(日銀の判断)日本の青年の雇用不安に、日銀はどう責任を果たすのか | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

(日銀の判断)日本の青年の雇用不安に、日銀はどう責任を果たすのか


本日の日経社説の結論である「日銀も今週の金融政策決定会合での政策判断が問われる。政府は日銀に企業のCPを直接買い取る資金繰り支援策を求めたが、現時点で日銀は慎重だ。金融機関のCPを担保にとって資金供給する方式と違い、企業の倒産リスクを日銀が直接かぶることに抵抗感があるのはわかる。だが、緊急事態では必要に応じて非伝統的な政策発動もためらうべきではない。現在年0・3%の政策金利の引き下げも検討課題となろう。異常な景気悪化の局面ではスピードが大切である。

異常な景気に政策のスピード上げよ」を全面的に支持する。(下記、参照記事)


12月の日銀短観の大企業製造業のDI(業況判断指数)は、石油ショックの1975年2月と並ぶ過去2番目の下げ幅を記録し、マイナス24はITバブル崩壊後の2002年以来の低水準となった。


自動車のDIがマイナス46と、景気回復をけん引してきた日本の基幹産業が失速している。同紙に、日産のゴ―ン社長の「日本経済に3つの危機」が載っている。「日本経済は極めて危うい。このまま事態を放置すると、日本経済のけん引役だった自動車産業などの製造業が大きな打撃を被る」と危機感を表明した。第1は信用収縮による資金繰りの悪化、第2は深刻な需要減退、第3は急激な円高を上げた。1ドル90円前後の急激な円高が、仮に来年3月まで、続けば、自動車8社で今後3カ月間で更に2500億円の減益となるといわれる。この超円高対策は、企業努力の次元ではない。


そこで、問われるのがこの12月の日銀短観を受けての18,19日の日銀の決定会合である。その前に行われる米連邦準備制理事会(FRB)の15,16日の連邦公開市場委員会で更なる利下げが必至とされ、日銀の政策対応がない場合には、更なる円高が予想される。


12月の日銀短観を受けての決定会合での景気判断は、02年以来の6年ぶりの「悪化」となるのは確実である。日銀の中で「残された政策手段を早めに出した方がいいのか、今後に備えて残しておくべきか」との論議があるとのことだ。


「いざという時に備えて」論の人にいいたい。いまが「いざ」でなくて、いつが「いざ」なのか。


来年、新卒就業する青年たちは、自分たちがどのような社会に受け入れてもらえるのか、不安に思っている。正社員の雇用の口はあるのだろうか、と。彼らを温かく社会が受け入れるために、ワーク・シェアリングも必要だし、政府の対策も必要だ。


そして、日銀も責任を果たしていただきたい。社会全体で、彼らのためにできることをすべきだからだ。


アメリカの中央銀行(FRB)は、物価の安定だけでなく雇用の最大化の責任を負っている。バーナンキはしっかりと、次世代への責任を果たしている。市場はこのバーナンキの政策メッセージをしっかりと受け止めている。


日銀法は、物価の安定しか日銀に責任を課していない。それでもなお、日銀の白川総裁には、日本の青年たちの雇用不安に責任を果たしていただきたい。(12月16日記)



(参照記事)日経新聞社説「異常な景気に政策のスピード上げよ」


「日銀による12月の企業短期経済観測調査(短観)は、米国発の金融危機が日本経済を根元から揺さぶる構図を如実に示した。大企業製造業の景況判断は9月より21ポイント悪化し石油危機時の1975年2月と並ぶ過去2番目の大きな下げ幅だった。企業の資金繰りも悪化が著しい。政府・日銀は結果を直視し、一段と敏速な政策対応を打ち出すべきだ。


日銀短観は約1万の民間企業に直接、景気や金融、雇用の動きを聞いた重要な経済指標である。景気の実感が『良い』とみる企業の割合から『悪い』を退いた業況判断指数は大企業製造業でマイナス24と、情報技術(IT)バブル崩壊後の2002年3月以来の低水準だった。自動車の業況判断が46ポイント悪化するなど、日本を代表する業種の落ち込みが著しい。雇用や設備の過剰感を聞いた指数も10ポイント近く悪化した。


9月の前回調査は米大手証券リーマン・ブラザーズの経営破綻や世界金融市場の激震を十分に織り込んでいない。ある程度予想はされたが、これほど急激な企業心理の冷え込みは深刻というほかない。景気の先行きに対する判断指数も全規模合計の製造業で19ポイント、非製造業で10ポイントそれぞれ前回より悪化した。


資金繰りや金融機関の貸し出し態度など企業金融の判断も悪化し、信用収縮が始まっているようだ。大企業が短期資金を調達するコマーシャルペーパー(CP)の発行環境判断は21ポイント悪化し、「厳しい」と答えた企業の割合が大幅に上回った。


企業が一斉に雇用調整や設備投資抑制に走れば、さらに景気が下降する悪循環に陥る。政府と日銀はもっとスピードを上げ、集中的に危機対応の政策を発動する必要がある。


麻生太郎首相は金融安定化や雇用支援など23兆円規模の経済対策を表明したが、数字ばかりを積み上げた色彩が濃い。バラマキでなく、地球温暖化対応など将来につながる有効需要を政府部門が創出することも大胆に考えるべきではないか。


日銀も今週の金融政策決定会合での政策判断が問われる。政府は日銀に企業のCPを直接買い取る資金繰り支援策を求めたが、現時点で日銀は慎重だ。金融機関のCPを担保にとって資金供給する方式と違い、企業の倒産リスクを日銀が直接かぶることに抵抗感があるのはわかる。だが、緊急事態では必要に応じて非伝統的な政策発動もためらうべきではない。現在年0・3%の政策金利の引き下げも検討課題となろう。異常な景気悪化の局面ではスピードが大切である」