仮説的分析レポート:官邸-民主党外交「連戦・連敗」の深層・底流 | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

仮説的分析レポート:官邸-民主党外交「連戦・連敗」の深層・底流

秘書です。

なんかおかしい。

漁船衝突問題に一言もふれないASEM首脳会合での菅総理演説。

日本側の中国語通訳不在でフジタ社員解放にふれない日中首脳「交談」

何も変わっていないのに、雪解けムードのニュース報道。

しかし、この違和感の原因がわかりました。


今朝の新聞各紙から浮かび上がってきた官邸-民主党外交の「連戦・連敗」の深層・底流。

下記は、あくまでも仮説的分析レポートです。これが正しいかどうか、今後の国会審議と報道で明らかになるでしょう。


【分析レポート】

1.仮説

①中国は前原外相を警戒し、前原外相外し・外務省外しを図った。同時に、現在の外交当局の中国担当の戦略的思考派外しを図った。

②中国は官邸・民主党ルートを開設し、外務省外しに成功した。

③中国は国際社会での中国脅威論を鎮め、菅官邸は今日からの国会での野党攻勢を鎮めることに共通の利益をみる、いびつな戦略的互恵関係が成立した。これは、中国側が国益、日本側は政権の利益の互恵であるという点で、極めていびつです。


2.分析

(1)船長釈放決定と官邸

①10月6日日経新聞報道

外務省関係者は「仙谷長官がニュアンスを伝え、検察が忖度(そんたく)した。あうんの呼吸だ」と語る。

法務省幹部は「検察に判断を任せる」と首相官邸からサインがあったことを認める。「引き金を引いたのは検察だと言われる。中国がどんな反応をするか予想もつかない。そんな重みを検察は支えきれない」。仙谷長官の「無言の圧力」(政府筋)が検察当局の背中を押したとの見方がもっぱらだ。

→「無言の圧力」。無言だから証明できない、ということでいくのでしょうか。この段階から官邸外交が既にはじまっている、そして、中国語通訳なき日中首脳の「交談」へ・・・

(2)細野「秘密」訪中と官邸

①10月6日日経新聞

細野氏は中国の指名だとされる。小沢氏と菅首相両陣営に顔がきく議員は中国にとって願ってもない人物だ。

→中国側が細野氏を指名??本当ですか。相手国に指名された人を代表にすることのインプリケーションを官邸ー民主党は理解できているのでしょうか。

②10月6日朝日新聞

27日ASEM首脳会合出席決断

29日細野氏の北京入り(中国外務省の車が出迎え

→中国外務省の車ということは、中国外務省の招へいということを意味しています。自民党の経験でいえば党間外交は、まず、北京の大使館から最新の状況のブリーフィングを受けるものです。細野訪中の際には日本大使館とは交渉前に接点を持ったのでしょうか。大使館員は同席しているのでしょうか。中国側の党の役職者と会うときには、中国側は大使館員を排除することがあります。それでも同行させて二重外交を避けるのが国益のため。しかも、中国外務省や政府高官と会うときに大使館員を同席させないことはありえない話です。フジタ社員についての大使館情報なしに、そのまま中国外務省と協議にはいったのでしょうか?そして、秘密協議の内容は、大使館に伝えたのでしょうか。

仙谷氏は水面下で中国側に歩み寄りの気配を感じ日本外務省を通さず政治家の訪中による解決を探っていた。この協議では「ASEM首脳会合を利用した日中首脳の対話」が話し合われた。同じ日、菅首相は、細野氏の訪中をいぶかる周辺に電話で漏らしていた。「あれは仙谷がやっていることだから大丈夫なんだ」

→中国側の歩み寄りを感じたのは何の情報によるのでしょう。何を歩み寄ったのでしょう。謀略情報ではなかったのか。前原外相外し、外務省戦略的思考派外しの謀略情報に官邸が乗った危険性はないのか。そして、その延長線上に、日本側中国語通訳なき日中首脳「交談」が仕組まれたのではないのか!

30日、官邸のお墨付きを得た細野氏の動きを知り、日本外務省は慌てた。

→やはり、北京の日本大使館を外したのでしょう。

中国政府関係者が語る。「外交経験のない民主党政権を外交官がプロとして支えるべきだ。民主党政権を担う政治家には、こちらの声がちっとも届いていない」官邸と外務省に信頼関係がなく、中国側が外務省ルートの情報が官邸に伝わらないと感じたことが、細野氏ら政治ルートの活用につながった可能性もある。日中交流にかかわる民主党議員は「官邸には外務省が本音の情報を取れていないことへの不満がある。政治家を使い官邸が独自に動くことも良い」と指摘した。

→これが前原外しの謀略情報にひっかかったことを意味しないか。中国側は、菅首相の前原外相への警戒感といった情報を得ていたのかもしれません。また、あえて、外務省戦略的思考派には情報の兵糧攻めにして、官邸の不信感を醸成し、「前原ー外務省戦略的思考派外し」「中国が指名する政治家ルート開設」に成功したのかもしれません。

(3)日中首脳「交談」は誰のしかけか

①10月6日読売新聞

「仙谷氏主導で調整か」
「外務官僚 蚊帳の外」

「当初、予定になかった首脳会談は、仙谷官房長官の主導で設定されたとの見方が出ている。」
「細野氏は仙谷氏の知人のコンサルタントが仲介する形で、副首相級の戴秉国国務委員と会談し、ブリュッセルでの首脳会談開催につながったとの見方がでている。」

→この「知人のコンサルタント」は誰なんでしょう?この人と中国との人脈はどんな人脈で、どんなビジネスをしているのでしょうか?外務省を外している以上、このことはしっかり明らかにしなければなりません。重大な国家関係に、よもやビジネス的利益がからんではいけません。個人的利益を得てもいけないし、個人的利益が脅されてもいけません。謀略情報が流れていませんか。

「外務省の事務方は蚊帳の外に置かれていた。「日中首脳会談は行なわれない」と判断し、「事業仕分け」絡みで海外出張が制限されていることもあり、通訳は日中首脳会談に必ず同席する中国・モンゴル課長と中国語通訳を菅首相に同席させなかった。」

→事業仕分けを口実に?大阪城の内堀を喜んで埋めたようなものです。

②10月6日朝日新聞

実際は1日に極秘に行なわれた菅内閣の要である仙谷由人官房長官と、中国外交を統括する戴秉国国務委員との電話会談が、首脳会談へのレールを敷いていた。

尖閣諸島沖の漁船衝突事件でもつれた日中関係を修復するため、首相官邸は外務省ルートに頼らず、新たな政治家ルートの構築を探った

仙谷氏は・・・細野豪志前幹事長代理を密使として9月29日に北京へ派遣した。細野氏は戴氏との会談に成功し、ASEMでの首脳会談の可能性を協議。帰国後、首相官邸に報告し、仙谷氏と戴氏との電話会談につなげた。

→中国側のシナリオにのっていたのではないか・・・

(4)日中首脳「交談」の成果は

①10月6日朝日新聞

最後まで交渉が続いたのは、ASEM全体会合で行なう両首脳の演説内容だった。「尖閣諸島問題はお互いに直接言及しない」。それが首脳会談の実現に向けた水面下の確認事項だった
・・・今回首相に同行した福山哲郎官房副長官が現地で中国側と接触し、演説案に筆を入れ続けた。

→中国側はASEM全体会合で尖閣諸島についての非難を菅首相がしないことを日中首脳の「交談」の条件にしていた可能性はありませんか。ASEMでは中国首脳が国際会議で非難されるというリスクは深刻だったはず。ビデオ公開のリスクすらあったわけですから。このリスク回避の取引材料が、フジタ社員に触れない日中首脳「交談」の実現だったとしたら・・・あと、官邸-民主党外交でどんな「秘密合意」をしているのか?外務省が外されているから知る由もない。

4日夕、菅首相、温首相ともに尖閣諸島問題にはふれずにスピーチを終えた。双方はぎりぎりまで互いの姿勢を確かめ合い、その後2時間にわたってワーキングディナーを終えて両首脳が会談した。

→つまり、中国側は、多国間会合で菅首相が中国首脳のメンツをつぶすことをしない、ワーキングディナーでもいきなりビデオをもちだすようなことはしない、そのことを確認して、急きょ、「交談」に合意したということでしょう。

②10月6日読売新聞

「中国、尖閣を領土問題化」

中国の関係筋は「両首脳は事実上の『両論併記』で手を打った」と指摘。「領土問題は存在する」と内外にアピールした中国側の得点になったと見ている。・・・海での「既成事実」作りが加速する恐れもある。

③10月6日日経新聞

中国は表向きは関係改善の重要性を訴える一方、裏では日本の尖閣諸島の実効支配を薄めるため、既成事実を積み重ねる動きを続けている。

衝突事件後、中国政府は漁業監視船2隻を尖閣諸島近海に派遣。中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報の記者は漁業監視船に同乗し、海保巡視船との攻防を伝えている。

→今日の衆院本会議で、日中首脳「交談」でフジタ社員解放の話はしなかったことが明らかになっています。その上、多国間会合では尖閣の話をしていない。

→結局、10月6日東京新聞の見出しにあるように、日本は国会論戦前に「菅政権が」得点稼ぎを行い、中国は、「国家として」中国脅威論の鎮静化を行い、指導者のメンツを保った。

(5)今後の予測

→万一、官邸-民主党外交は、フジタ社員解放とビデオ公開を取り引き材料にしていたとしましょう。(取り引きをするなら、ASEMで多国間での非難をしないかわりに社員を解放せよ、だったんじゃないですか?ビデオ非公開の理由として、日本国内の菅政権批判をおそれるという説もありますが)

この取引は危険です。11月のAPEC首脳会議での中国最高指導者訪日まで、ビデオ公開を阻止しようとするかもしれないからです。

さらに、11月に日米軍事演習があるとすれば、APEC首脳会談以前も最中も最高指導者のメンツにかかわることとして、阻止しようとするかもしれません。

フジタ社員解放問題は、このような中国側の国益に必要な何かとの取引材料にするようなことがあってはいけません。

官邸ー民主党外交は、一体、どんな秘密合意をしているのかわかりません。



日本側が、国会運営の安定と支持率アップという、党利党略、個利個略の苦し紛れの観点に立ち、中国側が中長期的な国益の国家戦略から、いびつな戦略的互恵関係を結んでいたらどうでしょう。

そのうち、菅民主党政権は、中国側の小出しの取引材料に政権浮揚を依存しなければならなくなるでしょう。中国も、この官邸ー民主党外交が続くことが国益ですから、材料を小出しにして政権の存続を図るでしょう(菅政権が倒れたら、強硬路線の政権になることは明らかですから)。

しのびよる衛星国家化、傀儡政権化は阻止しなければなりません。おそるべき21世紀東アジア冊封体制への第一歩は阻止しなければなりません。

以上、日中首脳「交談」に外務省の中国語通訳がいないということは、とても深刻な深層・底流があるかもしれないという仮説的分析レポートでした。

明日からの国会審議で次第に真実が明らかになることでしょう。

もしも、以上の仮説が正しかった場合、一刻も早く、この国益を損ねる官邸-民主党外交の秘密合意路線を切断しなければなりません。国会での「問責」の緊急性はそこにあります。

「問責」は政治的パフォーマンスではありません。国益をかけた大問題です。

APEC首脳会談前にしっかりと「総括」しましょう!



■日中対話「手助けしたい」=尖閣問題、冷静な外交を-米高官
(2010/10/06-18:36)時事通信
 来日したキャンベル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)は6日、都内の米大使館で記者会見し、尖閣諸島近海で起きた漁船衝突事件による日中関係の緊張について、両国間の対話促進を「米国としても手助けしたい」との意向を示した。
 キャンベル氏は「現状でいちばん重要なのは冷静な外交だ」と強調した。ただ、「手助け」の具体策としては「(対話の)雰囲気を良くすることだ」と説明。「米国が直接的な役割を果たすのが適切だとは思わない」とし、日中間の仲介などには否定的な考えを明らかにした。
 一方、北朝鮮核問題の解決を目指す6カ国協議の再開に関連し、韓国に対する北朝鮮の最近の融和姿勢を一定程度評価したが、核放棄などで一層の行動を要求。権力継承の道筋が明確になった同国の今後の動きも含め「いかなる判断を下すのもまだ早い」と述べた。


米国の日本専門家のみなさま!

官邸-民主党外交は日米同盟を毀損する危険性があるのかどうか、よく分析してください。
日本国民が苛立ち、冷静でいられなくなる連戦連敗の深層・底流をしっかりと究明してください。
上記の官邸-民主党外交の仮説が正しければ、冷静でいる先に、いずれ、米国の国益にも影響することがあるかもしれません。