ディズニーシーに行ってきました。楽しかった、楽しすぎました。エンターテインメントの持つ力に改めて魅了されてきました。


 

そう感じた最たるものが「ファンタズミック!」のショー。

私、この物語を作った人を心から尊敬しますし、その再現力(壮大なステージ、音響、映像、特殊な演出、キャストたちの表現力、それらを同期させる技術、そして、あっという間に跡形もなくセットが消える撤収力、などなど)の高さに拍手を送り続けずにいられません。

 

ちなみに、気になりすぎて調べてみたら、初演はカリフォルニア、アナハイムのディズニーワールドで1992年。東京ディズニーシーでは、東日本大震災から間もない2011年4月28日から始まったのだそう。Wiki情報ですが、総工費30億円をかけて作られたエンターテインメントなんですって。なんという規模。

 

で、私が一番心奪われたのは、ミッキーのセリフ。

魔法使いの弟子になったミッキーが、イマジネーションの力で夜の水上にたくさんの物語を描いていくんですが、その美しいシーンの数々を見ながらミッキーはこう言いいます。

 

「なんて素敵な夢なんだ。」

 

なんてメタ視点なセリフなんだ。ミッキー、自分の作り出した魔法の世界にいながら、それを客観的にも見ています。このセリフの不思議さ。これで私の心も魔法にかかってしまいました。観客である私たちは、幽体離脱状態のメタミッキーと一緒にミッキーの作り出した夢の世界を見ているんです。

 

溢れる映像、心踊るリズム、水面に揺れる光、打ち上がる花火。

 

ところが、夢は暴走し始めます。ヴィランズ(ディズニー作品の中の悪役)たちが、ミッキーの夢を壊してしまえ!と襲いかかってくるんです。そのクライマックスが、巨大なドラゴンが火を吐くシーン。それを見てミッキーはこう言います。





「君がどんなに強くても、これは僕の夢なんだ!」

 

眼前の悪役との二項対立の構図に引き込まれていた私たちはハッとします。これは、ミッキーの心の内に潜在していたヴィランズなんだと。つまり、今ミッキーと一緒に見ている夢の世界は、ミッキーの中にある善と悪、その葛藤なのか!?と。一番素直にとらえるとそんな感じなのだと思います。

けれども、素直じゃない私はなんとも不思議な感覚に捕われてしまいます。やっぱりセリフのメタさゆえでしょう。マジカルハットの上、いや、雲の上からミッキーに、こう言い渡された気持ちになってしまったのです。


「色即是空 空即是色!この世界はイリュージョンなんだ!!ハハッ。」


あぁ、誰かと共有したいけど、なかなか共有してもらえないこの気持ち…。

私こそ大暴走。と、今は思ってしまいますが、あの夜の闇の中を駆け巡る七色の光が語りかける物語を見ていると、信仰心にも似た気持ちが沸き起こってきてしまったのです。

でね、人の心に届く一番強いメッセージというのは、きっと自分1人に向けて送られたと、自分にしかわからないであろうと感じられるメッセージなんだと思うんです。その意味で、私の心を暴走させて「こんな風に感じたのはきっと私だけだろうな」と思えた、ファンタズミック!が放つメッセージは、個人的で強烈なインパクトのあるものとなってしまったんです。

 

でもねでもね、そこはやっぱり世界のディズニーです。とても優秀なブレーンが、世界中のあらゆる国の、あらゆる宗教観の、あらゆる世代の老若男女に見てもらうために、練って紡いで組み立てて削ぎ落としてこれがディズニーのショーとして最高に相応しいものだ!というものを作り上げているんだと思うんです。

なので、私とは全く違う国や人種や性別や年齢の人たちも、私とは全く違う角度で色々なメッセージを受け取っているかもしれません。

 

ただ、私が感じた雲の上のミッキー感は、やっぱりあの不思議なセリフ「なんて素敵な夢なんだ!」「君がどんなに強くても、これは僕の夢なんだ!」によるところが大きくて、物事を深く掘り下げて下へ下へ階層を増やしていくような方向ではなく、ミッキーと一緒に起こっていることをひとつ上の階層で俯瞰して見ていたような、そんな感覚が残るというのは、ファンタズミック!を見た人たちみ共通する感覚なのではないかと思ったりしていました。



そんなショーの直後に、何事もなかったかのように静まり返るメディテレーニアンハーバー。おそるべき撤収力。だからこそ、現実世界に引き戻されることなく、各々に余韻を楽しめてしまう。それさえもこのショーの一部と言わんばかり。はあ、嘆息。(あ、でもこのショーの提供はD社でしたとのアナウンスに、瞬間私は感謝と嘆きのアンビバレントな感覚に襲われましたが…)

 

なんでしょ、もちろん比喩ですけど、ディズニーシーから帰ってきて数日が経ちましたが、それまで目の前がちょっと光化学スモッグ状態だったのが、パッと晴れわたったような感覚が続いています。心から楽しむってこういうことかも。ありがとう、ディズニー!ありがとう、ミッキー!!

私、また一つ大人になれました(笑。


いつか行くぞ、アナハイム!

イマジネーション!!ハハッ