう初犯であったとか、いろんなことの要素に加えて、そうした総合的な判断ができるというふうになっているわけでありますから、そういう判断のもとに検察当局が下した判断に対して、それを法務大臣として、そのことを了としたといいましょうか、認めたということは、私は、法務大臣としての判断は全く正しかった、このように思っております。

○石原(伸)委員 それは違います。
 一点だけ言わせていただくならば、検察が外交判断をするということが了とされるのか了とされないのかということで、私たちは、検察にはそんな権限がないと。その権限がない者が判断することを了とした以上、私は問題じゃないかという指摘をさせていただいているわけであります
 これは、もう言った言わないになりますので、もし法務大臣の腹を切らせることが総理にできないなら、我々が介錯してあげても結構でございます。

→外交の影響についても検察が判断できるという判断の上に立つのなら、外交上マイナスの影響が出ないように必要があれば指揮権を発動させるべきということになるのでは?


参・本会議 平成22年10月07日

○小坂憲次君 私は、自由民主党を代表し、菅内閣総理大臣の所信表明演説に対し、質問をいたします。
・・・
中国漁船の船長の釈放に際し那覇地検の次席検事は、我が国国民への影響や今後の日中関係を考慮すると、これ以上身柄を拘束して捜査を続けることは相当ではないと判断したとその理由を説明しました。
 法と証拠にのみ基づいて事案を判断すべき検察が日中関係を考慮するのは、検察の独善かあるいは政府による事実上の指揮権発動だと思いますが、総理、法務大臣及び官房長官の見解をお尋ねします。
 この問題に関し、菅総理は、我が国海上保安庁の巡視船に体当たりする模様をとらえたビデオは見ていないと衆議院予算委員会で答弁されておられます。危機対応の責任者としては無責任極まりない発言であり、杞憂とは存じますが、よもや、まだ見ていないとおっしゃることはないことを確認させていただきたいと思います。


○内閣総理大臣(菅直人君)・・・
被疑者釈放の方針決定の適否についての御質問をいただきました。
 本件の被疑者の釈放については、検察当局が、被害が軽微であること、犯行の計画性がないこと、初犯であることなどの事件の性質に加え、我が国国民への影響、今後の日中関係などその他の諸般の事情等を総合的に考慮した上で、国内法に基づいて粛々と判断を行われた結果だと承知をいたしております。

○国務大臣(仙谷由人君) 小坂憲次議員の質問にお答えをいたしたいと存じます。
 尖閣諸島周辺領海内での衝突事件についての御質問でございました。
 今回の決定は、検察が事件の性質等を総合的に考慮した上で、国内法に基づき、粛々と捜査をし、判断をしたものと承知をいたしております。
 また、今後、仮に今回と同様の事件が発生した場合には、その具体的な状況を踏まえた上で、国内法に基づいて適切に対応していく考えでございます。
 今回、中国側が一方的に事態をエスカレートをさせたわけでありますが、このことは誠に残念だったというふうに考えております。こうした我が国の対応が国際社会に、あるいは中国に対して誤ったメッセージを与えるとの御指摘は全く当たらないと考えております。
 失礼しました。もう一点、被疑者釈放の方針決定の適否についての御質問をいただきました。
 本件につきましては、検察当局が事件の性質等を総合的に考慮した上で、国内法に基づいて粛々と判断を行った結果と、先ほど申し上げたとおり、そういうふうに承知しております。検察当局の判断は適切であると認識をしております。
 以上であります。

○国務大臣(柳田稔君) 那覇地方検察庁の判断についてお尋ねがありました。
 那覇地方検察庁は、被疑者が操船していた漁船を巡視船に向けて左に急転舵して故意に同漁船を巡視船に衝突させたことは、収集した証拠によっても明白であります。外務省職員からの説明の聴取を含め、捜査の結果、被害の程度、犯行の計画性の有無、我が国における前科の有無に加えて、引き続き被疑者の身柄を勾留したまま捜査を継続した場合の我が国国民への影響や今後の日中関係などの事情を考慮し、これ以上被疑者の身柄を拘束して継続して捜査を続けることは相当でないと判断して、被疑者の釈放を決定したものと承知いたしております。
 したがって、検察当局においては、法と証拠に基づき適切に対処したものと承知いたしております。

○国務大臣(前原誠司君) 尖閣諸島周辺の領海内での衝突事件に関する立場についての御質問がございました。
 今般の事件につきましては、中国漁船による公務執行妨害事件として、我が国法令に基づき厳正かつ粛々と対応するのは当然でございます。
 そもそも尖閣諸島は我が国固有の領土でありまして、解決すべき領有権の問題は存在しておりません。今般、国内法に基づき中国漁船船長を逮捕し、司法手続にのっとって処理をされました。
 こうした立場は当初から一貫しておりまして、よって、今般の事件に関する言動が変わったとの御指摘は当たりません。


→「今後の日中関係などの事情を考慮」の当否を、なぜ、政治が検討しないのか?